運動量と細胞の老化の関係

細胞レベルで老化プロセスを遅らせるのに必要な運動量とは?美容と健康のためになる話

科学者の研究では、老化予防に最も効果が高かった運動を行ったグループの細胞は、他に比べて9歳も細胞年齢が若く、大きなメリットが得られたようです。

おそらく「いつまでも体を若々しく保ちたいから運動をしている」という人は多いかもしれません。

しかし、改めて考えると、本当に「運動で老化が予防できている」と実感できる人はそうそういないでしょう。

おそらく、どのような運動をどれくらい行えば若さを保てるのかをはっきりと答えられる人もいないかもしれません。

そこで、科学者たちは、近年、細胞レベルで老化プロセスを遅らせるのに必要な運動量や、若々しくいるために特に運動効果が高い年齢について研究を行いました。

最も効果が得られるのはどのようなタイプの人たちだと思いますか。

老化予防に効果的な運動

おそらくほとんどの人が、体を若く保ちたいのなら、もっと運動すべきだと感じているでしょう。

実際に、運動によって細胞の老化を遅らせる効果が期待できることを示した研究もあります。

それでは、細胞レベルで老化プロセスを遅らせて、老化予防のメリットを得るには、どれくらいの運動量が必要なのでしょうか?

細胞の老化プロセスとは

それを調べるために、科学者らは、5,382人の成人のテロメアを対象に細胞レベルで老化について検証しました。

テロメアとは、DNA(遺伝子の本体)を損傷から守るために染色体の末端ついているキャップのような部分で、細胞分裂、および、(DNAの)複製中のダメージからDNAを保護する役割があると考えられています。

細胞が分裂を繰り返す(老化)につれて、このテロメアは自然に短くなり、ほつれてしまうため、今日では、多くの科学者が、テロメアの長さを測定することによって、細胞の生物学的年齢、つまり、細胞の実質上の機能、文字通り、身体年齢を知るための判断材料に用いています。

このテロメアが、加齢によってすり減ると、膵臓や骨、前立腺、膀胱、肺、腎臓など特定の病気のリスクが高まる可能性もあります。

そのため、科学者は、老化プロセスを遅らせるカギとしてテロメアに注目し、今まで明らかにされなかった、運動量との関係について調査を開始。

細胞の老化プロセスを遅らせる運動量についての研究

まず、一週間の運動量によって、「A:ほとんど運動しない人」、「B:適度な運動をする人」、「C:よく運動する人」に分けて比較しました。

ウォーキング
A:0時間から2時間半、B:2時間半から5時間、C:5時間以上
自転車こぎ(時速16km以下)
A:0時間から2時間、B:2時間から4時間、C:4時間以上
ランニング
0時間から1時間、B:1時間から2時間、C:2時間以上

運動の結果

結果的に、A、Bの2つのグループの細胞年齢の誤差はほとんどありませんでした。

つまり、細胞に関する限りでは、軽度から中等度の運動では、まったく運動しないのとあまり変わらなかったようです。

しかし、活動量の多い強度の運動量に該当するCのグループの細胞は、他に比べて9歳も若いことが分かりました。

今回の研究で、科学者らは、なぜそれほど多くの運動量が必要なのかはまだ分かっていないが、「苦労なくして、得るものなし」というように、運動時間の長さがテロメアの炎症の軽減につながっていると考えています。

運動とテロメアの減少プロセス(老化)の関係

私たち人間の細胞年齢は、生物学的な年齢とそのまま一致することはめったにありません。

細胞は、長い期間経過しても機能面で年齢よりも比較的若くなり得るとともに、老化が進んで反応が鈍くなり、不規則に機能することもあります。

そして、この細胞の機能における老化プロセスは、肥満や喫煙、不眠症、糖尿病、その他の健康状態やライフスタイルの側面などに影響を受けて、加速させることがあるのです。

しかし、幸いにも最近の研究によって、運動がこのテロメアの減少プロセス(老化)を遅らせることも分かってきました。

実際に、アスリートは、座って過ごす時間の多い同年齢の人よりも、長いテロミアを持っていることも発見されました。

老化予防に最も効果的な運動習慣や年齢とは?

2015年に、Medicine & Science in Sports & Exerciseで発表されたミシシッピ大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校による研究では、運動習慣と年齢、白血球のテロメアの長さの関係について調査し、運動とテロメアの長さの関係が示されました。

科学者らは、米国民健康栄養調査にのために集められた20歳から84歳までの6,503人のデータをもとに、「ウェイトトレーニング」「ウォーキングのような中程度の運動」「ランニングのような激しい運動」「通勤や通学が徒歩や自転車」の4つの運動の有無についてのアンケートを行い、極端に短いテロメアをもつ可能性のある人について調べました。

すると、全く運動しない人のテロメアの長さと比較して、1種類では異常に短いテロメアを有する可能性が3%低くなり、2種類では24%低く、3種類では29%、そして4種類すべての運動を取り入れた人は59%と、テロメアの縮小リスクを大幅に減少することが分かりました。

さらに興味深いことに、その傾向は40歳から65歳の間で最も強く表れたのです。

ゆえに、テロメアの縮小を防ぎたいのであれば、中年期が重要な時期で、この時期に、なんらかの運動習慣を開始、または続けることが大切であるといえます。さらに、多様な運動を取り入れると尚さらよいでしょう。

この研究によって、運動する人はしない人よりも長いテロメアを有することが明らかにされましたが、これからまだ、「運動がテロメアの長さの変化をどのように引き起こすのか」や「テロメアと死亡率の関係」、「テロメアが長いほど健康につながるのか」など、研究の余地はまだたくさん残されています。

参照元:
How Much Exercise It Takes To Slow The Effects Of Aging
Movement-Based Behaviors and Leukocyte Telomere Length among US Adults.
Does Exercise Slow the Aging Process?