なぜイスラエルはピーナッツアレルギーの発症率が低いのか?食物アレルギーの常識が覆された研究

2019年1月18日

今、食物アレルギーへの考え方が、離乳食期に取り除くから「あえて摂取する」ように180度変わってきています。

今までは、アレルギーを起こしやすい食べ物は、ただ「食べない」ことで症状を抑えようとしてきましたが、それでは予防効果は見られず、かえってアレルギーを発症する子供が増加する一方でした。

そして、この従来の考え方を覆したのが、ピーナッツアレルギーの研究です。

なんと、ピーナッツアレルギーは、幼少期の早い時期から摂取すると予防できる可能性が出てきたのです。さらに、アレルギー反応を患うことがなくなるまで、あえてピーナッツの量を徐々に増やして与えていくというアレルギー療法も発表され、アレルギーの子供をもつ多くの親が、この新たな予防法に期待し、興奮しました。

ここでは、欧米でピーナッツアレルギー患者が増加する一方で、イスラエルではほとんど患者が見られない理由をもとに、食物アレルギーの引き起こされ方や現在効果に期待が高まっている新しい予防方法を分かりやすく紹介します。

増え続けるピーナッツアレルギー

今、ピーナッツアレルギーを発症する子供が、国際的に増え続け、世界各地で問題視されています。

アメリカでは、1997年から2008年の間に、ピーナッツアレルギーに悩まされる子供が3倍に増え、現在では推定180万人に及ぶとさえいわれています。それは、ペンシルベニア州最大の都市フィラデルフィアの全人口よりも多い数値です。

ピーナッツの持ち込みを禁止する学校も多く、ピーナッツが含まれる機内食を取りやめた航空会社も現れるなど、社会的な取り組みへが行われている背景には、ピーナッツアレルギー患者の深刻なショック症状があります。

ほんの微量でもアレルギー反応が引き起こされるため、ピーナッツに触れたり、吸入するだけで、アナフィラキシーをはじめとする、ショック症状を誘発する恐れがあるのです。

もちろん隠し味にピーナッツがわずかに入ったカレーもアウトです。アレルギー患者にとって、ピーナッツを避けることがどれほど難しく、周囲の理解が必要かがわかります。

アメリカだけではありません。

ピーナッツアレルギー患者は、イギリスやカナダ、オーストラリアなどでも、同じような増加傾向があります。

その一方で、なぜか、中国やタイ、韓国、フィリピン、イスラエルなどのように、発症率が低いままの国もあります。

イスラエルに関しては、イギリスの1/10の発症率だといわれています。

ピーナッツアレルギー患者がほとんどいないイスラエル

イスラエルには、次のようなユニークなジョークがあります。

全ての幼児が最初に話す言葉は、「父を意味するアバ」か「母を意味するイマ」、そして「バンバ」のいずれかだ。

バンバとは、全家庭の90%が定期的に購入するといわれているほどイスラエルで大人気のピーナッツ菓子の名前です。

これほどピーナッツが食べられているのに、イスラエルではアレルギー発症率が低いのです。

中国やタイでも、朝食にピーナッツ粥を食べている子供がたくさんいます。そして、これらの国も同様に、不思議とアレルギー発症率が低いのです。

すごい偶然ですね。

しかし、これが偶然の一致でないことを示した研究があります。

幼児期のピーナッツの摂取率とアレルギー発症率についての研究

キングス・カレッジ・ロンドンの研究者らは、ピーナッツアレルギーを発症するリスクをもつ生後4ヶ月から10ヶ月の乳児640人を募集し、被験者の半数にはピーナッツを定期的に与え、その他の半数にはピーナッツを完全に除去した食事を与えてもらいました。

そして、子供が5歳のときに、研究室で被験者全員に落花生たんぱく質を摂取してもらい、その反応を調べたのです。

結果

ピーナッツを定期的に食べていた子供のアレルギー発症率は3.2%であったのに対して、5歳まで全く摂取しなかった子供の場合、17%以上がピーナッツアレルギーを発症しました。

つまり、ピーナッツを一度も食べたことがない子供の方が、ピーナッツアレルギーを発症する可能性が6倍も高かったのです。

もちろんこれは、一つの研究に過ぎません。

しかし、アレルギーがどのように引き起こされて機能するのかが分かると、この研究は十分に意味を成します。

食物アレルギーの原因

ピーナッツアレルギーを持つ人が、初めてピーナッツに出会うと、彼らの免疫システムは過熱状態になります。

この場合、ピーナッツを脅威とみなし、これから先にこの脅威が訪れるときに備えて、抗体を産生します。

そして、次にその人がピーナッツを食べると、抗体が免疫システムを活性化させてアレルギー反応を誘発し、じんましんや呼吸器障害、意識障害、血圧低下などさまざまなアレルギー症状を引き起こすのです。

実のところ、科学者は、なぜアレルギー反応が出る人と出ない人がいるのかについては明確には解明できていませんが、早い時期からアレルギー源を口から摂取することが、子供のリスク軽減に役立っていると考えています。

幸いにも、食物アレルギーは、必ずしも克服できないわけではありません。

食物アレルギーへの期待が高まる免疫療法

2018年はじめの臨床試験では、医師がピーナッツアレルギーの子供に、少量のピーナッツを与え、時間をかけて少しずつ摂取量を増やしたところ、子供の免疫システムは、次第にピーナッツに慣れていき、ほとんどの子供が耐性を構築することができたと発表されました。

この免疫システムをだます方法は「免疫療法」と呼ばれ、適切に活用すればピーナッツに対して軽度のアレルギー反応を示す子供たちをケアする有効な手段としての可能性が見いだされたのです。

ただし、この免疫療法は、ピーナッツに対する免疫システムの感受性を低下させる治療法としては有望ですが、治癒するには完全なものではありません。

また、ほとんどの場合、患者は毎日アレルギーを起こす原因食物(抗原)を摂取し続けなければならないことや、この免疫療法がすべての患者に有効であるとは限らず、適切に取り入れなければ低下していたアレルギー反応が戻る可能性すら考えられるため、自己判断ではなく、必ず医師に相談しましょう。

最後に

2008年のアレルギーの研究で、赤ちゃんの乾燥肌や肌荒れなどによって、皮膚から抗原物質の刺激を受けてアレルギーが進行することが発表されて以来、従来の食事制限に対する考え方が変わりました。

離乳食の開始時期を遅らせたり、抗原となる食品を不必要に除去したりすることが、アレルギー予防に逆効果となる可能性があり、それよりも皮膚のバリア機能を回復させ、食物(抗原)に耐性をつけていく方向にシフトしてきています。

アレルギーの研究者たちはまた、遺伝学的要素がアレルギーの発症に関与している可能性も考え、今も研究を進めています。

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