おそらく、誰一人として便秘が好きな人はいないでしょう。
しかし、ダイエットやストレスのために、しばしば便秘は引き起こされます。人によっては、旅行に行くと必ず便秘になって「楽しい時間がいつも台無しだ」とうんざりすることもあるようです。
幸いなことに、症状が軽いうちならコーヒーや食物繊維など便秘の改善に役立つ食べ物がいくつかありますが、慢性化して便秘が長期間にわたると、痔になったり、命を脅かす大惨事になってしまったりすることもあるので注意が必要です。
ここでは、便秘で長い時間便が出なかった場合に、体の中がどのように変化していくのかについて、それに伴ってあらわれる驚くべき症状を中心に紹介していきます。
排便の仕組み
そもそも排便は、消化不良によって生成された食べ物や消化できない物などの廃棄物を取り除くためにあります。
食べ物の栄養は、小腸までの間で吸収されて、残ったかすが大腸を通過するときに水分が奪われていき、最終的に直腸に到達します。
直腸に食べ物が入って腸が引き伸ばされると、脳に向けて「便の時間だよ」とサインが送られます。そして、便意を感じるようになり、肛門の筋肉がゆるみ始めます。
便秘の原因
しかし、トイレに行きたいのを我慢すると、この自然な流れがスムーズに進まずに、便意を感じにくくなったり、便がたまって便秘が引き起こされたりします。
その他にも、運動不足やいくつかの病気によって、排便がうまくできなくなることもあります。
パーキンソン病や炎症性腸疾患など、結腸内の筋肉や神経の適切な機能が妨げられる病気になると、排便やガスの通過がしにくくなるのです。
そして、便秘の症状が重くなると、結腸が腫れて異常に肥大化して、巨大結腸症を引き起こしたり、腸から便が逆流して口から出てきたりする可能性もあります。
便秘の恐ろしさ
原因が何であるかに関わらず、便が腸に詰まってしまうと、何もよいことはありません。
腸の中では、ますます多くの水分が便から奪われていくため、便は硬くなり、体から押し出すのが難しくなります。
そうなると、肛門や直腸近くの静脈が炎症を起こして腫れあがったり(痔核、いぼ痔)、肛門の皮膚が切れたり(切れ痔)して、ひどい痛みや出血を引き起こす可能性があります。
肛門近くの皮膚には、痛みを敏感に感じ取る知覚神経があるため、特に痛みは強く感じるといわれています。
想像するだけで、あまりよいものではないことが分かりますが、このまま便秘を放置するとさらに恐ろしいことが起こります。
便秘を放置すると何が引き起こされるのか
仮にあなたが長い間、排便しない場合、便は腸の中で乾燥して硬くなり、長く滞留することになります。
これは「宿便」と呼ばれるもので、この糞詰まり状態によって、全く動かずに停滞した便の塊は、しだいに腸の壁を圧迫して血流を低下させていき、潰瘍をつくります(宿便性潰瘍)。
その他にも、腸にたまった宿便が膀胱を圧迫して尿が漏れる尿失禁や吐き気を引き起こすだけでなく、結腸に穴をあけたり破裂させたりして、命を脅かす危険性もあります。そうなると手術が必要となります。
そして、非常にまれなケースではありますが、重度の糞詰まり状態は、なんと腸を逆に収縮させてしまうことがあります。これは、命の危険を感じた腸が、なんとかして便を排出しようとして間違った方向に収縮し始めるためです。
そうなると、腸の中にあった宿便は、小腸から胃の中に入り、嘔吐という形で排出されてしまうのです。糞便の嘔吐。
幸いなことに、腸から胃へ移動する過程で、水分が含まれて液状化するため、完全な形として見ることはできませんが、それは、決して心地のよいものではないでしょう。
最後に 便秘時のアドバイス
便秘は軽視されがちですが、慢性化すると大変な問題になることが分かったと思います。
幸いなことに、いまや便秘は、下剤や医師に処置してもらうことで解消できる時代です。
便秘が慢性化してしまうと、時間の経過とともに腸の筋肉が弱くなり、自分で排便をコントロールすることがより一層困難になってしまいます。
そのため、日頃からできるだけ食物繊維を摂取して便秘の予防に努め、もし便秘になったら、慢性化する前に、できるだけ早く専門の医師に相談することが大切です。
便秘時のポイントとしては、排便時に座ったまま、ゆっくりと息を吐くことに集中しながら深呼吸をして、肛門の筋肉をゆるめ、上半身だけ少し前屈みにしたり、逆に軽く後ろに反らせたりすると便が出やすくなります。
決して便意は我慢しないでください。そして、便秘を放置したままにはしないでください。