さて、重力は、どんなに小さな虫でも同じように引き寄せるはずですが、ハエなどの昆虫は、私たちが決して登れないような壁をいとも簡単に登ったり、ときには天井からぶら下がったりできます。
それはなぜなのでしょうか?下記に、忍者のように壁を登る生物がもつ特別な能力について紹介します。
そもそも、上り坂を走るのは難しいのに、下り坂を走るのは簡単なのはなぜでしょうか?
上り坂よりも下り坂の方が走りやすいのは、「重力」によるものです。
ご存知の通り、重力とは、地球上のすべてのものが地面に向かって引っ張られる力。
壁を登ろうにも、すぐに下に落ちてしまうのも私たちが重力に引っ張られているからです。
では、昆虫はこれらの重力をどう対処しているのでしょうか?
重力は体を下(地面に向かって)に引っ張る
力とは、私たちの周りで毎日起こっている押したり引いたりするものです。
ブロックを床の上で押したり、ボールを転がしたりするとき、それは「力」を加えていることになりますが、重力もそれと同じような力で、目には見えなくても常に私たちを引っ張っているのです。
たとえば、ジャンプをすると、重力に引っ張られて地面に戻ってしまうので、空中に長くはいられませんね。
わずかですが宙に浮いていられたのは、別の力「足で地面を蹴る力」のおかげで、それが重力に勝ったためです。
ゆえに、もっと高く、もっと長い時間空中に滞在したいなら、より強く地面を押す力が必要になります。
上り坂を走るのが難しい理由
同じようなことが、坂道を駆け上がるときにも起こります。
足は体を押し上げようとしますが、重力は体を下に引っ張ります。
重力に負けないように頑張らなければならないのですが、頑張れば頑張るほど疲れてしまいます。
一方で、坂道を下るときは、重力が私たちを引っ張るのと同じ向きになるので、重力が逆に助けてくれます。
重力に逆らっているわけではないので、簡単に駆け降りることができます。
重力に負けずに壁を登るのが難しいのはそのためです。
しかし、虫やイモリ、トカゲなどは、いとも簡単そうに壁を登っていくように見えます。
それはなぜなのでしょうか?
虫は一見滑らかな表面に見える壁の凹凸を足場にしている
虫の中には、重力に逆らって壁や天井を登るための特別な身体のパーツを持っているものがいます。
壁や天井は、見た目にはつるつるしていても、実際にはそうではありません。
壁をよく見てみると、ひび割れや小さな穴がたくさんあることがわかります。
私たちには取るに足りない凹凸としか見えないものが、小さなハエにとっては快適な足場になるのです。
ハエのような虫は、その穴を微細な毛で感じ取り、足の先にある毛や爪のような構造でつかむようにして表面に張り付くことができます。
油分から作られた粘着性の物質と毛で表面にひっついて登る虫
その他にも、体内で油性の液体を作って足先を覆い、壁や天井にくっつく虫もいます。
彼らは、糖分と油分から作られた天然の永久接着剤で、ツルツルの表面や、垂直な壁を登ったり、逆さまになって天井を歩いたりできるのです。
また、それぞれの足には、壁や天井から足を離すのに使う爪があり、足が表面に張り付いていても歩けるようになっています。足を持ち上げるために、爪で足を押し、少しねじって表面から外します。
それらは、昆虫の体を運ぶのに十分な強度の粘着性をもちますが、1カ所に長時間留まるのは難しいようです。
天井からぶら下がることもできるヤモリのグリップ力
ヤモリの足には、やわらかい突起があります。
この突起は、髪の毛よりも細い繊毛で、さらにその繊毛にそれよりもまだ細い極細毛で覆われています。
ヤモリは、壁や天井にひっつくとき、足を広げて接する面への角度を調節して、この細い毛でひっつくと考えられています。
少し科学的にいうと、このとき、毛と接着面では、静電気のような(電気的に偏った)分子が静電気の力によって磁石のN極とS極のようにお互いに引き合い(ファンデルワールス力)、これが重力にまさる粘着力を生んでいるのです。