クロード・ホプキンスが成功した悪い習慣を変える方法

悪い習慣を変える方法仕事・勉強に役立つ話

今朝、あなたがミントのような爽やかな息ができたのは、100年前、クロード・C・ホプキンスという広告の神様が頑張ったおかげかもしれません。

というのも、それまでは、歯磨きの習慣すらなかったのですから。

彼は、練り歯磨きを販売する友人に頼まれて、誰も歯を磨かなかった時代に、まずは、歯磨きを毎日の日課とすることを納得させる必要がありました。

最終的に、彼は、半数のアメリカ国民に、歯磨きという新たな習慣を根付かせ、毎日歯磨き粉の代金を払わせることに成功。

さて、彼はどのようにしてそれを可能にしたのでしょうか?

それは、神経科学を駆使して、習慣の驚異的なパワーを見出すことができたからです。

ここでは、悪い習慣の断ち方や新たな習慣を身に着ける方法について、脳回路の仕組みとクロード・C・ホプキンスの歯磨き粉戦略をもとに分かりやすく紹介します。

誰もがもつ習慣やクセ

私たちは誰もが皆、良きにつけ悪しきにつけ、なんらかの習慣を持っています。

じっと座っているといつも足で貧乏ゆすりをしてしまう人。

読書や映画鑑賞に集中すると爪を噛むクセがある人。

あなたにもいくつか思い当たるクセがあるかもしれません。

それらのクセは、ただ習慣化してしまっただけで、誰も意識的に行うわけではありません。

では、なぜ私たちは、「習慣」を形成するのでしょうか?

脳は、どうやって古い習慣を捨て去り、新しい習慣を学んでいるのでしょうか?

習慣を作る脳回路

もしあなたが今までに学校や仕事で同じ道を通ってきたなら、その道筋は、脳に焼き付けられています。

おそらく、意識しなくても、実際に同じ道を歩けるでしょう。

習慣も、これと同じ方法で構築されます。

ある行動を繰り返すと、新しい神経回路が形成されます。

そして、脳回路が発火すればするほど、私たちの脳はそれが何であれ、簡単に意識せずに、神経活動を行えるようになります。

初めて自転車に乗れるようになった時を思い返してみてください。

最初は、ペダルの踏み方や、バランスの取り方、曲がり方を同時に覚えなければならないので、本当に大変です。

慣れるまでは、それぞれの動作を、意識的に考えなければなりません

これは、複雑な思考を担当する前頭前野と呼ばれる脳の領域で行われます。

しかし、一つ一つの行動を意識的に何度も繰り返して考えて行ううちに、自転車に乗るという一連の行動が、一つの塊として定着し、習慣化していきます。

すると、今度は、脳の異なる部位でコントロールされるようになります。

それは、線条体という、習慣的行動に関与する領域です。

線条体は、「自転車に乗る」というタスクのために今まで必要だった複雑な思考を取り除いて、「今日の夕飯は何かな」など他のことを考えながらでもそれが無意識にできるように化学物質を放出して、脳を効率化します。

この一連の脳回路を、クロード・ホプキンスの歯磨き計画に戻って考えてみましょう。

クロード・ホプキンスの「新たな習慣を作る」広告戦略とは

クロード・ホプキンスは、習慣には3つの重要な要素があることに気づきました。

それは、手掛かり、行動、報酬です。

手掛かりとは、行動の引き金(きっかけ)になるものです。朝の習慣でたとえると以下にようになります。

「目覚まし時計の音」がきっかけとなり、
「スヌーズボタンを止める」行動を起こすと、
9分間の甘い余分な睡眠がご褒美として続く。

まず、クロード・ホプキンスは、人々に朝の歯についたヌルヌルした膜のことを考えさせました。

一晩で口の中をコロニー化した細菌たちがつくるネバネバした膜を「きっかけにし、歯を磨くという「行動」を誘発したのです。

この場合、報酬は何だったのでしょうか?

クロード・ホプキンスは、歯磨き粉があれば、醜い笑顔がもっと素敵な笑顔になれるというご褒美に結びつけました。

彼は、望む行動に対する、正しいきっかけと報酬があれば、人を惹きつけることができると確信していたのです。

ただし、脳が報酬を渇望する可能性があることまでは知りませんでした。

実際には、これが、習慣を強化します。

脳は報酬を渇望する

科学者たちは今、脳内の特別なニューロンが発火すると、化学的な報酬が与えられることを知っています。

しかし、奇妙にも、一度、習慣と報酬が脳内で結びつくと、報酬ニューロンは、行動する前から発火を始めます

そして、これが渇望の原因となります。

映画館に行くと ポップコーンが欲しくなるのはそのためです。

それでは、なぜ私たちは、他の人の悪いクセをマネしてしまったり、一度ついた悪いクセはなかなか治らないのでしょうか?

クロード・ホプキンスは、素敵な笑顔が歯磨きのご褒美になると確信していましたが、人々が歯磨き粉のミントの香りを無意識に渇望するようになるとまでは考えていませんでした。

では、私たちが新しい習慣を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか?

人は、悪い習慣を断ち切ることはできるのでしょうか?それとも、私たちは永遠にそこから抜け出せないのでしょうか?

脳は変化への柔軟性が高い

これまで科学者らは、成人に達したら、脳は、一度固まったコンクリートのように、あまり変化しないと考えていました。

しかし、研究が進むにつれて、あなたの脳が粘土のように柔軟性の高い器官であることが分かったのです。

脳の化学反応は、学習、行動、食事をするときなど全てに影響を受けて、日々の生活の中で常に変化しています。

たしかに一つ一つの化学物質の放出は短期的ですが、長い期間同じ行動が繰り返されると、脳の物理的な構造は変化し、新しい神経経路を作ります。

神経回路網の変化は、脳内での情報の流れ方も変えます。

このようにして、ある行動が十分に繰り返されると、新しい習慣が形成されるのです。

悪い習慣を変えるのは難しくない

「新しいスキルは1万時間の作業で身につく」という有名な考え方があります。

実際は、そんな単純な話ではなく、タスクの種類によって結果は異なり、個人差も大きいようですが、一つ確かなのは、「新しい習慣を身に着けるには、繰り返しの他に方法はない」ことです。

悪い習慣をなかなかやめられないのは、脳回路に新しいニューロンを織り込む必要があるからで、それは一朝一夕にはできないからです。

もし、あなたが悪い習慣をやめたいと思うなら、むやみに意識して治そうとせず、まずはリラックスしてください。

そして、悪い習慣を完全に消滅させようとするのではなく、新しい行動で悪い行動を変えるという考え方に切り替えてください。

幸いにも、あなたは今、自分には脳を変える力があることを知っています。

そして、それは、歯を磨くほど簡単なのです。

もし、変えたい習慣があるなら、ぜひ、今この瞬間から、新たな行動での上書きをスタートさせてください。

参照元:・How Habits Change Your Brain