8時間寝たからといって脳が回復しないことがあるのはなぜか?

2018年1月10日

脳を回復させるには、一日に8時間は寝る必要がある。

これは、夜の睡眠について、最もよく知られている知識です。

しかし、最近の研究によって、どれだけの時間寝たかよりも、睡眠の質の方を重視すべきであることが明らかにされてきました。

ここでは、睡眠の質を向上させるために、「レム睡眠・ノンレム睡眠」と「脳波」の関係を探り、私たちが最も必要とする睡眠について分かってきたことを分かりやすく紹介していきます。

睡眠とは

正直なところ、科学者たちは、眠りの進化について、はっきりと解明できてはいません。

しかし、睡眠中は、周囲の危険を察知しにくく、外敵や捕食者にさらされやすいにもかかわらず、どのような生き物でも寝る習慣があるというのは、睡眠にはなんらかのメリットがあることは確かです。

実際に、さまざまな研究によって、睡眠不足は、人をいらだたせるだけでなく、注意散漫や記憶力低下、アルツハイマー病など、健康全般とリンクしていることが解明されています。

それでは、睡眠の役割とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

レム睡眠とノンレム睡眠の役割

睡眠は、大きく分けると、レム睡眠(急速眼球運動がある)とノンレム睡眠(急速眼球運動がない)の2種類があり、これが一定周期で繰り返されています。

レム睡眠とは、脳の一部が起きているために、よく夢を見ることがある浅い眠りです。それに対して、脳が休息状態であるノンレム睡眠は、あまり夢をみない深い眠りの状態だといわれています。

さらに詳しくいうと、ノンレム睡眠は、全体の約75%にあたる睡眠で、3つの段階からなります。最初が「浅い眠り」、そして、「眠りの開始」、最後が、回復睡眠と呼ばれる「最も深い眠り」で、脳内ではニューロンの修復などが行われます。

質の高い睡眠とは

夜の睡眠では、翌朝までに、レム睡眠とノンレム睡眠におけるすべての睡眠段階を経ることが大切です。

睡眠が足りなくなると、どれかが欠けてしまい、不安や気分の落ち込み、うつ症状、疲労感、身体的な痛み、不眠症から過眠症(いくら寝ても眠気が解消されない症状)にいたる睡眠障害などが引き起こされやすくなります。

また、質の悪い睡眠は、記憶の形成をストップさせてしまうことすらあるのです。

神経細胞の一部が最も活発化する睡眠段階とは

研究によって、「樹状突起」と呼ばれる神経細胞(ニューロン)の一部で、情報の受け手として重要な役割がある部位が調べられたところ、この樹状突起の活動量が睡眠中に増えることが新たに分かりました。

樹状突起とは、シナプス(神経細胞間のつなぎめ)から体中の細胞へ送られる電気信号を受け取っている部位で、1本の軸から枝分かれするように細い突起を伸ばした構造をしています。

この樹状突起の活動量の増加は、(紡錘波と呼ばれる)短くて反復的な脳波パターンとのつながりがあることや、この脳波パーンが、ノンレム睡眠(深い眠り)でみられるサイクルの始まりと終わりにピークを迎えることが分かっています。

さらに、ノンレム睡眠の最後に訪れる最も深い眠りには、脳波の活動がゆっくりになります。この脳波の状態は、睡眠時の脳の活動において最も重要な部分だといわれており、これが十分に得られないと、記憶の定着を妨げてしまうことも分かってきました。

つまり、私たちには、レム睡眠に移行する前の、ノンレム睡眠における最終段階の深い深い睡眠状態が最も必要だというわけです。

ノンレム睡眠の最終段階がになう重要な役割とは

ノンレム睡眠の最終段階にみられる(ゆっくりな脳波の)深い眠りは、脳にある海馬から記憶を伝達し、それを頭前皮質(前頭葉の前側)で定着し、保存するのを助けています。

さらに、このゆっくりな脳波は、日中の集中力や心臓の健康、代謝の安定性、認識力全般とも深いつながりがあります。

ストレスによって睡眠が妨げられてしまう理由

私たちの体は、ストレスを受けると、睡眠中であっても、目覚めて不安や恐怖に反応する準備を整えようとします。

脳では、不安や恐怖などといった感情の処理をになう扁桃体が、活性化したままストレス反応を抑えることができなくなっていきます。

そうなると、深い睡眠へ入ることはできなくなります。

実は、睡眠不足とアルツハイマー病(認知機能低下)は、眠れない日が数日あったくらいでは関係性はなく、長い年月にわたる睡眠不足によって脳が適切に回復できない状態が続いたことによって引き起こされるといわれています。

健康的な生活は、健やかな睡眠から

多くの研究者が、質のよい睡眠を得るために、まずは、睡眠環境を衛生的に整えることから始めるように促しています。体を洗うのと同じように、寝る部屋をきれいに掃除してみてください。

また、お昼からはカフェインをとらず、寝る部屋には携帯電話を持ち込まない(光にさらされない環境作り)などといった取り組みによって、概日リズムを整えるのも役立ちます。

概日リズムは、体内時計とも呼ばれ、睡眠障害の大きな要因のひとつに考えられていますが、光の刺激や食事の乱れなどを見直すことで修正されていきます。