さらば血液検査!「唾液、息、汗、涙、耳垢」が教えてくれる体のこと

2021年6月28日

血液検査を喜んで受ける人はほとんどいません。

それどころか、「注射針=痛み」を連想させるため、「病院に行きたくない」原因にもなります。

だからこそ、科学者たちは、注射の代わりになる検査方法を考えています。

嬉しいことに、唾液や呼気、汗、涙、耳垢などさまざまな分泌物の分析が、血液の代わりに、私たちの体について想像以上に多くのことを教えてくれることがわかってきたのです。

もし、これらの分泌物が検査に使われるようになると、私たちは注射針を怖がることなく、より安価で痛みを伴わず、簡単に体の状態を知ることができるかもしれません。

ここでは、なぜ唾液や呼気、汗、涙、耳垢などを調べると、血液の代わりに体の状態が分かるのか、また、どのようなことが分かるのかについて分かりやすく紹介します。

唾液からも血液と同じような身体の情報が分かる

まずは、唾液から見てみましょう。

体液の分析というと、真っ先に思い浮かぶのは血液かもしれません。

しかし、驚くかもしれませんが、唾液からも血液と同じような情報を、針で刺す痛みなしで得ることができます。

しかも、唾液の摂取は非常に簡単で、血液を媒介とする病原体を拡散させることなく、安価により多くの人を検査することができます。

実は、唾液は血液と似た成分を持っています。

なぜなら、唾液の一部は、唾液腺で血液の成分から作られているからです。

つまり、唾液は、血液から血球が取り除かれたもので、血しょうと同様に、抗体や酵素が含まれており、これらは医師の診断に非常に役立ちます。

抗体は、免疫システムがウイルスを検出したり、自己免疫疾患の際に作られます。

また、酵素は体のあらゆるプロセスに関わっています。

唾液の量や、唾液の酸度なども診断に役立ちます。

実のところ、唾液は約99.5%が水分なので、科学者たちは当初、希釈されすぎて役に立たないのではないかと懸念していました。

しかし、技術の進歩により、検査の感度が向上し、より低濃度の特定の分子を検出できるようになってきたのです。

これは非常に便利なことですが、まだ始まったばかりでもあります。

呼気(息)から分かる健康状態

唾液と同様に、息もまた、常に体から分泌されているものです。

息を吐くと二酸化炭素が出ますが、このとき、体内プロセスの副産物として生成される化合物(揮発性有機化合物)も一緒に出ています。

私たちの息に含まれる化合物は、健康状態に応じて変化します。

例えば、私たちの体は炎症に対抗するために一酸化窒素を作っています。

そのため、一酸化窒素の量を測定することで、特に呼吸器系に慢性的な炎症がある患者を調べることができます。

唾液と同様、呼気を採取するのは簡単ですが、科学者たちは、約40年もの歳月をかけてきたサンプルの収集とそのパターンの分析に困難を伴いました。

しかし今では、最近改良されたセンサーを使って、パーキンソン病を嗅ぎ分けられる可能性もみえてきました。

これは、市販化されるまでには、まだ長い道のりがありますが、大きな一歩と言えるでしょう。

たくさんの呼吸は、時にたくさんの汗を伴います。

汗は私たちの体液のひとつです。

汗から分かる運動中の体の状態

汗をかくのは、運動したときや外が暑かったときなどですが、実際には私たちは常に汗をかいています

そのため、いつの日か、運動をしていない時にもリアルタイムで汗を分析して、健康状態を把握できる日が訪れるかもしれません。

しかし、今のところ、まだほとんどの研究が運動に焦点を当てています。

汗の中には、大量の水のほかに、電解質や代謝産物、ブドウ糖などの小さな分子が含まれています。

これらの分子は、常に体内を循環しています。

例えば、電解質は細胞内で栄養分を移動させたり、体内のpHを維持したりしていますが、水溶性であるため、汗の中で一部が失われます。

そのため、汗に含まれる電解質の量やpHを調べることで、運動中の水分補給の必要性を知ることができます。

汗に含まれるグルコースは、血液中のグルコースの量と相関性があるため、科学者たちはそれを利用して運動中の汗にブドウ糖が含まれているかどうかを調べられます。

その他、負荷のかかる運動をしたときに発生しやすい乳酸は、細胞に十分な酸素が供給されているかどうか、また、身体的ストレスの指標として利用できます。

これらの生理的側面を総合的に判断することで、運動中の身体を総合的に把握することができます

涙からも血液と同じような身体の情報が分かる

汗と同じように、私たちは常に涙を出していますが、そのほとんどは鼻に流れていきます。

涙の成分はほとんどが水と塩ですが、それだけではなく、唾液と同様に、涙は血液とよく似ています

涙は、血液が涙腺でろ過され、血球が取り除かれたもので血しょうから形成されています。

例えば、涙に含まれるグルコース(ブドウ糖)の量は、血液中のグルコースの量と相関性があるため、糖尿を調べるときなどに利用できます。

そこで、科学者たちはセンサー付きの特殊なコンタクトレンズを設計しました。

このセンサーはゼラチンのように柔らかく、ふにゃふにゃしたポリマーの一種、ハイドロゲルに埋め込まれており、通常のコンタクトレンズに近いものとなっています。

レンズ内のセンサーがブドウ糖を感知すると、ゲルが縮んだり膨らんだりして、光の通り方が変わり、コンタクトレンズの色が変わるというものです。

ブドウ糖の濃度が高くなるにつれて、緑から青、そして黄色へと色が変わっていくのがわかります。

涙を直接採取して乳がんを診断する研究も行われています。

その技術は「TearExo」と呼ばれています。

しかし、医師が先月のあなたの健康状態を知りたいとしたらどうでしょうか?

実は、見過ごされがちな分泌物の中に、それを教えてくれるものがあります。それが耳垢です。

過去の健康状態を教えてくれる耳垢

耳垢は、あなたが食べたものから環境汚染物質への暴露まで、あなたについて多くのことを語ることができることが2017年に判明しました。

それは、他の分泌物と同様に、耳垢にも揮発性有機化合物が含まれているからです。

それらは耳垢を形成するオイルの中に閉じ込められており、呼気中の揮発性有機化合物と同じように分析することができます。

しかし、呼気との大きな違いは、耳垢は時間をかけて蓄積されるということ。

また、耳垢は外耳道で、他の汚染物質から守られているため、従来よりも早く代謝疾患の診断、たとえばメタボリックシンドロームの診断などにも使われます。

唾液や呼気、汗、涙、耳垢は多くのことを教えてくれる

このように、意外と知られていない分泌物が、何もしなくても自分の体について多くのことを教えてくれるのです。

このような研究が続けば、将来的には注射のような痛みを伴わない検査が当たり前になるかもしれません。