現代人は、なぜ鮮明な夢や悪夢をよく見るのか?

2020年6月22日

最近、夢の内容を鮮やかに覚えていたり、怖い夢を見たりすることが多くなったと感じていませんか?

私たちは、目を覚まして夢を見たことすら分からないこともあれば、夢のイメージが非常に強かったために鮮明に思い出すこともあります。

特に社会的孤立を感じやすく、不安やストレスの多い現代社会では、鮮明な夢や奇妙な夢を見る人が多いといわれています。そして、それには、心理的な要因が関わっているようです。

ここでは、現代人が、鮮明な夢や悪夢をよく見る理由について、夢と脳の記憶メカニズムの興味深い関係をもとに分かりやすく紹介します。

鮮やかな夢はレム睡眠中に起こる

脳科学者たちは、なぜ人間が夢を見るのかについては明確ではありませんが、夢と記憶のメカニズムになんらかの関係があると考えています。

睡眠は、身体を再充電するための「静の時間」というイメージが強いかもしれませんが、実際には、睡眠中に脳はとても活発に働き、夢を見ています。

夢は、重要な情報を処理して保存するときに、脳が不要な記憶を排除するのに役立つと考えられています。時々、夢をよく覚えていなくても、目を覚ました後に頭がすっきりしたと感じた経験があるのもそのためです。

夢はとても複雑なものです。しかし、ひとつ確かなのは鮮明な夢は浅い眠りに結びついていることです。

睡眠には、入眠直後に入る深い眠りの「ノンレム睡眠(脳が眠り、身体が起きている)」と浅い眠りの「レム睡眠(脳が起きて体が眠っている)」があり、約90分ごとにこのサイクルが繰り返されているといわれます。

そして、深い眠りから浅い眠りに入るとき、脳はノルアドレナリン(ノルエピネフリン)と呼ばれるホルモンを放出します。これは、脳の記憶の定着に役立つホルモンです。

この時に目覚めると、夢をより鮮やかに思い出すことができます。

一方で、ぐっすりと眠っている場合、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)のレベルは低いままです。つまり、夢を見ている間に経験したことを脳が記憶する可能性が低くなります。

残念ながら、最近は多くの人がぐっすり眠れていないようで、鮮やかな夢を見ることが増えています。

それは驚くべきことではありません。実は、睡眠障害を引き起こす主な原因として考えられているものは2つあり、それは現代人に増えている「ストレス」と「不安」です。

浅い眠り「レム睡眠」は脳がストレスに対処しようとした結果

夢のほとんどはレム睡眠の間に見られます。脳は起きているため、目覚めている間と同じように、心は基本的に活動しています。

通常、レム睡眠は、毎晩90分おきに4回から5回繰り返されますが、このサイクルは心理的な状態によって異なります。 2019年に行われたサリー大学の研究により、マウスではストレスと不安の上昇が、レムサイクルの長期化と高頻度化に関連していることがわかりました。

研究では、レム睡眠の増加は、マウスの脳がストレスに反応して対処するのに役立つと示され、同じことが人間にも当てはまる可能性があります。

ストレスや不安、睡眠不足は鮮やかな夢や悪夢を引き起こしやすい

脳がストレスに対応するためにレム睡眠を増やすのは、夢を作るために必要な時間も増えていることを意味します。そして、眠っている間、脳の活動が活発になると、より鮮明な夢が生まれます。

さらに、研究によって、睡眠不足の場合、その反応がより激しくなることがわかりました。平均的な成人は、健康のためには一日7時間から9時間の睡眠をとるのが望ましいといわれています。

しかし、睡眠不足になると脳は、その足りない時間を埋めるために、通常よりはるかに速くレム睡眠に入ろうとします。さらに、ストレスから回復するためのレム睡眠の期間は長くなります。

これはレムリバウンドと呼ばれ、このような激しい睡眠中、人々は特に鮮やかな夢を見たり、悪夢を見たりする傾向があります。

したがって、これらすべてをまとめると、ストレスがたまった状態の途切れ途切れの浅い睡眠では、実際に目を閉じたときに、より激しい睡眠をとっていることになり、たくさんの夢を見ることができます。さらに、眠りが浅い間に放出されるホルモンは、脳にそれらの夢を記憶する機会を与えるので、夢を特によく覚えているという結果に結びつくのです。

なかにはよく寝たように感じても、奇妙な夢や悪夢をたくさん見ることがあるかもしれません。

夢は、日常生活のなかで直面した問題やトラブルを映し出す鏡のようなものなので、どんなによく眠れたとしても、精神的、心理的な不安要素が夢に影響を与えてしまうのです。

人間関係や仕事に関する問題は、結婚や家の購入といった大きなイベント、トラウマ的なできごとによって引き起こされたストレスなどと同様に激しい夢を引き起こす可能性があります。

悪夢は記憶に残りやすい

2017年の調査では、日中の生活と夢の関係を調べた結果、被験者が1日中イライラしたり、怖がったり、満たされていないと感じたりした場合、その夜の夢の中にそれらの感情が再び何らかの形で表れる傾向が示されました。それは、日中の感情の起伏も、夢の強さに関係しているようでした。

ある理論では、日中に未解決な心配事や強い恐怖を感じたとき、私たちの潜在意識は一種の防御メカニズムとして夢の中で同様の状況を作り出そうとすることを示しています。

それが悪夢であったり、ストレスな夢という形であらわれます。

落ちた夢や怖いものに追われる夢、閉じ込められる夢、または、何かに繰り返し失敗する夢などはその典型的な例です。

そして、残念なことに、そういった夢は特に記憶に残る可能性があります。レム睡眠中に悪夢を見て恐怖や不安のために目覚めることがよくあり、そのとき、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が一気に急上昇することで、夢の記憶が定着しやすいからです。

悪夢への対処法

もし悪い夢をよく見ると感じているなら、それはあなた一人ではありません。そして、それらの悪夢を食い止めるための方法もいくつかあります。

悪夢を見るのは、睡眠障害だけでなく、服用中の薬や精神疾患、病気、妊娠初期、トラウマ的なものなどさまざまな要因が考えられますが、特に不安は、悪夢の増加と深い関係があると考えられています。

悪夢が長い期間続いてしまうと、感情的に不安定になったり、睡眠を妨げたりして、健康上の問題を引き起こす可能性があるので効果的な対処法を取り入れてみてください。

瞑想、習慣的なヨガ、就寝前の読書などは、不安を落ち着かせるのに役立ちます。それでもストレスの多い夢が繰り返される場合は、心像リハーサル療法(イメージ・リハーサル・セラピー)と呼ばれるものを試すこともできます。寝る前に、繰り返し起こる悪夢を頭で再現しますが、エンディング(結末)をより心地よいものに変えるという対処法です。

研究によると、この「脳の記憶情報を利用して筋書きを変える」という心理療法は、繰り返し起こる悪夢の頻度を減らしたり、悪夢が引き起こされたときの反応を弱めたりするのに役立ちます。

夢はときに、あなたの人生の特定の一時期だけに影響を与えるかもしれませんが、通常は、鮮明な夢を見たからといって心配する必要はありません。

悪夢ではなく無害な夢をたくさん見るようなら、この一時的な潜在意識について考えてみたり、それが続く間は楽しでみたりするのもいいかもしれません。

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