これからの医師は薬の代わりに自然を処方すべきかもしれない?

誰もが一度は森林浴のヒーリング(癒し)効果について耳にしたことがあるかもしれません。

自然に触れることは、心の健康によいといわれており、ストレスや気持ちの落ち込み、不安感を軽減して気分を高めてくれるなど、精神機能によい影響を与えてくれます。

さらに、様々な研究によって、豊かな自然との触れ合いは、私たちの身体的な健康状態を改善する効果があることも分かってきました。より長生きできるようになるとさえいわれています。

ここでは、自然がどのように心身の健康に恩恵をもたらすのか、また、健康にとっての理想的な生活環境について、これまでの生物学的な研究によって明らかにされたことを紹介します。

日常生活で自然に触れることが、脳卒中後の生存率を高める

2014年の環境情報科学誌「journal environmental research」の研究では、自然に近接した環境と脳卒中生存者の関係が調べられた結果、次のことが分かりました。

1999年から2008年にかけて、アメリカのボストン地区に住む1600人の脳卒中後の生存者を追跡調査したところ、研究者は、自然のある環境の方が、脳卒中後の生存率が高くなると結論づけました。

これを受けて、科学者は、自然は、ストレスを軽減し、ソーシャルネットワーク(人とのつながり)や身体的活動をする機会にアクセスしやすくする要因になり得ると示しました。

自然の中をウォーキングすると糖尿病が改善

自然の中を歩くことは、生活習慣病タイプの2型糖尿病によい効果をもたらします。

北海道大学医学部の研究では、6年間にわたって森林を散歩した糖尿病患者が、相次いで血糖値を低下させました。

この研究によって、屋外環境は、ホルモン分泌や神経機能に働きかけて、インスリン感受性と血糖値に恩恵をもたらすことが分かりました。

心臓血管の健康には、自然と都市環境の両方があるのが理想的

2012年に発表された研究では、自然と都市環境をミックスすることは、山や森などの自然環境のみに囲まれた生活よりも、より高い健康効果がある可能性が見いだされました。

医学誌「BMC Public Health」は、オーストラリアのパースで、11,000人の成人を調査した結果、オーストラリアは、「美しく心地良い自然環境」と「都市へのアクセス」を備えた地域と定義しています。

研究者は、冠動脈心疾患や脳卒中と、豊かな自然の関連性を検査したところ、自然植物がある領域の割合が高い地域は、入院する人の割合が低く、しかも、その割合は、山や森など圧倒的に緑に囲まれたところに住むよりもさらに低いことが分かりました。

つまり、心臓血管の健康のことを考えると、ただ大自然の中に住むのではなく、歩いていける距離に自然と都市空間の両方が必要であるといえます。

それは、近隣に自然豊かなエリアがあれば、人々は、周囲をもっと歩き回るようになり、身体活動や健康状態全般が向上するからだといわれています。

その他にも様々な研究によって、自然の緑は、肥満の減少や心臓血管の健康の促進、小児ぜんそくの軽減に関連していることが示されています。

また、研究者は、自然豊かな地域は、大気汚染や猛暑、および騒音にさらされる度合いが低いことも関係していると指摘しています。

自然は体の回復を助ける

自然は、心身を癒し、病気からの回復を助けることもできます。

1984年の「アメリカ科学振興協会/American Association for the Advancement of Science」の研究によると、腹部手術を行った患者は、窓の外に隣接する建物の壁がある部屋よりも、外の木々が見渡せる窓がある部屋の方が、回復が速く、医療的な処置が少なくて済み、入院期間が短いことが分かりました。

この研究によって、ただ自然環境を眺めるだけで、心的ストレスと身体活動の両方を修復させる効果があり、結果的に病からの回復が早められることが示されました。

屋内観葉植物が病気の快復を促す

2008年に発表された論文「HortTechnology」では、虫垂(ちゅうすい:盲腸の下部から飛び出した小突起)切除手術を行った90人の患者の回復状況について、次のように述べています。

90人の患者を、屋内植物のある部屋とない部屋にランダムに割り当てて、回復状況を追跡調査したところ、屋内植物のある部屋で過ごした患者は、血圧が下がり、痛みや不安感、疲労がより少なく、部屋への満足度が高い傾向があることが分かりました。

結論:生活に緑を取り入れよう

自然界が私たちの身体的健康に影響を与えてくれるメカニズムを正確に学ぶには、これからもより多くの研究が必要になりますが、これまでの科学的な根拠を見ていくだけでも、試すには十分な価値がありそうです。

私たちの日常生活にも、少しだけ緑を取り入れてみると、より健康的な生活を送ることができるかもしれません。

以上のことから、自然が身体に与える効果については分かりましたが、それでは、脳にはどのような影響を与えるのでしょうか?

それについては「人が外出するのをやめたら、体はどうなるの?」で紹介しているのでご覧ください。