ガムを飲み込むとどうなるのか?

ガムを飲み込んだらどうなるのか?もしものときに役立つ知識

みなさんは、ガムを誤って飲み込んでしまった経験はありませんか?

そんなとき、「ガムを飲み込むと…」

おなかからガムの木が生える、また、胃の中に何年もガムがたまっていくといった数々の迷信を思い出して不安になった方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、これらは全て医学的な根拠はなく、ガムを大量に、または、慢性的に飲み込まない限り、飲み込んだくらいで死亡することはあまり考えられません(幼児や高齢者が喉に詰まらせたことによる死亡事故はのぞく)。

とはいえ、ガムは飲みこまない方がいいでしょう。

そもそもガムは、飲み込むように作られていないので、胃や腸で消化吸収できない化学物質が消化器官を詰まらせてしまうこともあるからです。

以下に、ガムを実際に飲み込んだ場合に、体の中でガムはどうなるのか、特に腸閉塞になるリスクについて科学的に分かりやすく紹介します。

ガムは消化できない

食べ物は、まず、私たちが噛む時に出る唾液に含まれる酵素によって分解された後、飲み込まれて、胃酸や胃から分泌される酵素によって分解されます。

そして、腸で必要な栄養素が吸収されていきます。

しかし、ガムは別で、私たちの酵素では歯が立たないのです。

どれだけ噛まれても、どれだけ唾液や胃腸の消化酵素に触れたとしても、ガムが分解(消化)されて完全に溶けることはありません。ましてや腸でも吸収されません

ガムは昔から噛まれていた

実は、ガムが体内で消化吸収されないことは、目新しい発見ではなく、昔から知られていることで、私たちの祖先は、驚くほど昔からガムを飲み込まずに噛んでいたようです。

それが分かるおもしろいガムの逸話や歴史があるので、その一例を以下に紹介します。

ガムの歴史
  • 考古学者が、中石器時代のものと思われる白樺の樹皮のタールに歯型がついたものを発見
  • 古代マヤ・アステカ文明の頃には、収穫したサポディラの木の樹液を煮詰めて乾燥したガムを、空腹を紛らわせたり、口臭を予防したりする目的で噛んでいた
  • 古代ギリシャの女性は、自分の歯や息をきれいにするために、マスチックと呼ばれる木の樹脂を噛んでいた。マスチックは、抗菌・抗炎症作用があることから、現在もガムの原料に使用されている。
  • アメリカ先住民は、開拓者たちに、トウヒ(針葉樹)の樹脂を噛むと、のどの渇きを和らげることができると教えていた。
  • 19世紀になると、人々は、原油を原料としたパラフィンワックスをベースに、甘味をつけたガムを噛み始める。
  • 第二次世界大戦までは、チクル(弾力性に富んだサポジラの樹液を固めたもの)がガムベースに使われた。
  • 現在のガムは、チクルを模倣した合成ゴムや天然ゴムをガムベースにして、それに甘味やフレーバーを混ぜて作られている。

いかがですか?

このガムの歴史を見て、「え?ガムは天然ゴムや合成ゴムでできてるの?」と驚いた人は多いのではないでしょうか?

合成ゴム(ガムの原料)を食べても大丈夫?

ガムのベースがゴムと聞くと、どうしても体に悪いような気がしますね。

事実、ガムの原料となる合成ゴムは、他にも接着剤や光ファイバー、シーラント、粘着フィルム、紙、燃料、爆発物、スポーツ用品、屋根、ボトルストッパー、タイヤなど、あらゆる種類の製品で使用されています。

さらに、これらの合成ゴムをベースに、可塑剤(軟化剤)や抗酸化物質、甘味料などさまざまな化学物質も混ぜられているのです。

しかし、心配しないでください。飲みこんでしまった合成ゴム(ガム)が、あなたを病気にする可能性は低いでしょう

それは体内では分解(消化吸収)できないからです。

飲み込んだガムはおなかの中でどうなるのか?

安心してください。分解されなかったガムは、慢性的に飲み込まない限り、体内で長期間にわたって蓄積されていくことはないでしょう。

米国食品医薬品局は、ガムを「非栄養性そしゃく物」に分類しています。

非栄養性そしゃく物とは、人の生命維持に必要な栄養素以外の食べ物のことをいいます。

ガムは、厳密にいうとゴム製品なので、消化することができません。しかし、幸いにも私たちの体は、消化できないものを排泄する手段を持っています

それが体内の消化システムの働きです。消化官は、ガムの塊を筋収縮によって移動させて、便として排出してくれます。

これらの器官は、常に活動している場所なので、そのおかげで、ガムが胃の中で山積みにされたり、消化器官の壁にへばりついたりする心配がなくなります。

排泄されるまでの期間は、人それぞれの消化システムの運動量によって異なり、数時間で出てくる人もいれば、2、3日かかることもあります。

これは、トウモロコシやヒマワリの種を食べた後、殻がそのまま排泄されるのと同じです。

しかし、繰り返しますが、ガムを飲み込むのを習慣にするのはおすすめしません。

ガムを飲み込んだ時の体へのリスク

私たちの体は、消化されない塊を押し出す時、消化システムに大きな力を必要とするため、飲み込んだガムの量が多くなると、それだけ消化官が詰まったり、腸閉塞になったりするリスクが高まります

つまり、毎日のようにガムを飲み込んだり、大量のガムの塊を飲み込んだりはしないこと。そして、ガムと消化の悪い食べ物を一緒に食べないこと。

もし、それらが腸の狭い道を塞いでしまうと、おなかが痛くなったり、便秘になったりすることもあります。さらに、それが取り除かれないまま残ると、症状はさらに悪化していきます。

これは、消化管などで見つかる結石のようなもので、実際に、イスラエルでは18歳の女性が、ガムの塊によって胃がふさがれたことで苦しみました。後に、彼女は一日に少なくとも5個のガムを飲み込んでいたことが判明。

結果的に、医師は胃に穴を開けて、胃石のようなガムの塊を一個ずつ取り出す手術を行いました。

また、ガムに含まれる人工甘味料のような材料は分解できるため、それが体に思わぬ悪影響を引き起こすリスクはあります。

しかし、これらは非常にマレなケースだといわれています。

結論:ガムは吐き出すこと

ガムを噛むと、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールが唾液中に分泌されるため、リラックス効果があるといわれています。

統計では、アメリカ人の56%はガムを噛み、彼らは平均して毎年約280個も消費しています。アメリカでは20億ドル規模の産業です。

最後に、ガムを1個飲み込んだくらいで、死ぬことはありません。

しかし、体の健康のことを考えると、吐き出す方が賢明であることには変わりありません。

参照元:
What Really Happens When You Swallow Gum?
What Happens In Your Body When You Swallow Gum