この冬の記録的な寒さが地球温暖化のせいである理由

2019年4月23日

今年の冬は、厳しい寒さとなりました。

アメリカ中西部には大寒波が襲い、シカゴでは気温がマイナス30度まで低下し、冷たい風が吹いたときの体感温度はマイナス50度にも及んだといいます。

それは火星の一部地域よりも寒いことを意味します。学校は閉鎖され、郵便もストップし、飛行機は欠航となりました。この呼吸にも影響するほどの寒さに長時間さらされたことで命を落とす人は数十人。さらには、多くの人が凍傷によって手足の指を切断したのです。

この寒さは、地球温暖化が、やわらいできたからなのでしょうか?

残念ながらそれは違います。むしろその逆で、地球温暖化の進行によって寒さが厳しくなったといえます。

ここでは、地球規模での気候変動の大きな要因として考えられている「北極温暖化が寒い冬を引き起こした説」を中心に、増えつつある温暖化に対する科学的根拠をもとに分かりやすく紹介します。

天候と気候は違う

まずは、天候と気候の違いから考えていきましょう。

天候とは、短期間に大気中で起こっていることです。一方で気候は、1ヶ月以上にわたる天候の長期的なパターンです。

当然ながら、東京都が特に暑い、または、寒い日が1週間続いたからといって、それが必ずしも長年、または、数十年にわたる地球全体の気候の変化を意味するわけではないのです。

しかし、大気の長期的な変化は、今年の冬にアメリカ中西部に起こった極端な寒波や激しい吹雪の増加といった局所的な天候の変動を各地に引き起こす可能性があります。

それを理解するためには、このように急激に襲った大寒波がなぜ引き起こされたのかを考えていきましょう。

大寒波はなぜ起こるのか

「極渦(きょくうず)」という言葉を聞いたことはありますか?

それは、地球の極付近の上空にできた低気圧で冷たい空気からなる大きな渦の塊です。

地球には、南北の各極に一つずつ、実際には2つの極渦があります。

しかし、アメリカでいつも北極の極渦ばかりが話題にあがるのは、それがシカゴを包み込んで寒波を引き起こすことがあるからです。

極渦は通常、すごい速さで反時計回りの方向に流れる空気の流れ「ジェット気流」のおかげで北極の上空高くに保たれています。

ジェット気流によって極渦が乱れると寒波や猛暑が発生

このジェット気流が、冬によく見られるように減速すると、弱く不安定になって大きく蛇行し始めます。すると、北半球の極付近にあるはずの極渦の一部がその動きにあわせて南下し、冷たい空気を移動させる可能性があるのです。

冷たい空気が南に移動すると、赤道からの暖かい空気は北に移動します。

それは、ある地域を急激に凍りつかせ、他の地域にはうだるような暑さを与える可能性を意味します。

たとえば、真冬のアラスカ州で、毎年約1600キロを駆け抜ける犬ぞりレースが、暖冬の影響でキャンセルなったり、アメリカ南東部を襲った熱波のように、一部の地域に熱い空気の波が次々と押し寄せて死者を出すほどの暑さや干ばつを引き起こしたりします。

異常気象がより頻繁に長い期間続くようになった

実のところ、大気の変動きによる異常気象は、それほど目新しいものではなく、極渦という用語も、1853年に最初につくられたと考えられています。

しかし注目すべきは、極渦による極端な天候の発生がより頻繁に起こり、そして、より長く続くようになったことです。

これは、私たちが気候の変化に気付き始めただけでなく、地球温暖化が確実に進行していることの証明にもつながります。

地球規模で、将来の気候を長期的にシミュレーションした「気候モデル」によると、赤道付近よりも温暖化の影響を受けやすいといわれる北極圏が暖かくなれば、そこの冷たい大気と赤道付近との温度差は減少すると予測されています。

これは、異常気象が頻繁に、そして、長い期間生じる要因になってしまいます。

空気の温度差によって風が生まれる仕組み

空気は、寒いところ(高気圧:密度が大きい)から暖かいところ(低気圧:密度が小さい)に向けて流れるため、それが風を生みます。

温められた空気は上昇して(上昇気流)、そこに冷たい空気が流れ込むことで、風が引き起こされるのです。空気の温度差は、いわば風の燃料のようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。

これを地球で考えると、極付近と赤道付近に生じる寒暖の温度のコントラストが、風に影響を与え、その違いが少なければ少ないほど、風がゆっくりと上空に上がる(上昇気流)ことになります。

そして、遅い風は極渦をより一層不安定にし、ジェット気流を大きく蛇行させるので、この種の極端な冬の天候が生じやすくなるのです。さらに、寒気が再び北に押し戻されることがないので、そのような異常気象が長くそこにとどまってしまいます。

それらが、まさに私たちが見てきた異常気象の成り立ちです。

北極海の海氷域の縮小によって地球の温度が上昇する

気候変動に関する政府間パネルによると、北極圏は、海氷の面積の縮小によって、地球上のどこよりも早く温暖化していると報告されています。

基本的に、海氷は、海水に比べて太陽を反射させやすく、地球への熱の吸収を和らげたり、海水からの熱を遮断したりして、地球全体の温度の上昇を抑える役割を果たしています。

また、大気への直接的な影響だけでなく、低温(水の密度が大きい)の海氷は、海流の循環によっても、地球の気温のバランスを保っています。

そのため、海氷が溶けると、日光をよく吸収する暗い水「海水」の面積が広がるだけでなく、海水の黒いスポットが増え、これが気候変動によるジェット気流の乱れと合わさると極渦を乱して、さらなる温暖化を引き起こします。

実際にScience誌に掲載された2015年の論文では、過去35年間で極渦の風速が4から6パーセント低下し、それらの運動エネルギーが8から15パーセント低下したことが示されています。

こちらもどうぞ:
地球上の氷が全て溶けたらどうなるの?

地球全体で気温が高い日が増えている

今年の北極圏の気温は、一日あたりの平均気温より最高で20度高くなっています。

温暖化が、大気や海流の流れに大きな影響を与えることを考えると、間違いなく極渦を南に移動させる可能性がこれからさらに高まり、私たちは、地球規模での気候変動の証拠を目にするようになるでしょう。

事実、北半球では、イリノイ州だけでも、1月に史上最低気温を2度更新し、南半球のオーストラリアを中心に、35もの記録的な最高気温が生じています。また、オーストラリアの1月の平均気温が、観測史上初めて30度を超え、干ばつの影響が拡大しました。

このような記録的な異常気象は、今年だけではなく、過去10年間を振り返ってみると、たくさんの記録があり、寒い日よりもはるかに暑い日に多くみられます。

これは、私たちの惑星が全体的に温暖化している強い傾向といえそうです。

最後に

Nature Climate Change誌の2016年の論文では、1980年代以降、極渦が弱まり、ユーラシアに向かって東に移動していることがわかりました。

それは、将来的にはアメリカでは東海岸で、ヨーロッパもまた、北極のような大寒波に見舞われる可能性が高くなることを意味します。

しかし、これらの極端な気象現象がどのくらいの頻度で発生するのか、また、それらが将来どのくらい続くのかは、まだ不明確な段階です。

天気の予測はさまざまな要因が絡み合った本当に難しいものであるため、気候変動がどのように極渦やその他の大気の特徴に影響を与えるのかについてのより長期的で詳細なデータが必要となります。

参照元
こちらもどうぞ