あなたの近所には鳥がたくさんいますか?
Scientific Reportsに掲載された新たな研究では、鳥のさえずりを聴くと気分がよくなるだけでなく、不安やパラノイア(被害妄想など)を緩和して、精神的な健康に役立つかもしれないそうです。
過去の研究では、自然の中を1時間歩くと、ストレスに関連する脳の活動(扁桃体)が低下することを示したものや鳥の声を聴くことでストレスがやわらぐことはすでに実証されていましたが、この新しい研究ではさらに踏み込んでいます。
症状としてあらわれていないような不安、うつ、パラノイアなどに与える影響について調べたもので、それは、診断可能な精神疾患でなくとも、誰もが抱く一時的なネガティブ感情への効果でした。
結論からいうと、ストレスがたまって、森に逃げ込み、鹿と仲良くなって、野イチゴを食べて暮らしたいと思っている人は、まずは鳥の鳴き声を聴いてみてください。
以下に、新しい研究で分かった鳥のさえずりの不安感を緩和する効果について紹介します。
鳥のさえずりが心の健康に与える影響を調べた研究
日本には「森林浴」という言葉もあるくらい森をぶらぶらすることは、こわばった神経を落ち着かせ、精神的な健康を保つのに役立つようです。
ただ木々を眺めるだけでなく、森には、香りや音、匂いなど多くの魅力があります。
一方で、都市環境がメンタルヘルスに及ぼすさまざまな悪影響も報告されています。
そこでマックス・プランク人間発達研究所とハンブルグ・エッペンドルフ大学医療センターの研究チームは、都市(交通騒音)と自然(鳥のさえずり)が、気分やパラノイアの状態、認知パフォーマンスに与える影響を調査しました。
295人の参加者を対象に、鳥のさえずりか、都市の交通騒音のどちらかを6分間聴いてもらい、その前後に、抑うつ、不安、パラノイアのレベルを測定するためのアンケートと記憶力テストを行いました。
鳥の鳴き声を聴くことは気分を改善する
鳥のさえずりや交通騒音は認知能力には影響を及ぼさないことがわかりました。
しかし、鳥のさえずりを聴いた人は、1種類でもそれ以上でも鳴き声の多様性には関係なく、心が落ち着き、不安やパラノイアに関連する感情を和らげることができました。
一方で、交通騒音、特に複数の交通騒音が含まれる音声を聴いた人は、抑うつ状態に関連する感情を悪化させました。
研究者は、鳥のさえずりがこのように不安感の状態を軽減する効果をもたらす理由をいくつか挙げています。
鳥のさえずりが不安感の緩和に効果的な理由
私たちは、鳥を平和で汚染されていない緑豊かな環境と自然に結びつけていて、それが心を落ち着かせる効果があるのかもしれません。
あるいは、鳥は周囲に捕食者やその他の脅威がいないときにさえずるので、私たちは無意識のうちに鳥のさえずりを自分も安全であるという意味にとらえているのかもしれません。
または、鳥のさえずりに集中しているときは、ストレス要因に集中するための注意力が低下しているだけであったり、私たちに必要なのは、心地よい気晴らしだけなのかもしれません。
いずれにせよ、これは、鳥の鳴き声がパラノイアに対してよい影響を与えることを示した最初の報告です。
鳥の鳴き声はオーディオ・CDでも効果はある
さて、だからといって、鳥のさえずりが私たちの心の健康を治す万能薬というわけではありません。
今後は、うつ病や不安神経症、その他の症状を持つ人々への影響をより深く調べる必要があるでしょう。
しかし、今回の研究結果は不安を感じたときに、森の中に逃げ込むという選択肢を与えてくれています。
自宅やオフィスから出られなくても、オーディオCDで鳥の甘い鳴き声を聴くことがピンチを救い、精神状態の悪化を予防してくれるかもしれないのです。
エミール・ストッベ氏は、コンピューター上で参加者が行うオンライン実験において、すでにこのような効果を示すことができたのであれば、屋外の自然の中では、この効果はさらに強いと考えられると話しています。
参照元:
・Birds Are A Quick Fix For Your Anxiety
・Birdsongs alleviate anxiety and paranoia in healthy participants