未来は蓄電システムにかかっているのに、未だに優れた電池がないのはなぜか?

2021年3月30日

再生可能エネルギーは未来そのものです。

今、地球の未来は、電池の未来にかかっているといっても過言でないほど大切な問題だといわれています。

温暖化を防ぐには、CO2を排出する限りある資源「化石燃料」から、自然界に絶えずあり、環境にやさしいエネルギー源「再生可能エネルギーへできるだけ早く移行することが求められているのです。

しかし、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーは、魅力的である一方で、実際には、曇りの日や風が吹かない日が続くと供給できなくなってしまいます

人々は電気を常に必要としているので、これは大きな問題です。

そこで、電池(バッテリー)の出番。必要なときのために余分な電力を蓄えておけばよいのです。

しかし、現段階では、電池の技術はまだ十分ではないうえ、膨大な数の電池を作ることができたとしても、ある時点で、それはあまりにも高価なものになってしまいます。

実は、電池の技術や蓄電能力が十分ではなく、改善が難しいのには、それなりの理由があります。

ここでは、今科学者たちが熱心に取り組んでいる電池の開発について、何が問題で優れた電池ができないのかを中心に分かりやすく紹介します。

電池の改良は、とても難しい問題

最近、新しいノートパソコンや携帯電話を目にして、年々バッテリーの持ちが良くなっているように感じませんか。

しかし、それはほとんどの場合、電池そのものではなく、機器の他の部分の改良による功績が大きく、より大きなバッテリーや、より省エネ効果の優れたプロセッサーを詰め込むことでバッテリーのもちをよくしているのが現実です。

期待されるリチウムイオン電池

現在、優れたバッテリー技術のひとつに、リチウムイオンと呼ばれるものがあります。

携帯電話やノートパソコン、さらには電気自動車にも使われているバッテリーです。

この電池の構造は、大きく分けて3つの部分があります。

電気(電荷)を蓄える2つの面と、その間にあるしきり(セパレーター)で、それらは全て電解液と呼ばれるプラス極とマイナス極の電気の通り道としての役目を果たす液体に浸されています。

一つの面はアノードと呼ばれるプラスの電極(陽極、または、正極)で、通常は(リチウム、酸素、そしてコバルトなどの金属を組み合わせた)リチウム金属酸化物という化合物でできています。

もう一方はマイナスの電極(陰極、または負極)のカソード。多くの場合、鉛筆に使われているのと同じグラファイトと呼ばれる結晶性炭素のシートでできています。

そして最後に、この2つの面を分けているのがしきりです。このしきりは、プラスの電荷を持つリチウムイオンを通し、マイナスの電荷を通さないように設計された材料です。

リチウムイオン電池は、しきりを通り抜けて、プラス極とマイナス極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電が繰り返されている電池です。

リチウムイオン電池の仕組み

電池を充電すると、プラス極(アノード)から陽イオンが放出され、セパレーターを通過して、マイナス極(カソード)に蓄えられます。

そして、その電池で何かを動かそう(放電)とすると、その逆の現象、つまり、マイナス極(カソード)から放出された陽イオンがプラス極(アノード)に移動。

リチウムイオン電池のメリット

一般的には、電池が蓄えられるエネルギー量は、イオンの数が多ければ多いほど増えます

リチウムイオン電池が普及している理由のひとつは、リチウムイオンがイオンとしては非常に小さいことです。

そのため、電池のサイズを大きくすることなく、イオンの数を増やすことがでるのです

つまり、エネルギー密度が高い。

今、研究者たちは、このエネルギー密度をさらに高めて、蓄電や電気自動車など、より大きなプロジェクトに電池を使えるように取り組んでいます。

しかし、それは簡単なことではありません。

リチウムイオン電池の問題点

例えば、電池のエネルギー密度を高めるには、充電時により多くのリチウムイオンを蓄えることができるプラス極(アノード)が必要です。

そうなると、より多くのリチウムイオンを蓄えることができる素材が求められます。

そこで注目されたのがシリコンです。

ところがシリコンは、より多くのリチウムイオンの保持はできても、その構造上、リチウムイオンが増えると膨張してしまうという問題が生じます。

膨張すると、プラス極(アノード)を保護している膜に亀裂が入り、充電を繰り返すたびにシリコンが失われていき、結果的に容量が減ってしまうのです。

つまり、電池が長持ちしなくなるのです。

リチウムイオン電池の未来と可能性

そこで、エネルギー密度を高めるために研究者が行っているもう一つの主な方法は、マイナス極(カソード)の改良です。

しかし、これも同様に厄介な問題を抱えています。

良いマイナス極(カソード)に必要なのは、高いエネルギー密度と、高い導電性の2つ。

言い換えれば、たくさんのイオンも必要ですが、電流を発生させるためにはイオンの動きが速くなければならないのです。

しかし、残念ながら、高エネルギー密度と高導電性を持つマイナス極(カソード)の候補にあがる材料の多くは、安定性と安全性に欠ける傾向が高い。

また、これらの材料は、地球上にあまり存在しない金属を使用していることが多いため、持続可能性も低いと考えられています。

蓄電能力も上げながらコストを下げ、安全も確保していくために、プラス極(アノード)と同様、エネルギー密度に着目した研究も急ピッチで行われているのです。

電池の改良がうまくいかない理由

マイナス極(カソード)を改良する方法のひとつとして、ニッケルを多く含む金属酸化物を使用して、リチウムイオン電池の原料として使用されているコバルトを減らす方法があります。

コバルトは、価格が高騰して手に入れにくくなっている金属のひとつです

しかし、ニッケルイオンは構造上、電池のエネルギー密度が高くなると、他の物質よりも多くの電子を失う可能性が発生してしまうのです。

問題は、この超充電されたニッケルが、正確には安定していないこと。

それによって、電池の他の部分と反応して構造が乱れ、時間の経過とともに電池の容量が低下してしまうのです。

再生可能エネルギーの開発と電池の未来

現在、研究者たちはこれを防ぐ方法や、負極を改良する方法を研究しています。

将来的には希望が持たれていますが、進歩は遅々として進まず、今はまだ太陽電池や風力発電の電力を支える巨大なバッテリーアレイを建設するのは、現実的ではありません。

そうはいっても、徐々に近づいてはいます。

また、この研究を補完するために、他の科学者たちは、添加剤で蓄電の性能を高める研究や、リチウムよりも手に入り安いカリウムやナトリウム、マグネシウム、カルシウムを使う研究など、異なる種類の化学や物理にたよった別のタイプのバッテリーなどを研究し始めているのです。

2050年までのカーボンゼロ社会に向けて

結局のところ、電池の改良は難しいのです。

一方で、私たちの地球の未来は、さまざまな意味で電池の未来にかかっています。

たしかに、気候変動に対する解決策の多くは複雑であり、いろいろな要素が絡み合っています。しかし、

絶望的な問題ではないはずです。

再生可能エネルギー、電気自動車、蓄電池の普及に向けて今、世界は急速に変わり始めています。

2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするにはどうしたらいいのでしょうか。

電池だけでなく、個人から政府レベルまで、食料や建物の冷暖房、移動手段など、さまざまなことにより責任を持って実行していかなければなりません。

気候災害を避けるために私たちがどのように協力できるかについても一人ひとりが考えていく必要に迫られているようです。