ヒトはなぜ呼吸に片方の鼻孔しか使わないのか?

2020年2月27日

風邪を引くと、片方の鼻がつまって一方の鼻孔でしか呼吸できないことがあります。

しかし、実際には風邪に限らず健康な人の鼻でも、左右2つの鼻の穴を数時間ごとに交代させながら呼吸しているのを知っていますか?

私たちは、気づかないうちに「さっきは右側の鼻がつまっていたのに、今度は左」というように、鼻の空気の通り具合を左右でコントロールしているのです。

それでは、なぜヒトは2つの鼻の穴で交互に呼吸をしているのでしょうか?そもそも鼻の穴が2つあるのはなぜでしょうか。

ここでは、その理由について、鼻の興味深い役割を考えながら分かりやすく紹介していきます。

ほとんどの人が片方の鼻だけで呼吸している

ヒトの鼻孔は、常に呼吸の義務を負っています。

それはあまりに当たり前すぎて、普段から意識している人は少ないでしょう。おそらく、鼻詰まりのときに改めて実感することかもしれません。

左右の鼻は、肺への出入り口です。そして、私たちは、この左右の鼻の空気の通り道を、数時間周期で交互にふさぎながら呼吸を行っています。

この現象は、「ネーザルサイクル(鼻周期、または、交代制鼻閉)」と呼ばれ、10人に8人は片方の鼻でしか呼吸を行ってないと考えられています。

そのため、もしいつもどちらか一方の鼻がつまったように感じているなら、それは、このネーザルサイクルによって一方の鼻孔の血流が増え、一時的に他の鼻孔よりも腫れて空気の流れが制限されているだけなので心配はいらないでしょう。

実は、呼吸にネーザルサイクルがあるのは、私たちに鼻の穴が2つあることと深く関係しています。

鼻の穴が2つある理由

鼻孔が2つあると、鼻にかかる負荷が分散されて、嗅覚が鋭敏に保たれます。それだけでなく、他にも鼻がもつ役割を効率的にする効果があるといわれています。

それではまず、鼻の穴は、外の世界と肺をつなぐ入り口であるという事実に基づいて、鼻の役割とあわせて考えていきましょう。

外の空気を肺に適した温度と湿度に調節する鼻の役割

肺は、外がどんなに寒くても、暖かく湿った空気を必要とするため、鼻には、外の冷たい空気が直接肺に入らないように温めて加湿する役割があります。

鼻の内部には、鼻甲介(びこうかい)と呼ばれる空気の通り道があり、加温・加湿効果を高めるためにひだ状になって内部の表面積を広くしています。

この鼻甲介は、毛細血管が密集するところで、表面が粘膜でおおわれています。冷たい外気がこの通り道に入ってくると、血管を膨張させて温かい血液で空気を温め、粘液(鼻水)で加湿する働きがあるのです。

ところが、冷たく乾燥した空気がたくさん入ると、鼻の内部が損傷を受けてしまうことがあります。

空気の有害物質を取り除く鼻の役割

空気は、酸素だけでなく、病気の原因になるウイルスやほこり、ゴミ、花粉などが混ざっているため、鼻の内部には、繊毛と呼ばれる短くて細かい毛があり、繊毛の動きによってこれらの有害物質を取り除き、空気を浄化しています。

しかし、浄化フィルターとして機能する繊毛は、ときどき休ませなければ乾燥した空気の影響を受けて粘液が奪われてしまいます。そうなると、空気中の細菌や有害な粒子が体内に取り込まれるのを防ぐための機能は低下します。

ゆえに、普段からそれほど酸素を必要としないときは、一方の鼻甲介に血液を大量に送り込んで充血させ、通過する空気の量を制限することで繊毛を休ませているのです。

嗅覚の働きを効率化

ネーザルサイクルはまた、有害物質をかぎ分けたり、食べ物のにおいを楽しんだりする嗅覚の働きを助ける役割もあります。

「ニオウ」とは、空気中の浮遊化学物質の検出を意味します。

これらの浮遊物質は、鼻の奥で嗅細胞とよばれる約4000万にもおよぶ受容体と出会うと一時的に化学結合します。すると、刺激を受けた鼻の受容体が、脳に信号を送ります。この信号を脳が受け取ることで「あ、におう」とニオイを感じることができるのです。

しかし、ニオイの化学物質のなかには、他の化学物質よりも鼻の受容体に結合しやすいものがあります。そういった物質は、受容体にくっつきやすいので、鼻の中を速く進まないと入り口で吸着されてしまい、後部の受容体にまで届かずにニオイを感じにくくなります。

対照的に、受容体にくっつきにくい化学物質の場合は、ゆっくりと移動しないと結合できずに検出されないまま通り過ぎてしまう可能性があります。

そのため、私たちの鼻は性質の異なるさまざまな化学物質に対応するために、一方の鼻の空気の流れを制限し、もう一方の通り道を拡張させて、それぞれの空気の流れを調節することで、より広い範囲のニオイを検出できるようにしているのです。

最後に

いかがでしたか?

鼻がつまったように感じるのは、風邪や花粉症、アレルギーだけが原因ではなく、正常な感覚のひとつでもあったようです。

私たちには鼻の穴が二つあります。

当たり前のようですがそれにはちゃんとした理由があり、片方ずつの腫脹と収縮を繰り返すことで通過する空気の量を調節し、ときには鼻を休ませたり、呼吸に必要なエネルギーを節約したりできることが分かったと思います。

風邪で鼻の通りが悪いときには不便に感じるかもしれませんが、このネーザルサイクルがあるおかげで、肺は正常な状態に保たれ、さらには、鋭敏に保たれた嗅覚でチョコレートのような複雑な香りを味わうこともできるのです。

これからは働き者の鼻に感謝し、少しくらいの鼻詰まりは我慢して、片方ずつ休ませてあげましょう。