倒れたアメリカスギの木に何かがびっしりと集まっています。
てんとう虫だ。何千、何万のサカハチテントウです。
この大集合は、年に一度、つまり、1年しか生きられないてんとう虫にとって、生涯で一度の重大なイベントの始まり。
北アメリカのどこに住んでいても、寒さが厳しくなるにつれてそれは始まります。集団越冬のためです。サカハチテントウは、ときには何千、何万もの大集団で越冬することで知られています。
以下に、サカハチテントウの集団越冬についてみてみましょう。
てんとう虫の集団越冬
てんとう虫は世界中に6,000種以上いると考えられていますが、このサカハチテントウはとても奇妙な行動で知られています。
春が訪れ、てんとう虫たちは庭や草むらでムシャムシャとアブラムシを食べていました。
しかし、気候が変わると、このアブラムシのごちそうは消えてしまいます。
それはてんとう虫にとっての出発の合図を意味します。
てんとう虫は庭や街から空高くまっすぐ飛び、上空の風にのって山頂や高所へと向かいます。
不思議なことに、彼らは、これまで一度もここに訪れたことがないにもかかわらず、毎年同じような場所に集まるのです。
科学者たちは、前の世代がフェロモン(足から分泌される化学物質)の痕跡を残し、それが翌年のてんとう虫たちを導いていると考えています。
普段は単独行動をしている彼らですが、この時期になると、生まれて初めててんとう虫のパーティーに出会い、いたるところでお互いにくっついています。
集団で休眠期を過ごすことで、捕食者から身を守り、生き残る確率を高めていると考えられています。
身を守るための集団越冬
UCリバーサイドで博士号を取得するためにテントウムシの行動を研究したクリストファー・ウィーラー氏は、てんとう虫の錆びたような赤色は捕食者を遠ざけるために役立っており、「私たちはひどい味がする」ことを知らせる警告色だといいます。
刺激されると、脚の関節から悪臭を放ち、それが強烈に苦いために吐き出してしまう鳥もいるほどです。
鳥は集団の一匹を食べるかもしれませんが、その苦い一口の後、二匹目を食べる気には到底ならないでしょう。このようにして、集団のメリットを活かして天敵から身を守っています。
春は恋の季節
冬が近づくと、この何百、何千万にもおよぶ大集団は、寒風を避けるため、木の幹や隙間、落ち葉の下などで、数百匹の集団に身を寄せ、休眠に入ります。
標高の高い山頂は冬を越すのに過酷な場所かもしれませんが、テントウムシは、体内にグリコールという 「不凍液 」のようなものを蓄えているので、寒さに耐えることができると考えられています。
集団で寄り添って寒い冬を乗り越え、春がやって来ると、彼らは姿を現し、やり残したことを片付けます。
これが最後の交尾のチャンスです。彼らは1年しか生きられません。
交尾が終わるとそれぞれが家に帰り、ここには二度と戻ってくることはありません。
来年、また別の世代のテントウムシが彼らの足跡をたどるでしょう。
サカハチテントウの恋の季節については、以下の動画で見ることができます。