どうして科学で証明された真実でさえ信じない人がいるのか?

2016年12月 2日

進化論、気候変動、世の中には科学的に証明されたものがたくさんありますが、なぜか、それを信じない人もいます。

例えば、アメリカでは、人間が引き起こした地球温暖化に対して、トランプ次期米大統領をはじめ、時期環境保護庁長官など多くの人が、それを否定しています。

しかし、それらは、科学的には真実なのです。

それでは、どんなに科学的な根拠を見せても、それを信じようとせず、かたくなに自分の信じていることを曲げない人がいるのはどうしてでしょう。ここでは、それを心理学的な観点から紹介します。

自分が何かを人に信じてもらいたいのに、どうしても相手を納得させることができない時にも役立つ深層心理です。

科学的な根拠を否定する著名人

イギリスの議員Michael Gove氏は、今年の始めに、「イギリス人は専門家たちにうんざりしている」と研究者たちの予測を受け入れがたいものだと指摘しています。

また、トランプ次期米大統領に、アメリカの環境保護庁 (EPA) 長官に推薦されているミーロン・エベル氏は、地球温暖化は科学的な裏付けのないもので、気候変動政策は「政府を拡大するための口実」であるといいます。

さらに、インディアナ州のマイク・ペンス知事は、気候変動は、「神話」であり、ひとつの見解にすぎないと指摘。

トランプ次期米大統領は、「地球温暖化は、人間によって引き起こされるものではなく、中国によるでっちあげだ」と発言しています。そして、共和党支持者の46%が、地球温暖化を否定しています。

科学的な地球温暖化の根拠

その一方で、複数の科学文献の批評をみていくと、本を出版している科学者の97パーセントが、地球温暖化は真実であり、今現実に起こっているので、私たちは行動を起こす必要があることを明らかにしています。

1880年に観測が始まって以来、現実的に海面は上昇し、年を重ねるにつれて、世界の平均気温が過去最高を塗り替えています。そして、温暖化の大部分は1970年以降に起こっています。

科学者は、たくさんの証拠を挙げて、警告していますが、人々はまだそれを信じません。

それはまるで、川に車が沈みかけているにも関わらず、車が浮くかどうかや逃げるべきかどうかを議論しているようです。そのような状況では、車が浮くかどうかは問題ではなく、行動に移すべき必要があるのです。

どうして人は科学的な証拠を信じないのか

2015年に、『Annals of the American Academy of Political and Social Science』誌で発表された論文にその答えが掲載されています。

人は、意思決定をする時に、何が正しいかよりも、自分が信じていること(思想)やアイデンティティー(グループへの帰属意識)、感情を大切にする傾向があり、感情を分けて考えることが難しいという問題を抱えています。

学術誌『Public Opinion Quarterly』によると、原子力発電の環境への影響についての世論をテーマにした研究では、基本的に、政治となんらかの関わりのあるものに対して、人は特に感情的に反応し、変化を怖がり、現状維持に固執する傾向があることが分かりました。

意思決定に大きな影響を与えているのは、「ホットな(強い感情を伴う)認知」と呼ばれるものです。

「ホットな認知」とは

例えば、あなたに地球温暖化について尋ねたとしましょう。

まず、質問をされてから0.2秒以内に、あなたは「ホットな認知」を感じます。この場合、ホットな認知とは、あなたが既にこの話題(地球温暖化)に対して持っている評価(強い感情)です。

この「ホットな認知」は、たとえ、科学的な証拠が正しいと理解していたとしても、それを認め、受け入れることを妨げるほどの強い力があります。

これは、1/1000秒単位で起こり、自分の意見の形成の最初のステップで、なおかつ、非常に重要な要素になります。

そのため、意思決定において、このホットな認知を最初に感じた場合、それが、そのまま自己の意見に反映され、正しい判断ができなくなる可能性が高くなります。

なぜなら、全ての記憶や思考は、このホットな認知によって汚染することができるからです。

それなら、私たちはどのように意思決定をしていけばよいのでしょうか?

心理学者は論文で、人が科学的な根拠を信じないのは、意思決定をする前に、感情によって全てを決めてしまうからだと発表しています。

確かに、感情は、私たちが行う全てのことに影響を与えます。それは自然な反応です。しかし、私たちは、「考えること」によって、闘うことができます

意思決定のカギは、自分の感情と「真実(科学的な証明)」を切り離して考えることです。それは、エネルギーと努力を要することです。

20世紀初頭の社会心理学者クルト・レヴィン(Kurt Zadek Lewin)によると、人間は、「変化に抵抗する」自然な傾向をもっており、考えることは困難な作業です。

私たちは、自分が属しているグループを重んじるので、現状維持や既にできあがってしまった信念を好みます。そして、変化は、自分たちの現実社会に不快感を招くことを意味します。

そして、人が科学的な根拠で納得させようとしてきた場合、それを悪く感じ、考えることにエネルギーを消費しないように抵抗しようとします。

結論

人に考えることや新しい評価、そして、再評価を要求することは、大変な作業であるからこそ、人は科学を信じようとしないといえます。

科学が不自然に感じる時は、科学的な証明が私たちに問いを投げかけています。そんな時は、できる限り客観的に議論するようにすることです。

もし、あなたが誰かに科学的な根拠を信じてもらいたい場合は、感情に訴えてはいけません。相手の好奇心に向けてアピールすべきです。

決して、相手の怒りや恐怖、嫌悪感を引き起こすような証拠を提示しないでください。相手が落ち着いてじっくりと熟考し、理解できるようなものを提示してください。

それでも、もし、相手を納得させられないなら、もう一度この文章を読み直してみてください。