出産後の胎盤を食べてもいいのか?悪いのか?

2017年2月22日

驚く人が多いかもしれませんが、世の中には、出産後に胎盤(プラセンタ)を食べる人たちが実在します。

実際に、アメリカでも一部のセレブの間で、産婦の体の回復やホルモンバランスの調整などの目的で食べられています。人間以外の陸生ほ乳類のほとんどが、出産後に自分の胎盤を食べているのも事実です。

それでは、胎盤を食べると実際にはどのような効果があるのでしょうか?

ここでは、胎盤食がヒトにもたらす効果について行われた研究をもとに、科学的な観点で分かりやすく紹介します。

ヒトには胎盤食の歴史がない

胎盤は、パンケーキのような形をした胎児の生命維持器官です。

チンパンジーやサルをはじめ、陸上に生育する野生のほ乳類のほとんどは、産後に母親がこの胎盤を食べるといわれています。

とはいえ、人間については、179の人類の文化について調べた人類学の研究によると、歴史的、または、先史時代においても、胎盤食を実行した女性や効果に関する科学的な調査結果はひとつも見つかりませんでした。

このことから、ヒトは、「胎盤食」を習慣としてもっていないほ乳類であることがいえます。

胎盤とは

胎盤とは、羊水嚢やへその緒とともに、胎児の生命維持システムの一部です。

胎盤では、妊娠を維持するためのホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、hCGなど)や生後3ヶ月間の間、赤ちゃんを感染から守る免疫抗体などが生成されています。

また、子宮に付着し、母親と胎児の間で、血液を介して酸素や栄養素の受け取りを行うとともに、胎児をウィルスや細菌感染から保護する重要なフィルターでもあります。

胎児の命を守るためのフィルターとして働いているということは、高いレベルでのバクテリアやセレン、カドミウム、水銀、胎児に影響を与えるようなホルモン物質、または鉛を含んでいる可能性は否定できません。

しかし、様々な効能を主張して胎盤を食べようとしている人がいるのは事実です。

胎盤の効能として信じられていること

  • 産後のホルモンバランスを整え、うつ病の発症を抑制する。
  • 出産で失われた体力を回復させ、エネルギーを高めるほど栄養が豊富。
  • 産後の出血を止める。
  • 産後の子宮の回復を早め、母乳の分泌を促すホルモンが含まれてる。

しかし、残念ながら、これらの効能を裏付けるような研究結果はいまだに存在していません。

胎盤に鎮痛作用があるという研究

1986年にニューヨーク州立大学バッファロー校で行われたラットの研究によると、羊水や胎盤の中に含まれる分子に、「母性行動」を促進するオピオイドを増やすものが発見されました。

また、同大学で2005年に行われたラット研究によると、胎盤食は、鎮痛作用または疼痛(とうつう)緩和作用を有する可能性があることも分かりました。

しかし、上記の研究においては、ヒトでも同様の効果が得られるのかは判明していません。

ある研究者は、胎盤を食べた産婦を調査した結果、産後にエネルギーの高揚がみられたことから、胎盤に含まれるホルモンと産後によくみられるうつの軽減には、なんらかの関係があるのかもしれないと期待を示していますが、実際には、まだ医学的根拠はありません。

生態学と食物栄養学の研究においても、胎盤食の健康効果については分かっていません。

まとめ

現代は、ニュースやメディアで胎盤食に関して、まるで奇跡の食べ物であるかのような情報があふれかえっています。

しかし、世界中で注目を浴びるなか、実際にワシントンの病院では、1年に行われた3500件の分娩の後、胎盤を持ち帰ったのはわずか2人の女性だけだといわれています。

胎盤食がよいのか悪いのかを裏付けるような医学的な根拠や研究結果はいまだにありませんが、もし興味がある場合は、胎盤が生ものであることも忘れてはいけません。

胎盤は、人間の体の器官の一部であり、生肉は細菌に感染する可能性もあります。

野生の動物は、産後の栄養をとるために胎盤を食べる必要があるのかもしれませんが、食べ物も医療機関も十分にある人間に胎盤食が必要であるかは考えてみる必要はありそうです。

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