子供は、病気やスポーツなどをするときに、吐いてしまうことがよくあります。おそらくほとんどの親が、子供の嘔吐で悩んだ経験があるかもしれません。
特に乳幼児期は、免疫システムがまだ発達段階なので、ウィルスやバクテリア、食あたりなどさまざまな影響によって、お腹の調子が悪くなりやすいようです。
しかし実のところ、それ以上に子供の嘔吐には、脳や神経系の仕組みが大きく影響しているといわれています。
ここでは、子供が吐き気や嘔吐を引き起こしやすい理由について、科学的に分かりやすく紹介します。
嘔吐はどうやって引き起こされるのか?大人と子供の違い
生物学的にいえば、嘔吐は、求心性神経細胞と呼ばれるグループ、つまり情報を末梢から脊髄や脳といった中枢にもたらす神経によって引き起こされています。
そして、大人も子供も同様に、これらの神経は、化学物質やストレス、運動などさまざまな要因で活性化されます。
しかし、子供の求心性神経は、情報の入力に対してより敏感なうえ、脳はまだ身体機能の調節について学んでいる過程であるために、情報の処理機能がうまく扱えずにさまざまな症状を引き起こしてしまうのです。
子供は神経が敏感
たとえば、大人の場合、脳から出で心臓やその他の内臓器官に広く分布している迷走神経が刺激されると、吐き気や嘔吐が引き起こされることが分かっています。
子供の神経系がより繊細であるならば、走ったり跳んだりと活動量が多い子供が、求心性神経路を介して嘔吐中枢を刺激されやすいのは説明がつきそうです。
大人には影響ないレベルの刺激であっても、子供にとっては、嘔吐反射を活性化させるのに十分なのです。
感情中枢が未発達な脳が感情的なシグナルを誤認してしまう
また、子供の脳は感情の処理について学んでいる最中なので、不安や恐怖、過度の緊張などによって簡単に精神的に打ちのめされてしまうのも要因のひとつとなっています。
子供の頃は、感情中枢である脳の海馬や扁桃体がまだ互いにつながりを形成している途中です。しかし、その接続が未完成であっても、すでに他の部位とはつながっているため、ときには脳が感情的なシグナルを誤って解釈してしまうことがあります。
たとえば、子供が強い恐怖やはげしい喜びによって感情がたかぶったときに、脳があやまってそのシグナルを病気と解釈してしまうと、それが脳幹による嘔吐反射の引き金となってしまい、必要ないときに嘔吐が起こるとされています。
それに加えて、子供の頃は、自分の気持ちをうまく表現できない時期なので、それがアドレナリンやコルチゾールといったストレスを感じたときに出るホルモンの蓄積につながり、嘔吐や病気を起こすと示した研究もいくつかあります。
痛みへの耐性が低い
また、子供は、痛みに耐えられるレベルが低いことも嘔吐につながる可能性があります。
研究によると、内臓痛と呼ばれる体の内部の痛みと吐き気は、いくつかの神経経路を共有しているため、科学者たちは、一方の感覚が他方に影響を与えると考えています。
特に乳幼児期は痛みに対する耐性が低いため、腹部付近で強い痛みの信号が起こると、脳が誤って吐き気として認識し、嘔吐を起こさせてしまうのです。サッカーボールがおなかに強く当たったときに吐いてしまうのはそのためです。
一方で痛みに対する耐性が高い大人の場合は、それは大した問題ではありません。
最後に
さて、これまでの説明については、注意すべき点もあります。実のところ、誰もが子供を故意的に嘔吐させたくはないため、子供の吐き気や嘔吐の原因を示す実験的なデータや科学的な証拠がほとんどないという点です。
しかし、良いニュースもあります。子供たちは、さまざまな理由でよく吐いてしまいますが、そのほとんどが心配する必要はないといわれています。
ただし、嘔吐物に血液や胆汁のようなものが混ざっていた場合は気を付けなければならないと小児科医は警告しています。そうでなければ、症状の回復には、水分補給と愛情あふれた抱擁が役立つでしょう。