「トリウム燃料の原子炉」は次世代エネルギーの主軸となるか?

2021年8月15日

原子力発電所は、メルトダウン事故や有毒廃棄物の処理問題などの理由から、少し評判が悪い。

しかし、原子力発電にはデメリットがある一方で、温室効果ガスの発生が少ないというメリットもあります。

そのため、気候変動対策の一つとして期待されています。

そこで、近年、さまざまな原子力発電の問題を回避するために、新たな有効策が出てきました。

そこで注目されているのがトリウムです。

特にこれは特に中国にとって耳寄りな話かもしれません。

レアアースを加工するプロセスで多量に廃棄していたトリウムが有効な核燃料になるわけです。

資源量が豊富なだけでなく、トリウムの場合、これまでのウラン燃料と比べて、廃棄物の問題もエネルギー効率も安全面でも勝るといわれています。

今回は、トリウム炉が新たなエネルギー供給源となるかについて、これまでの原子力発電所(軽水炉)との違いなどをあわせて分かりやすく紹介します。

これは、地球温暖化に対するエネルギー源として絶対に成功するとは言い切れませんが、何かのヒントになるかもしれません。

今までの原子力発電の仕組み

現在の原子力発電は、燃料にウランを使用しています。

しかし、トリウム資源は、天然に存在し、その量はウランの3倍から4倍ともいわれています。

原子力発電所では、原子の真ん中にある大きな塊「原子核」を分解することで、巨大なエネルギーを生み出します。

現在、原子力エネルギーのほとんどは、U-235という特殊なウランの原子核を分裂することで作られています。

U-235の原子核が分裂すると、エネルギーが放出され、中性子という粒子が発生します。

熱中性子は他のU-235原子核にぶつかり、その原子核を分裂させ、さらに中性子を放出します。

これが自立した連鎖反応です。

そして、このように自活できる核物質を核分裂性物質(かくぶんれつせいぶっしつ)と呼びます。そして、天然に存在する核分裂性核種は235Uのみ。

トリウム資源はウランに比べて資源量が豊富なうえ、消費量も少ない

しかし、トリウムは少し違います。トリウムの主な種類であるT-232は、U-235と違って核分裂しません

T-232は、そのままでは核分裂してエネルギーを生み出すことはありません。しかし。これに中性子が当たると、T-233になって核分裂します。

このT-233のすごいところは、自らが分裂して、中性子と燃料をつくっていくことです。一度始まると、その連鎖反応がずっと続くのです。

つまり、自分で小さな核燃料の赤ちゃんを作るという意味では、繁殖力があると言えます。

原子炉で投入した燃料をより多く使えるので、無駄な燃料消費を大幅に減らし効率のよいエネルギー供給ができます。

使用済み廃棄物の処理問題が軽減

また、トリウムを使った反応では、ウランのように千年経っても有害だとされる厄介な廃棄物はあまり発生しません。100年から200年くらいで放射能は安全レベルまで下がると考えられています。

さらに、トリウムによる反応の連鎖は、ウランによる反応の連鎖よりもステップ数が多く、最終的に発生する廃棄物の量が少ないのです。

トリウムは天然に存在する物質

また、自然界のほとんどのウランは、U-238というほとんど使えない形をしています。

使えるU-235を取り出す、つまりウランを濃縮するのは大変です。

しかし、トリウムにはこの問題がありません。

自然界に存在するトリウムは、すべてT-232という形ですでに存在しているからです。掘り出して、原子炉の中に入れればいいのです。

安全性に優れている

正しい形式の原子炉を作れば、ウランよりもはるかに少ない労力で、トリウムを採掘して原子炉に入れることができます

そうです。原子炉を見直すのはナイスアイデアです。

というのも、現在の原子炉の設計には、主に冷却方法の問題があるからです。

実際、主要な原子力発電所の事故はすべて、冷却装置の故障が原因となっています。

事故は非常に稀であり、安全性は時代とともに大きく向上しています。

しかし、より安全な代替手段を探すことは常に良いことだと思います。

最近の原子炉では、ウラン棒は水の中に沈み、炉内は高圧になっています。

これは1950年代に初めて発電に使用されたもので、それ以来、ずっと使われています。

水蒸気爆発や放射能漏れを防ぐ

この水の目的の一つは、原子炉を冷却することです。

それがうまくいかないと、福島やチェルノブイリで起きたようなメルトダウンが起きてしまいます。

トリウムは、このような問題を抱えていない別の種類の原子炉に適しています。

例えば、MSR(Molten Salt Reactor)と呼ばれる種類の原子炉です。

この原子炉は、ウラン炉よりもはるかに小型で、水の中にウラン棒を浸すのではなく、金属などを混ぜた溶融塩の中にトリウムを溶かして使うもの。高熱の溶融塩を熱交換器に引いて熱を取り出します。

極端な話ですが、これがかえって安全なのです。

溶解した物質は、熱を加えても液体のままなので、より低い圧力で液体を保つことができます

つまり、チェルノブイリのような水蒸気爆発を防げるのです。

また、溶融塩がもれても、冷却されて固体になり、放射性物質が外に漏れる危険性がありません。

また、MSR原子炉の設計を工夫することで、温度が上がりすぎると反応が停止したり、燃料が自動的に排出されたりするような受動的な冷却機構を作ることができます。

トリウムベースの原子炉がすぐに採用されない理由

しかし、このような利点があるにもかかわらず、すぐにはウランベースの原子炉からの切り替えはできないでしょう。

トリウムを使った原子炉の設計は、ウランを使ったものとほぼ同じくらい古くから行われているにもかかわらず、そのアイデアは完全には発展していません。

まだまだ研究開発が必要です。

また、批判的な意見もあります

科学者の中には、多くの工学的問題を考慮した上で、トリウム原子炉が実際にどれほどの利益をもたらすかを疑問視する人もいます。

思うように効率も上がらないかもしれません。

また、普通のウランを使った改良型の原子炉デザインを考えることも可能です。

たとえば、2021年にワイオミング州で発表されたプロジェクトのように、溶融塩を使った改良型の原子炉を開発することも可能です。

しかし、このような改良型原子炉の設計にも批判がないわけではありません。

ウラン炉が発展した理由のひとつが核兵器開発

なぜウラン原子炉がこれほどまでに発達しているのかというと、それは、残念ながら核兵器があるからです。

核兵器を作るにはウランの方が便利だったからです。

初期の原子力研究のほとんどは、そのために行われました。

つまり、ウランを使った原子炉は、研究面で大きなアドバンテージを持っていたのです。

そのおかげで、商業的にはウランベースの原子炉を新設する方が常に有利だったのです。

ベータマックスとVHSの戦いのようなものですね。

気候変動対 vs 政治

エネルギー供給の話はすべてそうですが、誰かがトリウムベースの原子炉を作るかどうかは、科学や工学だけでなく、政治的にも難しい判断です。

工学的な問題を解決できれば、気候変動対策にもなるかもしれません。

そのリスクやデメリットに見合うかどうかを決めるのは、私たち次第なのです。