リップピアス(下唇、上唇、鼻の下のくぼみ、頬、舌などにピアスを開けること)のリスクやデメリットについて、口腔内にピアスを開けることで引き起こされやすいトラブルを中心に、ニューヨークの歯科医師ポール・フレッチャー博士(Paul Fletcher,DDS)によるアドバイスを紹介します。
アメリカでは、親から「舌にピアスをすると、舌がはがれ落ちるよ」と脅されることがあります。
さすがにそれはないにしても、実際にピアスの穴を口腔(こうくう)内に開けた場合、歯や歯茎、舌などに何らかの問題が生じることは十分に考えられます。
一般的に、口の中には、5000憶近くの細菌が存在し、特に舌や頬の内側の粘膜の表面には、さまざまな菌が潜んでいることが多いといわれています。
口腔内に穴を開けることで、これらの菌に口の内外から晒されやすくなり、結果的に、B型肝炎やC型肝炎、単純ヘルペスウイルス、心内膜炎を引き起こす菌に接触するリスクも高まってしまうのです。
ピアスをすることで口腔内に起こりやすいトラブル
もちろん個人差はありますが、口にピアスを開けるときには痛みがあったり、特に開けたばかりは唇や頬に腫れや炎症を伴ったりする可能性があります。
また、食事がとりづらくなったり、朝の顔がむくんだ状態では口の内側にピアスのディスク(フラットになった受け側)が食い込みやすいかったりすることもあります。
これらは時間の経過とともに問題なくなるものの一例ですが、きちんと消毒をしなかったり、汚い手で触ったりなど衛生状態に悪い場合や、免疫力が落ちている状態では問題が悪化するリスクがあるので注意が必要です。
その他、口にピアスをすることによるリスクとして考えられる例を以下に紹介します。
病気のリスク
ピアスを開けた穴が化膿したり、ピアスによって口腔内に傷がついたりすると、そこから血流に入った微生物やバクテリアが体の各部位にまで広がり、心内膜炎や心疾患、脳血管、肺炎などの病気を引き起こすこともあります。
口にピアスを開けるときの注意点
口内にピアスを開けた場合、傷口が癒えるまでには1ヶ月から2ヶ月はかかるといわれています。
特にその間は、タバコや食事の影響をうけやすいので、ホールが安定するまではきちんと消毒し、口腔内をできる限り衛生的に保ってください。
また、ピアッサーやニードルを使って、我流で口内(舌や唇など)に穴を開けると、細菌感染を引き起こしたり、化膿したりするリスクが高くなるので、開ける場合は、専門家にお願いした方がよいでしょう。
ピアッシングスタジオは安価で開けられるというメリットがありますが、リスクや上に挙げたデメリットなどを考えると、初めてピアスを開ける場合は特に、麻酔や薬を処方できる資格を持った医師による施術の方が安心・安全の面でおすすめです。
一般的に、皮膚科や耳鼻咽喉科などでピアスに関する施術を受けられますが、病院によっては対応していないところもあるため、あらかじめ問い合わせてから行きましょう。
そして、ピアスの穴を開けた後、1週間以上経過しても痛みや腫れがひかない場合、または、なんらかの異常を感じるようなら、すぐに受診することも大切です。
口ピアスのデメリット
体の部位に穴を開け、器具をつけるのがピアスです。
なかでも、細菌が多い口腔内へ穴を開けるのが「口ピアス」。
耳に開けるピアスとは異なり、感染症をはじめ、さまざまなリスクを伴うことは否定できません。
そして、ピアスの穴は塞いでも跡が残り、一度開けてしまうと元通りには戻せません。
そのため、ファッション感覚でピアスをつけたい場合には、上記のようなリスクはもちろん、就職や入試の面接、仕事や学校の都合などでデメリットを感じてしまう場面もあることも十分に考慮する必要があります。
また、法要の場や就職の面接などにはピアスは適さず、歯医者でもはずさなければならないなど、ピアスの穴を開けた後に、生活に不便さを感じて後悔することもよくあるようです。
現在は、穴を開けずに口ピアスのファッションを楽しめるダミー口ピアスなどもあるので、それらも選択肢に入れて、口腔内に穴を開ける前に自分の体とよく向き合って、後悔をしない選択肢を考えてみてくださいね。