巨大ロケット「ファルコン・ヘビー 」の打ち上げ成功が世界で注目された理由

2018年2月14日

真っ赤な電気自動車「テスラ・ロードスター」が、地球を背景に、宇宙空間を走る(上の動画を参照)。

そんな映画のような幻想的光景が、ネット上で話題になりました。このテスラ・ロードスターの映像は、誰もが待ちに待った巨大ロケットの打ち上げ成功を意味します。

2018年2月6日、アメリカの民間企業スペースX社(SpaceX)は、NASAのケネディ宇宙センターにて、巨大な打ち上げロケット「新型ファルコン・ヘビー」初号機の火星軌道に向けての打ち上げを成功させました。

ファルコン・ベビーには、スペースX社のイーロン・マスクCEOが所有する車「テスラ・ロードスター」が搭載され、運転席には、同社が開発中の宇宙服を着たスターマン人形が座りました。宇宙の映像は、この車から撮影されたものです。

ここでは、ファルコン・ヘビーの打ち上げ成功が、なぜここまで注目されるのかについて、その理由をパワーアップしたロケットの打ち上げ能力(打ち上げて目的の軌道に投入できる重量)や機能、コストパフォーマンスなどを中心に分かりやすく紹介します。

強力なモンスター「ファルコン・ヘビー」

「ファルコン・ヘビーの打ち上げは、スペースX社にとって最も難しく、大爆発の可能性もあった。しかし、それは起こらなかった。」(イーロン・マスクCEO)

ファルコン・ヘビーは、27基ものエンジンを搭載した地球上で最も強力な打ち上げ能力をもつモンスターです。大型旅客機ボーイング747でいうと18機分の動力を発生させることが可能だといわれています。

今回は、エンジンのテスト飛行ではありますが、民間企業のロケットが、これほどの規模の打ち上げに成功したのは、世界でも初めてのことで、将来的には、火星への探査有人飛行も考えられています。

ペイロードの高さ

ペイロード(ロケットが運搬できる荷物の重量)は、ファルコン・ヘビーの大きな魅力のひとつです。約54トンものペイロードを低軌道(地上から高度2,000km以下)に投入する能力があります。

歴史上では、アポロ計画で月への有人宇宙飛行に成功したサターンVロケットを除いて、どのロケットよりも多くの人員や輸送物資を運搬できるといわれており、火星ミッションの期待の星として注目を集めているのです。

ペイロードは、打ち上げ時の推進力だけでなく、目的の軌道に投入する能力、大気圧や温度、気流の変化、太陽風や宇宙の放射線にも耐える力、決められた場所に無事に着陸する能力など、さまざまな輸送能力を考慮に入れて数値が出されます。

つまり、この数値が高いと、打ち上げに必要な推進力が高く、難しい軌道にのせることが可能になるため、一度に複数の民間企業や国家の衛星を打ち上げられるだけでなく、探査機や有人宇宙船、実験装置も搭載できるほか、宇宙ステーションに運ぶため食品や水といった補給物資を大量に運べるようになります。

そのため、火星をはじめとする太陽系の低コスト探査、宇宙旅行など、宇宙産業全体に大きく貢献することが期待されています。

宇宙飛行用の大型ロケットとしてのコストパフォーマンスの高さ

ファルコン・ヘビーの打ち上げにかかる費用は、約100億円(9000万ドル)。

これは、打ち上げ能力が約1/6程度しかない日本のH-IIAロケットとほぼ同じコストで、歴代に打ち上げられたどの大型ロケットよりも安価な数値です。

このコストパフォーマンスの高さから、宇宙産業では商業的価値が高く評価されています。

たったひとつの失敗。ブースターの回収

ブースターとは、ロケットを打ち上げるときの推進力を補助するために、本体に取り付けられた燃料用のロケットです。

通常、打ち上げによって燃料が使われた後は、ロケットから切り離されて、海に投棄されますが、ファルコン・ヘビーの場合、再利用を目的に回収する計画が立てられ、3基同時に回収するという初めての試みが行われました。ブースターが再利用できるようになると、打ち上げコストのさらなる削減が期待できます。

そして、実際の打ち上げでは、3基中、1基のブースターの回収だけは失敗に終わっています。しかし、すべてが計画通りに進んだわけではないとはいえ、2基のブースターの回収に成功したことは、スペースX社の高度な技術力を世界に示すには十分でした。

両サイドの2基のブースターは、本体から切り離された後、逆噴射して、ケープカナベラル空軍基地にある着陸予定拠点に2台同時に見事着陸しました。これは、まさに歴史的なブースター初着陸の場面で、このときの着陸の様子を撮影した映像は、ネットで配信されています。

中央のコアブースターは、大西洋上に浮かぶ無人ドローン船に着陸予定でしたが、目的地から約100メートル離れた地点で、海に墜落しています。

失敗の原因と対策

この墜落の原因はすでに分かっています。ブースターは、着陸の際に、エンジンを数回に分けて点火して減速させなければなりませんが、燃料不足で点火ができなかったのです。

しかし、このような失敗は、スペースX社にとっては目新しいことではありません。失敗から学び、修正していくスペース社の姿勢は有名で、実際に、2017年度には、全ての失敗を撮影した動画を公開しています。

SpaceXは現在、フロリダの海岸から出航予定の第2の無人ドローン船を建設中です。第2の無人ドローン船は、2018年に少なくとも2回は予定されているファルコン・ヘビーのミッションで、サイドブースターを海上着陸させるためのものです。

最後に

イーロン・マスク氏は次のようにいいます。

打ち上げられた(イーロン・マスク氏の愛車)テスラ・ロードスターは、故障しない限り、10億年もの間、宇宙のかなたに存在し続けます(地球と火星の周りを周回する楕円軌道に入り、永遠に回り続けるため)。

いつか、人々が火星に移住する日がきたら、イーロン・マスク氏の真っ赤な愛車、テスラ・ロードスターが、あなたを迎えてくれるかもしれません。

その他の参照元:
Elon Musk On What Went Wrong With SpaceX's Falcon Heavy Flight