電気自動車に隠された見えないコスト

2021年4月 9日

電気自動車の普及は年々進んでいます。

これから年を追うごとにさらに加速すると予想されています。

世界的では、2030年までに販売される新車の3分の1が電気自動車になるという予測もあるほどに。

一方で、これは、ある意味での遅れの問題を引き起こしつつあります。

電気自動車の動力源となるすべてのリチウムイオン電池の供給です。

使い終わったリチウム電池を土に埋めて、新しい電池を作るのか?

それとも、使用済みのバッテリーからより多くのエネルギーを絞り出す方法が見つかるのか?

今、世界の国々や企業では、未来の電池に向けて大きく動きはじめています。

今回は、電気自動車の普及が高まるにつれて出ている問題やとても興味深い解決策について、未来の電池への可能性を考えながら紹介します。

なぜ電気自動車の電池はリサイクルすべきなのか?

リチウムイオン電池をリサイクルする理由はたくさんあります。

まず第一に、リチウムイオン電池のリチウム、マンガン、コバルト、ニッケルなどの原材料の問題

これらの金属素材は、電気自動車の急増にともなって供給不足に陥ると、貴重性が増して価格が上昇する可能性があります。

また、使用済みバッテリー(電池)から、これらの資源を1kgを回収するごとに、地球から1kg採取する必要もなくなります。

以前、蓄電池の話「未来は蓄電システムにかかっているのに、未だに優れた電池がないのはなぜか?」で紹介したように、リチウム電池は主に電気(電荷)を蓄える2つの面「正極」、「負極」と、その間にある「しきり」からなります。

たとえば、この電池の正極に必要なリチウムを得るために、アルジェリア、ボリビア、チリなどの国では、大量の水を使用しています。

チリのアタカマ塩湖のように、極度の乾燥地帯で大量の水を必要とすることもあるのです。

このように、水資源のような見えない問題も関わっています。

さらに深刻な問題も隠れているのです。

資源採掘をめぐる紛争や子供の過酷労働

一般的にリチウムイオン電池に使用される他の金属は、資源を巡る国や企業間での紛争が生まれやすいといわれています。

特に、ある金属には恐ろしい暗黒面があります。

コバルトです。

推定では、世界のコバルトの70%以上がコンゴ民主共和国から産出されているといわれています。

そこでは誰でも資源を掘って売ることができるため、武力紛争につながったり、子供たちが過酷な環境で、決して安全とはいえない採掘を行ったりして命を危険にさらしています。

新たなコバルトの必要性を減らせば、これらの人々の苦しみも減らせるだけでなく、電池をリサイクルすることで、地球に蓄積する廃棄物を出さずにすみます

さらに、廃棄されたコバルトやニッケル、マンガンが、土壌や地下水を汚染する可能性も減らすことができます。

しかし、これらの利点にもかかわらず。2019年の時点でリチウムイオン電池のリサイクル率は5%にも満たないものです。

リチウムイオン電池のリサイクルには費用がかかる

他のリサイクル事業と同様の課題、すなわち、リチウムイオン電池のリサイクルにはお金がかかるという問題が障壁となっています。

たしかにリチウムの抽出やコバルトの採掘には、あらゆる面でコストがかかります。

しかし、それでもリサイクルよりは安いことが多いのです。

さらに、ドルやセントへの換算、また、今日の電池産業の性質上、リチウム電池のリサイクル問題はさらに複雑になります。

リチウムイオン電池のリサイクル問題は複雑

リチウムイオン電池の製造方法には、標準規格がありません。

正極の材料だけでも、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiMnCoO2)、二酸化リチウムコバルト、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)などがあります。

リサイクル業者は、施設に持ち込まれる電池を選ぶことはできません。

そこで多くの場合、さまざまな材料で作られたリチウム電池を、同じ方法でリサイクルするための解決策として、焼いて溶かす方法がとられます。

しかし、リチウムイオン電池を高熱で溶かすと、ニッケルやリチウムをはじめ高価な有機化合物の回収が難しいだけでなく、コストがかかるうえにコバルトまでも燃焼して採取できなくなってしまうこともあります。

また、リサイクル業者には、燃焼によって発生する有害なフッ素化合物を処理しなければならない問題も生じます。

確かな技術開発が進まなければ採算が取れなくなってしまうのです。

電気自動車の電池は、ガソリン車のように簡単に分解できない

もうひとつの一般的なリサイクル方法は、ケミカルリーチング(化学的溶解)です。

リチウム電池を粉砕して、溶剤で化学的に処理して正極金属を回収する方法です。

ここで問題なのは、車載用リチウムイオン電池は、リサイクルを考慮してつくられていないことです。

ガソリン車のような内燃機関に搭載されている鉛蓄電池は、簡単に分解でき、中に含まれる鉛のほとんどがリサイクルできます。

しかし、電気自動車のバッテリーは、数千個のセルを接着剤や溶接剤でひっつけてあり、その間には、回路やセンサーなども複雑に組み込まれています。

電気自動車メーカーは、性能と寿命を重視しているため、リサイクルにはあまり目が向けられていません。

リサイクルを容易にするためには、電池メーカーは、電池パックを分解しやすくするために再設計する必要があるかもしれません。

電気自動車の電池のリサイクルへの可能性

このような本質的な問題を抱えながらも、電池のリサイクルを進めている企業もあります。

これらの企業では、ロボットを使って、選別、分解、回収を自動化するなど新しい戦略を展開しています。

または、材料の直接回収と呼ばれる技術を試しています。正極の結晶構造を維持したまま再利用することで、コストを削減につなげる方法です。

しかし、これらの企業によるアプローチにより、電池のリサイクルコストに対する競争力が高まったとしても、リチウムイオンリサイクルプログラムへの投資は、リスクの高い賭けになるかもしれません。

電池のゴミは宝になるのか

現在、リチウムイオン電池が市場を支配していますが、水素燃料電池車のような他の技術がそれに取って代わる可能性もあります。

または、長い間理論的に考えられてきたリチウム空気電池のような新しい電池技術が、現在の電池を時代遅れにさせるかもしれません。

未来のことは誰にもわかりません。

しかし、一部の企業家や国は、使用済みの電池が廃棄されたゴミ山を宝に変えようとしています。

リチウムイオン電池は、電気自動車だけでなく、携帯電話やノートパソコンにも使われています。

さて、この驚異的な電池が実際にどのように機能するのか、そして未来の動力源となりうるのかもっと知りたくなってきませんか。

たしかに、近い将来山積みになるであろう寿命を終えたリチウムイオン電池が宝の山になるには、企業の技術開発や設備投資にかかる費用の問題などさまざまな障壁があります。

しかし、未来の蓄電システムに、低コストで効率のよい技術開発が見つかれば、大きな転換期となるでしょう。