毎分ゴミ収集車一台分のプラスチックごみが海に投げ捨てられているのを知っていますか。
事実、このままでは、2050年までには、ごみの量が魚を上回るだろうと予測されています。
恐ろしいのは、これがプラスチックごみの話に限られていることです。
無駄に捨てられる食料品においては、毎年13億トンにもおよび、これは、地球上で生産された食料品の3分の1が誰にも食べられずに破棄されていることを意味します。
正直なところ、この数値は現在把握されているだけで、現実にはもっと多くの食べ物が捨てられているかもしれません。
それでは、仮に私たちがそれぞれ、毎日出るゴミを庭で燃やすようになったら地球上のゴミ問題は解決するのでしょうか?
ここでは、地球のごみ問題について、私たちが今直面している問題や状況の本質を分かりやすく紐解き、どう取り組んでいけばよいのかという視点やアイデアを紹介します。
みんなが庭でゴミを燃やしたらどうなる?
なかには、各自で出たごみをそれぞれが庭や公園で燃やしてしまえば、地球のごみ問題は軽減すると考える人もいるかもしれません。
たしかに、海や山からごみは消えるし、みんなでごみの焚火を囲うのも楽しそうです。
しかし残念ながら、期待に反して、それでは新たな問題が生じてしまいます。焼却処理による地球上の有毒汚染物質が増加し、最終的に人間のガン発生率の増加につながることです。
少し恐ろしい仮説ですが、現実問題として、今世界の約41%のゴミが、開放型の焼却施設で燃やされており、確実に有害物質は放出されているといえます。
WHO(世界保健機関)によると、世界の子供の90%が、有害な空気を吸っています。
2016年においては、420万人にも及ぶ早死の原因が、大気汚染に起因したものだと考えられているのです。
おそらく世界中の人が、庭で家庭ごみを燃やし始めると、それ以上の人を死に至らしめてしまう結果につながるでしょう。
廃棄物焼却施設で燃やすとどうなる?
それなら、日本のように焼却炉の構造や焼却方法が管理された屋内の廃棄物焼却施設で世界中のゴミが加熱処理されるとどうでしょうか?
おそらく整備された屋内の処理施設なら、年間で80%から85%のごみを削減できるでしょう。
環境先進国デンマークのコペンハーゲンでは、屋根でスキーも楽しめるうえ、火力発電もできるゴミ処理施設が話題を集めています。一年中できる人工雪でのスキーだけでなく、ロッククライミング体験やエンターテイメント性を備えた複合施設です。
しかし、そのような屋内の焼却施設でも、ごみ処理後に発生する灰や排ガスの問題は残されています。
ゴミ処理後に生じる灰の問題
シンガポールでは、ごみ処理後にでた人体に有害な灰を、人工的に埋め立ててつくられたセマカウ島に船で運んで処分しています。
また、ベルギーでは、セメントとして再利用する試みが行われています。
ゴミ処理後に生じる排ガスの問題
ゴミ処理後に生じる排ガスは、大気中にダイオキシンをばらまく可能性があります。
そこで、最新のゴミ処理施設では、可燃性の優れた装置や有毒物質に対するフィルターシステムなどの導入によって、人体に有害な物質が大気中に排出されないように考えられています。
しかし、環境法が整っていない国では、これらのゴミ処理後の有害物質の問題が軽視されることも多いのが現実です。
つまり、住む場所によって、大気中の汚染物質の濃度が大きく異なるようです。
エネルギー先進国の取り組みと問題点
再生可能エネルギーに力を注ぐスウェーデンでは、埋め立てられるごみは全体の1%に過ぎません。残りの半分が焼却処理され、もう半分はリサイクルされています。
そして、なんとスウェーデンの総電力量の8.5%が、ゴミを燃やして得られていているエネルギーだといわれています。この仕組みによって、(埋め立てられる)有害物質を減らし、再生可能エネルギーを作り出そうとしているのです。
しかし、ごみを燃焼すると排出されるCO2量が増えることは否定できません。
ゴミ焼却施設では、1時間1メガワット(1000kW)あたり、約447キロもの二酸化炭素が放出されます。
アメリカにおいては、2016年にゴミ処理場から出たCO2量は1200万トンにも及びました。
この数値とともに、ゴミの焼却処理にはたくさんのエネルギーを使うことも、環境問題として知っておく必要があります。
それでは、一番最初の問題に話を戻してみましょう。海に投げ捨てられるプラスチックの話です。
スウェーデンでは、プラスチックごみは、燃やさないでリサイクルしています。
プラスチックを海に投げずにリサイクルすべき理由
プラスチックは、私たちの生活や工業製品、流通業などを含めて、現代社会において、もはや不可欠といっても過言ではないほどさまざまな場面で使われています。
そのほとんどが石油や天然ガス由来の石油化学製品から作られたものであるため、それを焼却するのであれば、新たにプラスチックを作るためにさらに石油や天然ガスが資源として必要となります。
つまり、プラスチックごみを燃やすと、たくさんのエネルギーを消費するだけでなく、石油や天然ガスを常に必要とした環境に悪いサイクルができてしまうのです。
おそらく石油会社にとっては、この循環サイクルは喜ばしいことであり、かえってプラスチックのリサイクルは望ましくないかもしれません。
2019年に化石燃料会社をはじめ、グローバル企業大手は同盟を組んで、15億ドルを投資して、海のプラスチックごみ削減のために「Alliance to End Plastic Waste(AEPW)」を設立しました。
この取り組みには、プラスチックごみから燃料を作り出すエネルギー対策がありますが、一方でプラスチックごみの焼却システムの導入などもあります。
やしてしまうと、新たなプラスチック生産に石油が必要であることを考えると、資本経済は複雑なもので、石油や天然ガスを常に必要としたサイクルの促進も見え隠れしているようです。
ごみ処理のコスト的な問題
私たちの資本主義社会におけるものは、すべてお金が関わっています。
世界銀行は、プラスチックごみの焼却には、埋め立て処理のほぼ2倍のコストがかかると推定。
実際に土地がたくさんある国のように、ごみを廃棄するためにお金を支払うよりも、埋め立てて安くすませようとする国もあるようです。
それでは、これから私たちはプラスチックごみによる海洋汚染とどう向き合っていけばよいのでしょうか?
まとめ
家の裏庭や開放的な処理場で、皆がごみを焼いて処理するようになると、地球上の大気汚染は進み、健康を害するリスクは一層高まります。
有害な排気ガスへの対策が行われた屋内のごみ処理場で焼却すると、エネルギーをたくさん消費してしまいます。たとえ最新技術によって、ごみ処理によるエネルギー生産が促されたとしても、炭素の足跡を残し、石油や天然ガスに頼った循環サイクルを高めてしまうでしょう。
今、ごみの地球規模での危機は、革新的な燃料技術に希望を抱いています。
そのひとつに、プラスチックの熱分解があります。プラスチックを細断して溶かしてからガス化することで、酸素の消費量を減らせるだけでなく、煙や有害物質の発生を抑えて、ディーゼルなどの燃料を作り出すこともできる技術です。
私たち一人ひとりが、ごみ問題に対してできることは、情報を集めてできる限り学ぶことです。
ゴミの廃棄問題は私たちすべてに関わっています。まずは、身の周りのごみを減らして、再利用することから始めましょう。買い物の回数を減らすと、プラスチックごみの量も減ります。
仮に熱分解のような革新的なアイデアが思い浮かばなくても、プラスチック使用量の削減に焦点を当てるだけで未来は少しずつ変わっていくでしょう。