米国農務省(USDA)の科学者であり、「The Science of Cheese」の著者でもあるマイケル・チュニック(Michael Tunick)氏は、世界のチーズを研究していますが、決して食べないどころか、唯一触れもしないチーズがあります。
それは、イタリアのサルデーニャ産の「カース・マルツゥ(Casu marzu)」と呼ばれるチーズ。
なんとそのチーズでは、表面や内部で、生きたうじ虫がピクピク動いているというのです。
ここでは、ヨーロッパ地方に古くから伝わる伝統的なチーズ「カース・マルツゥ」について紹介します。
カース・マルツゥの食べ方
カース・マルツゥを食べる前に、人々はまず、虫を掻き落とすことから始めます。
なかには、紙袋にチーズを入れて、虫を追い出す人も。
その場合は、袋で密閉されて酸素を奪われたうじ虫たちが、チーズから飛び出し、紙袋にパチパチ当たる音が聞こえなくなるのを待ち、音がしなくなったら(虫が死んだ合図で)、紙袋を開けて食べ始めるようです。
世界にはたくさんのチーズがありますが、伝統的な製法で作られたナチュラルチーズは、カース・マルツゥのように熟成するうちに、中でチーズバエの幼虫やアシブトコナダニなどの虫が成長して湧くことがよくあります。
これらのうじ虫やダニがチーズの発酵を促し、やわらかい質感や風味をもたらすことから意図的に繁殖させる製法もあり、特にヨーロッパ地方では、チーズを虫ごと食べる人もいます。
しかし、近年は、虫が繁殖したチーズをみると、付着したチーズごと取り除こうとする人がほとんどで、あまり人気がないようです。
また、食の安全(腐敗問題)や健康への影響を考えて、うじ虫やダニの湧いたチーズを販売するのは合法ではないとする見方の方が一般的になり、市場では見かけにくくなりました。