クマはなぜ鮭のほとんどを食べずに捨ててしまうのか?

2021年7月13日

グリズリー(ハイイログマ)は鮭(サケ)を捕まえると、まず皮を剥いで食べ、次に脳を食べます。

そして、まだ数キログラムも残された魚の身を捨てて、次の魚を捕まえるために川に戻っていくのです。

彼らは平均して、1年間に獲った魚の約半分を捨てています。

一体なぜクマは、このような贅沢な食べ方をするのでしょうか?

クマにとって魚を捕るのは本当に大変なはずで、その時間と労力を無駄にするのは意味がないように思いませんか。

今回は、グリズリーがせっかく捕まえた鮭の半分以上を捨ててしまう理由について生態系に与える影響も合わせて分かりやすく紹介します。

理由を知ると、クマは思ったよりもずっと論理的に行動していることが分かっておもしろいですよ。

獲った鮭を食べるまでの処理が大変

実は、クマは論理的に行動しています。

なぜなら、食べ物を取り込むプロセスは、単に獲物を手足で取るだけではなく、あごを使い、そして最終的にはお腹に入れるまでです。

動物や食べ物によっては、それが簡単な場合もありますが、食べるまでの処理が大変な場合もあります。

鳥のように、くちばしであっという間に食べる生き物もいれば、クモのように、巣をはって待ち、罠にかかった獲物に糸を吐きかけてぐるぐる巻きにした上で、上あごの牙で毒を注入して動けなくした後、さらに消化液を送り込んで獲物を溶かしながら食べるという長い長いプロセスを必要とする生き物もいます。

クマが鮭のシーズンに効率的に脂肪を蓄える仕組み

サケのシーズンのクマにとって、魚を手に入れるのは簡単ですが、その魚の解体にこそ時間とエネルギーが必要なのです。

特に冬眠前のクマは、栄養を蓄える重要な時期なので、カロリーや脂肪分の豊富なものを効率的に食べていかなければなりません。

サケには、そんなクマにとって価値のある部分とそうでない部分があります。

たとえば、皮、脳、卵といった脂肪分の多い部分は、最もカロリーが高く、噛みつくだけで食べやすいのに対して、魚の残りの身は赤身が多く、食べ応えはあまりありません。

それどころか、危険なほど鋭利な骨に挟まれていて、解体するのは非常に厄介です。

クマにとって「時はなり」、いや「サケなり」。

食べ物を処理する時間は、より多くの食べ物を捕まえることや、子作り、敵を見張ることに使われない時間です。

せっかく産卵のためにたくさんの鮭が遡上(そじょう)してきているのだから、限られた期間に少しでも脂肪を蓄える方がずっと効率的なのです。

食べ物が豊富なときの動物の意外な行動

これは、ブチハイエナ(マダラハイエナ)、ハイイロオオカミ、シャチ、小虫、クモ、キツネなどの生物にも同じことが言えます。

獲物を処理するのに時間がかかるため、獲物が豊富なときは、食べきれないほどの獲物を捕獲して、一番おいしいところだけを食べ、あとは手付かずのままに捨ててしまうこともあります。

一方で、ペリカンのように、魚を食べるよりも探すことに多くの時間を費やす動物は、捕れたものを何でも食べてしまいます。

一般的には、獲物を食べるのにかかる時間が長ければ長い種ほど、すでに獲ったものを捨てて、次の獲物を食べようとします。

食べるのにかかる時間が長い生き物の進化

もちろん、動物は複雑な計算をして何が価値あるものかを判断しているわけではありません。

これらの判断は、何百万年もの自然淘汰の中で磨かれた本能によって行われるのが一般的です。

それを補うのが、過去の経験や仲間から得た情報です。

捨てられた食べ物はムダにならない

そして、クマが「足で押さえたサケは、目の前の川にいる2匹のサケには値しない」と判断した場合でも、その魚は川に戻れるわけでもなく、捨てられてしまいます。

しかし、捨てられた魚は実際には無駄にはなりません。

捨てられた肉は他の動物に拾われ、残った肉はさらに小さな生き物によって分解され、より多くのクマが生息できる栄養豊富な環境を作り出します。

クマの食べ方は、一見すると贅沢に見えますが、自然に貢献しているのです。

一方で、残念ながら私たち人間は、たとえ悪気がなくても、誰のためにもならない方法で無駄遣いをすることがよくあります。

再生可能エネルギーのために、動物が住む森を伐採してバイオマス発電の燃料にしたり、広大な森林地帯を伐採して太陽光パネルや風車を設置し、そのための道路を整備したりするのはその代表的なものでしょう。

今では、政府によって、水源確保や災害に備えた保安林制度までも形だけのものされつつあります。このままでは、森林伐採の勢いは加速していく一方です。

地球のために考えられたはずの再生可能エネルギーが、環境や生物多様性に与えている多大な影響について今一度見つめ直すときがきています。