家で一番汚い(微生物の多い)場所は人間かもしれない理由

あまり想像したくないかもしれませんが、「家で一番汚いところ」といえばどこだと思いますか?

家の中は、新陳代謝によってはがれた皮膚細胞の死骸やほこり、20万種にもおよぶ害虫やバクテリア、真菌(カビや酵母の仲間)などの生物であふれています。そして、その多くがトイレでみられます。つまりは「便」です。

しかし、驚くかもしれませんが、こういった生物が家で最も多い場所はトイレではありません。実は、わたしたち人間なのです。

ここでは、家や私たちの体にひそむ興味深い微生物の話について、Rob Dunn氏の著作 「Never Home Alone」をもとに分かりやすく紹介します。

家にひそむ微生物

家にひそむ微生物は、あなたが予想もつかないような場所に存在します。

たとえば、熱に強い好熱菌の一種サーマス・アクアティックス(Thermus aquaticus)。好熱菌とは、50度、または80度以上の高い温度環境を好む微生物です。自然界では、アメリカのイエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)にある間欠泉のような非常に熱いところでしかみられませんが、実は、あなたの家の給湯器にも潜んでいます。

その他にも、もっとも普遍的にみられる真菌「アオカビ」に関しては、屋外からエアコンに入り込み、スイッチを入れるたびに家中に胞子をまき散らしています。誰もが感じたことのある、エアコンをつけたときのあのカビ臭さの原因は、おそらく真菌です。このアオカビは2%から6%の人にアレルギーを引き起こすことでも知られています。

ちなみに、細菌と真菌は同じだと勘違いされやすいのですが、細胞構造が異なる別の生物です。

少し専門的にいうと、細菌類も真菌類も同じ病原微生物として考えられますが、真菌は、「染色体が裸の状態である細菌(原核生物)」とは異なり、ヒトや動物と同じように「膜の中に染色体がつつまれている点(核があるので原核生物とよばれる)」で細菌とは区別され、真核生物と呼ばれています。

それでは、話を戻してもっと身近なところで、お風呂をみていきましょう。

実のところ、シャワーヘッドに潜む微生物は、何兆にもおよぶことが分かっています。それらの微生物は、互いにひっつきながら厚さ0.5mmの層を形成しているのです。

つまり、私たちはシャワーをかけるたびに、体中に微生物を浴びていることになります。

しかし、それは必ずしも問題ではありません。

体にひそむ微生物

研究者たちは、シャワーに生育する菌は、私たちのセロトニンレベルを高めると示しています。セロトニンは、心の安定に深く関わっており、ストレスを軽減して、幸福感を増すと考えられている神経伝達物質のひとつです。

シャワーにひそむそれらの微生物は、皮膚に着地すると、もともと皮膚に存在している常在細菌と呼ばれる何万もの微生物種に加わります。

これらの微生物は、通常は無害です。

たとえば、コリネバクテリウム属の菌は、わきの下の臭いのもとにはなりますが、大腸菌のような有害な病原体を撃退する微生物でもあります。

私たち人間は、実に多くの微生物と生活しているのです。それらの常在菌は、300から500種ともいわれ、主に皮膚や胃腸など体外と通じている場所にひそんで、消化器系の免疫システムを向上させ、さらには精神的健康を維持する役割を果たすと考えられています。

その他にも、顔にひそむ顕微鏡でしかみられないほど小さなダニや、足のゆびに定着したカビなど、少しぞっとするような客も含まれています。

微生物の働き

実のところ、世界には、数えきれないほどの微生物種が存在しますが、その中で有害なものは、無害な種の1兆分の1だといわれています。

つまり、全体の0.00000001%未満というわずかな微生物種が、世界中で感染症を引き起こしているのです。

その他の無害な微生物種は、ときには私たちの皮膚にひそみ、病原体の侵入を防ぐ働きをしてくれています。体を構成する約37兆もの細胞をホテルの部屋だと考えると、微生物がいることで、抗生物質耐性菌のような病原体に宿泊できる部屋や資源を与えるチャンスを減少させているのです。

これは、文字通り、病気になる機会が減ることを意味します。たとえ処方された抗生物質が効かなくても、体にひそむ微生物があなたを安全に守ってくれる可能性があるというわけです。

したがって、風呂に入りたくないときの言い訳にはならないかもしれませんが、ある意味では、健康を維持するために体を少し汚れた環境にするのもいいのかもしれません。

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