ロッキングベッドの「揺れ」は睡眠を改善するのか?揺れは脳内活動を変える

2019年5月 9日

アメリカでは、5000万人から7000万人もの人に何らかの睡眠障害があるといわれています。

あなたもそのうちの1人なら、おそらく心身の十分な休息を切望していることでしょう。

もしそうであれば、科学が眠れない夜に不安を感じているあなたのために用意したいくつかの睡眠オプションを役立ててみてください。

そのひとつに、わらべ歌のように古くから伝わるものがあります。ヒトは、人間工学に基づいたベビースリング(抱っこ紐の一種)やインスタ映えする電動バウンサーが登場するずっと前から、赤ん坊を揺すって寝かしつけてきました。

実は、研究がすすむにつれて、この揺れによる睡眠のメリットを大人も得られる可能性が示されたのです。

ここでは、研究をもとに、ロッキングベッドで揺られながら寝ることが寝つきや睡眠にもたらす影響について分かりやすく紹介します。

揺れるベッドで短時間の昼寝をすると脳活動が変化

2011年スイスで、揺れによる脳活動の変化が、不眠症を助ける新たな方法に光をさす可能性が示されました。

ジュネーブ大学の神経科学者ソフィー・シュワルツさんは、12人の成人被験者に45分間の昼寝を2つの異なるベッドでしてもらい、頭皮に付けた電極で脳活動を記録しました。

一方のベッドは、ハト時計の振り子よりかなり遅い速度で、母親が子をゆらして寝かすよりも優しい穏やかな揺れ(4秒ごとに左右に動く)です。そして、他方は通常の静止したベッド。

その結果、科学者たちは、「揺れ」が脳活動にもたらした予想外の大きな違いに驚き、結果は学術雑誌「Journal Current Biology」に掲載されました。

揺れると、「睡眠紡錘波(すいみんぼうすいは)」として知られるノンレム睡眠(眠っている間に眼球が動かない深い眠り)時に見られる脳波パターンが高まり、ノンレム睡眠の第2段階の長さが増したのです。この段階は、最も心身を回復させる良質な深い眠りの直前に訪れるといわれています。

睡眠紡錘派は、騒々しい環境での静かな睡眠に関連しており、脳が眠る人を落ち着かせようとしている兆候だと考えられています。

夜の睡眠でも「揺れ」は睡眠を改善するのか

2019年に行われた研究では、18人の健康な若者が4秒ごとに左右に10センチメートルずつやさしく揺れるベッドで一晩過ごし、静止した状態のベッドでも一晩を過ごしました。

研究者らが、それぞれの睡眠中にみられる被験者の脳活動を測定したところ、揺れるベッドで寝た若者は、平均で10分以内にノンレム睡眠の第2段階に達したことがわかりました。

同様の段階に、静止したベッドで達するには16分以上を要することと比較すると、結果的に、揺れた方が寝つきが早かったといえるでしょう。

この研究では、揺れながら寝ると長く眠れるかどうかまでは分かりませんでしたが、ノンレム睡眠の第3段階である熟睡状態がより長く持続し、目を覚ます頻度が少なかったことが示されました。

2011年の研究では、短時間の昼寝中の揺れが、脳で持続的な紡錘波活動をもたらすことが示されましたが、若い成人を対象としたこの新しい研究において、夜の長時間睡眠に与える揺れも同様の効果が示されることが初めて分かったのです。

睡眠中の揺れと記憶力の関係

さらに、揺れによって得られる睡眠のメリットは、寝つきが早く、より深い眠りが持続するだけではありませんでした。

なんと、被験者が前の晩に学習した単語の組み合わせを、よりいっそう正確に思い出せたのです。これは、睡眠時の「揺れ」によって記憶力が向上する可能性を示しています。

そして、新しい情報の記憶や脳を再構築する能力は、睡眠紡錘波の増加と結びついていることも分かってきました。

神経科学教授のMichel Muehlethaler氏は、「その能力は、脳卒中からの回復に重要であり、睡眠中の揺れがもたらす脳卒中やその他の脳損傷への有効性も研究する必要がある。揺れは、あなたの脳内を変えることです」といいます。

なぜ揺れが睡眠を改善するのか

2番目の研究では、人間ではなく、夜に静かに左右に動くケージに入れられたマウスに焦点が置かれました。

すると、マウスは、人間のようにより深い眠りに落ちることはありませんでしたが、早く眠りにつき、より長く眠り続けました。

重要なのは、このマウスの研究で、なぜ揺れが睡眠を改善するのかを理解する上での手掛かりが提供されたことでした。

どうやらそれらはすべて、私たちにバランス感覚と空間定位(空間的な位置を知覚する機能)を与える「前庭系」と呼ばれる器官と関係があるようです。

特定の感覚系の重要な役割

研究者らは、脊椎動物の内耳にあって、動きや重力を認識する特定の部位を欠いたマウスを使って実験を繰り返しました。

するとマウスは、揺れの恩恵を受けませんでした。つまり、内耳にある特定の感覚系が、揺れによってもたらされるあらゆる効果に不可欠であることが示されたのです。

最後に

そうはいっても、なかなか寝付けず、熟睡できないからといって、ロッキングベッドを購入する決意まではつかないかもしれません。しかし、そういった人でも、ハンモックでの昼寝なら手軽に取り入れられそうです。

実のところ、2019年の研究の被験者は18人と小規模で、かつ、ロッキングベッドで一泊寝ただけなので、これらの結果がどれほど広い範囲で適用されるのかはまだ明確ではありません。

しかし、これらの研究は新たな研究課題と、不眠症や気分障害、恐らくは記憶障害の治療にさえも使える可能性がある驚くべき選択肢を切り開いたのです。

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