「1日1万歩」は本当に必要なのか?健康を考えたウォーキングの新常識

2019年10月10日

フィットネストラッカー(健康管理用のスマートウォッチ)のゴール設定が1万歩であるように、多くの歩数計によると、健康的なライフスタイルを送るには、1日に1万歩は歩く必要があります。

しかしそれは、なぜなのでしょうか?

たしかに誰もが運動が健康に良いことは知っていますが、この1万歩という数字には何か特別な意味があるのでしょうか。

医師や科学者たちは、これが健康を維持するのに最適な数値であることをどのようにして導き出したのでしょうか。

実のところ、この0が並んだ魔法のような数値は科学によって裏付けられたものではないようです。

ここでは、健康のために必要な1日の歩数についての考え方を、1万歩という数値と効果的な運動量の関係に焦点をあてて分かりやすく紹介します。

「1万」歩の数字はどこからきたのか

この1万歩という数値は、1960年代半ばまでさかのぼり、日本において世界で最初に身につけられる歩数計が生まれた時に登場しました。

誰もが知るように、その開発者がデバイスにつけた名前「万歩計」、つまり、1万歩を計測する装置に由来するものです。

そして、この万歩計は、ちょうど1964年の東京オリンピックに乗じて、全体的な健康を促進すると盛大に宣伝されたのです。

人々は、それから数十年経った今も、巧みなマーケティング戦略のおかげで、この膨大な歩数を健康管理に役立てようと日々の目標にしています。

しかし、残念ながら今に至るまで、1日1万歩が健康目標であるべきという決定的な証拠はありません。

歩数は寿命に影響を与えるのか

過去には、5000歩と1万歩の健康上の利点を比較した研究が行われ、当然のことながら、歩数値が高いほどよいことが示されています。

しかし、5000歩と1万歩の間の歩数に関してや、一般的な成人に対しての総合的な試験への取り組みは今でも行われていません。

ハーバード大学の医学部教授であるI-Min Lee氏と彼女のチームによる新しい研究では、70代の16,000人以上の女性のグループに焦点を当てて、毎日の歩数と総死亡率(何らかの原因で死亡する可能性)の比較が行われました。

被験者を追跡したときには、生存者が半数以下になったという事実はありますが、この研究では、一日に4000歩を歩いた女性は、2700歩しか歩かなかった女性よりも生存率が高いことが分かりました。

小さな歩数の違いが、寿命のような重要な問題に影響を与える可能性が示されたことは驚くべきことで、この論理によって、歩けば歩くほど健康になるように思われました。

しかし、実際には、1日の歩数が7500歩を超えると、結果は横ばいになり、それ以上は平均寿命には影響を与えなかったのです。

実のところ、多くの研究において、どれだけ歩くかよりも、「どれだけの速さで動くか」が、運動においてはるかに重要であることが示されています。

歩数よりも運動量が大切

論文では、あなたが歩いていようと、他のことをしていようと、中程度、または、激しい運動が、うつ症状の減少や不安感の軽減、睡眠の質の向上、骨強度の増加などに関連していることが示されています。

これは、多くの保健機関がガイドラインに、特定の歩数ではなく、運動に要する一定の時間を推奨する理由を説明しています。

たとえば、アメリカ人のための身体的活動におけるガイドラインでは、平均的な成人は毎週最低150分の中程度の運動、または、75分の激しい運動を行うべきであるとしています。

ただし、これらのガイドラインを歩数に無理やり変換した場合、1万歩はそれを達成できるだろうと考えられます。

たとえば、運動量を中程度と見なすには、安静時のエネルギー量の少なくとも3倍を燃焼する必要があります。

一部の成人の場合、これは1分あたり約100歩のペースで、または、1時間あたり約4キロのペースで歩くのと同等であることが研究により示されています。

したがって、これらの米国のガイドラインを達成するには、このペースで1週間にわたって1万5000歩、または、1日あたり約2100歩は歩く必要があります。

その数値は歩数計の目標値を満たすものではありませんが、心拍数を上げることができる可能性はあります。

ただし、この歩数を達成できなくても、心配する必要はありません。

歩くだけが健康維持のための選択肢ではなく、他にもたくさんの運動方法があるからです。

1万歩にこだわらず、自分にあった運動目標を設定する

アメリカのデューク大学の心理学者であるジョーダン・エトキン氏は、1日の歩数を数える日々は、歩くことの本質的な喜びを奪う可能性があるといいます。

彼は、歩数の計測のために歩き回った人は、やがて歩くことを仕事のノルマのように感じるようになり、歩数計を使わずに歩いた人よりも幸福度が低いことを発見しました。

それは、実際に歩数計がなくても、健康で活動的な生活を送っている人々がたくさんいることからも分かります。

いずれにせよ、あなたが中程度、または、激しい運動を取り入れることができれば、健康状態がよくなる可能性があるので、1万歩にとらわれずに、ニーズや時間の経過に応じて自分にあった歩数目標を設定する必要があります。

人によっては、1万歩よりも多く歩く必要があるかもしれませんし、運動不足の人やリハビリ中の人はそれよりも少ない目標値になるでしょう。まずは、1週間にわたって、1日の平均歩数を調べ、それに1000歩追加した値を目標に歩き始めることをおすすめします。

もちろん、歩数計を使用しないという選択肢もあります。

ハーバード大学公衆衛生学部の研究者は、1日30分の散歩によって、脳卒中リスクが最低20%減少することを示しました。

モバイルデバイスを使わなくても、30分を目安に歩くだけで、太陽の光を浴びて効率的にビタミンDが摂取できたり、気分がよくなったり、睡眠の質が改善したりとさまざまなメリットが得られるのです。

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