私たちが輸血した血液は実際にどのように使われているのか?

2019年2月 6日

世の中には、血液を必要としている人がたくさんいます。

ガンの治療を受ける人をはじめ、出産や手術、貧血のような慢性的な病気の人など、3秒に1人が輸血を必要としているといわれるほど血液は毎年何百万もの命を救っています。

そして、それらは全て、誰かが自らの犠牲を払って提供した血液です。アメリカだけでも毎年約680万人が血液を寄付(献血)しているといわれています。

しかし、これらの血液は、自分の体を離れた後、どこでどのようにして人の役に立っているのか疑問に思ったことはありませんか?

ここでは、献血後の血液の行方や役立てられ方について、血液の成分ごとの役割をもとに分かりやすく紹介します。

体重の約8%を占める血液は、人間が生きていくためには不可欠であるにもかかわらず、残念ながら今の科学技術では、ヒト由来の血液機能の代替となるようなものがありません。アメリカでは、献血ドナーへの報酬制度まであり、物議を醸しているようです。

献血後の血液はどこに行くのか

それでは、アメリカを例に献血後に行われる血液の検査段階から始めましょう。

まず、血液の入った試験管は、感染症(ヒトのシャーガス病の原因となるクルーズトリパノソーマをはじめ、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV-1,2、ヒトTリンパ好性ウイルス、梅毒、ジカウイルス、バベシア症、ウェストナイルウイルスなど)の有無や血液型(A,B.O,AB)を確認するために検査室に送られます。

そこで血液は、巨大な遠心分離機に入れられて、約45%の赤血球、1%未満の血小板、約55%の血漿(けっしょう)といった成分の異なる3つの層に分離されます。

3つの層は、生命を維持する上でそれぞれが異なる機能を果たすため、患者にとって必要な成分層だけが輸血されるのです。輸血される人も、必要な成分のみを体内に入れることで、循環器系への負担が軽減されて、白血球による副作用を防ぐことにもつながります。

それでは、血液の成分ごとの役割をみていきましょう。

遠心分離された後の血液細胞の成分と使われ方

輸血された血液は、血漿とよばれる液体成分と赤血球や白血球といった血球成分(血液細胞)に分離され、下記のようにそれぞれの血液成分ごとに医療の現場で役立てられています。

主に貧血に輸血される赤血球

赤血球は、血液に赤い色を与える成分で、ヘモグロビンと呼ばれる赤いタンパク質を含んでいます。ヘモグロビンには、鉄(ヘム)が含まれており、肺で酸素と結びついて体中の組織に酸素を運んだり、二酸化炭素を肺に運ぶ役割があります。

これは、手術を受けている患者や貧血、抗がん剤の副作用などで血球数が足りない患者に与えられ、心臓や体の組織に安定して酸素を送り、血圧を保つ役割を補っています。

止血作用をもつ血小板

血小板の細胞成分には、血液が適切に凝固するのを助ける役割があります。外傷の際や体の臓器が出血した場合には、傷口をふさぐために血栓を作って流血による体内の酸素不足を防ぐと同時に、血圧の安定化にも貢献します。

このように、血小板は、止血の重要な役割を担うため、主には化学療法によって影響を受けたガン患者(凝固因子の生成が阻害されて出血しやすくなる)や、血液の凝固因子が足りずに出血リスクを伴う患者などに利用されます。

血液中の液体成分「血漿(けっしょう)」

血液が分離した後、上の層にみられる黄色がかった液体は、水分や塩分、酵素などの混合物からなる血漿です。血漿は、その他にも血液の凝結因子や抗体、タンパク質なども含みます。

90%が水分からなる血漿の主な機能は文字通り、栄養やホルモン、老廃物などを運ぶ体液として身体中を巡ることですが、血漿に含まれている成分が分解されて新たなタンパク質合成として使われたり、血液の浸透圧を保ったりと、血漿にはマルチな働きがあります。

血漿から抽出されたタンパク質や抗体は、まれな慢性疾患のケアに役立てられています。

採取された血液の保管について

遠心分離された血液の成分は、必要なときに備えて、良い状態で保管する必要があります

実のところ、各成分は、それぞれに保存に適した温度や期間が異なります。

たとえば、血小板は採血後最長で3日間しかもちませんが、赤血球は42日間、血漿においては冷凍保存で約1年間保管できます(アメリカ基準)。

そのため、有効期間が比較的短い血小板や赤血球は、通常、それらが採血された国内で使用されています。しかし、血漿は長期間保存することができ、世界的に需要が高いため、海外に出荷されることもあります。

つまり、誰かが今日献血した血液のうち、血漿だけがオーストラリアやカナダ、ベルギー、オランダといった場所に送られる可能性があるのです。

血漿の主要輸出国「アメリカ」

特にアメリカは、血漿の主要輸出国の一つで、米国国勢調査局のデータによると、2017年度における血漿、ワクチン、血液の輸出が約200億ドルにも及ぶといわれています。

シドニー大学のグローバルエコノミストであるRobert Slomin博士は、世界市場の約80%がその出身国以外の場所から血漿を受け取っていると推定しています。

さらに、Slomin博士は次のようにいいます。

世界の国々の多くは、非常に長い間、十分な血漿を収集できませんでしたが、アメリカは、備蓄した血液を世界中の医療機関の求めに応じて供給できる決済システムをもつ「民間血液銀行」の商業ベースをつくり、今や世界的供給者となりました。

血漿を自国ですべてまかなうには輸血用血液製剤をつくり、それを保管する技術をもった民間の血液銀行を持つことが不可欠なのです。しかし、そういった国はまだ限られています。

たとえば、オーストラリアでは、血液銀行を経て、医療機関に提供されているすべての血漿の約50%が、アメリカのドナーによるものだといわれています。

アメリカの献血ドナーへの報酬制度

アメリカの献血ドナーは、定期的に血漿を寄付できますが、献血には約45分間針を入れた状態が続き、血を抜かれることへの不快感などから、血漿を寄付すると金銭的なインセンティブ(報奨金)がもらえることがよくあります。

実のところ、このような報奨金制度については、物議を醸しています。

たしかにエコノミストのなかには、血液や血漿の需要は非常に高いので、それを無私の心だけではまかなえないと主張する人もいます。

しかし、世界保健機関(WHO)は報奨金制度に関する倫理の問題はもっと複雑で、賃金をもらうために自分の健康について嘘をついている人々への懸念を示しています。

これについては、Slomin博士は、Tシャツやギフトカードのように直接現金ではない支払いをすることを提案しており、献血市場も少しずつ変化を見せているようです。

イタリアでは、献血者に、お金ではなく有給休暇を提供するというユニークなプログラムを2年間実行したところ、これを採用したコミュニティでは、血液供給が、なんと40%もの増加を見せたのです。

これは、献血市場にとってかなり強力な影響力を与えました。

最後に

今、世界中で血液の需要は非常に高いレベルにあります。

あなたは、血液を必要とする人に、安全な血液を安定して供給し続けるための最善の方法は何だと思いますか。

国によっても対応の仕方は違うかもしれませんが、血液市場のあり方について見直す時期に来ているようです。

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