自然が愛する数字「6」の秘密。ハチの巣や虫の複眼が全て「六角形」なのはなぜ?

2020年7月 1日

自然界で「六角形」は、最小のエネルギーで最大の効果が得られる特別な形です。それだけでなく、六角形の配置パターンは、自然が作り出す最も安定した構造でもあることを知っていますか?

たとえば、

  • ハチの巣穴
  • 雪の結晶、水の分子
  • 虫の複眼(小さな目の集合体)、カメの甲羅
  • 海洋生物の骨格
  • ウイルスの粒子、遺伝子

なども全て六角形で、これは単なる偶然ではありません。

ここでは、「なぜ自然界が作り出す造形が六角形にたどりついたのか」について、数学者のケルシーさんによるシャボン玉の膜がつくる極小曲面の実験の解説をもとに紹介します。

極小曲面とは、シャボン玉を包む膜の面積を最小にするような曲面を言います。

不思議なことに、シャボン玉を隙間なく並べていくと、球ではなく虫の複眼と同じように六角形の境界線でつながった泡の集合体が生まれます。

自然界で六角形は特別な存在

自然の造形はまるで数学です。

丸い地球には、幾何学模様のクモの巣、三角形の花、らせん状の貝殻など、いたるところに図形が存在します。

なかでも、自然がこよなく愛する形が「六角形」だといわれ、生物から無生物まで圧倒的に多く見られます。

そして、この六角形に隠された秘密を知るためには、まずは球の仕組みから考えていく必要があるようです。

泡の形はなぜ丸いのか?

泡とは、液体に囲まれた一定の体積をもつ気体です。

それはシャンパンのようにたくさんの液体で囲まれたり、シャボン玉のように非常に薄い液体の層で囲まれたりすることもできます。

では、なぜこれらの泡は丸い形をしているのでしょうか?

実は、葉やクモの巣についた水滴が丸い形をしているのも、シャボン玉の形の秘密と同じ理由です。

シャボン玉の表面を覆う液体分子は、分子同士がお互いに引っ張り合いながら、風船のゴムのように内側に向けて縮もうとする性質があります。

このときの小さく縮もうとする分子間の引力を表面張力といい、これによって液体は最小の表面積をもつ形状を作り出すことができます。

無重力空間では、この引力が液体を「球形」になるように引き込みます。シャボン玉の場合、表面張力の引っ張りは、内側から押して膨らもうとする空気圧とバランスが取れ、最も安定した配置を取る「球」となります

これは物理学です。

たしかに物理学は素晴らしいといえます。しかし、真に普遍的な言語として知られているのは数学かもしれません。

丸いシャボン玉を数学的に説明すると、一定の体積(4πr3/3、さんぶんのよんぱいあーるのさんじょう)を最小の表面積(表面積=4πr2、よんぱいあーるのじじょう)で包み込もうとした場合、シャボン玉は丸くなります。つまり、球体は、体積が一定のとき、表面積が最小となる形で、数学的に最も効率的な形状といえます。

シャボン玉の形は、必要な材料を最小限にした状態

おもしろいのは、丸いシャボン玉をつついて変形させても、表面張力の引っ張りによって表面積は常に均一に最小限の状態に戻ることです。

これは、折り曲げた針金を使って、シャボン玉を複雑な形状に引き延ばした場合でも機能し、液体の膜は常に最も小さな表面積を作り出そうとします。つまり、材料が最も少なくてすむ形(=エネルギーのムダが無い)です。

このシャボン玉の膜構造を建築に取り入れることで高く評価された人物がドイツの建築家、フライ・パウル・オットー氏です。

彼は、シャボン玉の膜を使って実験しながら、材料を最小限に抑えた軽くて高機能な建築物を設計し、ミュンヘン・オリンピック競技場や、ハノーヴァー万国博覧会・日本館屋根など数多くのフレーム構造を生み出しました。

ムダのない効率的な形

さて、最大のボリュームを最小の表面で囲もうとした場合、球が最も効率的な形であることが分かりましたが、立体的(3次元)な球体を平面にぎゅっと敷き詰めるとどうなるでしょうか?

シャボン玉を平面に敷き詰めた円の断面だけを見ていきましょう。

円が、剛体(どんなに力を加えても変形しない)円板であれば、どうしても円と円の間に隙間ができてしまい、一定の面積において最大でも90%までしか埋めることができません。

しかし、幸いにもシャボン玉は剛体ではありません。少しの間、泡を好きな形に変えられるとしたら、平面をどのように埋めていくと思いますか?

同じサイズのシャボン玉をタイル張りのように、隙間なく(無駄な領域がない)平面に並べたい場合、形の選択肢は「三角形」と「四角形」、「六角形」に絞られます。

果たして、その中で最も効率のよい形状はどれでしょうか?

さっそく実際のシャボン玉でテストしてみましょう。

透明な板の上に、ストローでシャボン玉を1つ作ります。平面上でそれにひっつけるようにして同じサイズのシャボン玉を作ります。

2つのシャボン玉の間に、直線の膜(境界線)が生まれました。

3つの泡では、シャボン玉の境界線(膜の壁)がそれぞれ120度の角度で1点に集まりました。

そして、4つでもシャボン玉同士が、約120度の角度で3つの境界線が1点に集まりました。

この120度の角度は、六角形を作る角度と同じです。その後は、シャボン玉を何個つなげても、泡の集合体は、必ず3つの境界線で交わり、それぞれがお互いに120度の角度を作るように自然に配置されていきます。

このシャボン玉の膜のように、一定の領域で、境界条件に対し面積を最小にするような曲面を極小曲面といいます。極小曲面をゴールとした場合、六角形は、三角形や正方形を打ち負かすのです。

いいかえれば、六角形を使うとより少ない角を作りながら、より多くの面積をぬりつぶすことができるというわけです。

そして、最小の表面積(材料)で平面を満たすことができることは、自然界では最小のエネルギー(一番少ない材料)で仕事ができることにつながります。

これは、プラトーの法則として知られ、自然法則の多くがこのシャボン玉の構造・配置のうえに成り立つと考えられています。

膜の性能とのバランスが最も安定する角度が120度

19世紀後半、ベルギーの物理学者であるジョゼフ・プラトーは、120度が最も機械的安定性に優れ、膜にかかる力のバランスがすべて取れていることを発見しました。

すなわちこれが、さまざまな泡の集合体が、六角形のパターンを形成する理由となります。

この泡の配置パターンなら、各方向の表面張力による引力が最も安定し、機械的作用(衝撃など)に対する抵抗力や耐久力が高いのです。

では、もう一度復習をしましょう。

シャボン玉において、泡の内部の空気は、できるだけ多くの領域を満たして膨らもうと内側から膜を押します。

しかし、泡の膜には、周囲(表面積)を最小化しようと縮まる力、表面張力があります。

このような泡同士が複数個集まってバランスよくつながるとき、少ない角(最小のエネルギー)で機能的安定性に優れた最適な接触方法は、六角形でつながることなのです。

さて、それでは実際に自然界に見られる六角形パターンのいくつかをみていきましょう。

六角形の玄武岩石柱

4万本にも及ぶ石柱が並ぶイギリスのジャイアンツ・コーズウェーをはじめ、デビルズ・ポストパイル、カタンの平原、メキシコのプリスマ・バサルティコス、 アイスランド南部ブラックサンドビーチなどの、世界には六角形の玄武岩柱が連なる地域が数多くあります。日本では、兵庫県の玄武洞公園が国の天然記念物に指定されています。

これらは、火山活動によって流れ出したマグマがゆっくりと冷えて固まったときに自然にできた、規則正しい六角形の石柱からなる造形です。

まず、溶岩が冷える際に、岩の体積は収縮しようとする引張力(ひっぱりりょく)がかかります。これはまさに、シャボン玉の表面張力が縮まろうと膜を引っ張るのと同じです。

すると、亀裂が入って収縮による張力が解放されます。このとき、亀裂は、割れ目の量を最少に抑え、機能的安定性が得られる120度で自然と交わり、結果として正六角形を作ります。

シャボン玉と岩とでは働く力こそ異なりますが、同様の数学的法則を使用して同様の問題(エネルギーの効率化と機械的安定性)を解決しているのです。

虫の複眼を構成する六角形の個眼

昆虫の複眼では、泡や岩のような物理的な力の代わりに、進化が原動力となりました。

トンボやハエ、ホタルといった昆虫の目は、数千から数万にも及ぶ六角形の個眼が隙間なく並んだ複眼からできています。

小さな個眼は、光感知領域を最大にし、細胞を形成する周囲の物質量を最小限に抑えることにもなります。これは、シャボン玉の集合体が、最小の表面積(材料)で平面を満たすことができるのと同じで、六角形が昆虫にとって最良の形となるのです。

さらに各個眼の内部を見ていくと、泡の集合体のように集まった4つの錐体細胞もあります。

このように、複眼をもつ昆虫は、ドーム状にびっしりと敷詰まった個眼の集合体によって、エネルギーを節約しながら、ヒトよりも広い360度近い視野で、ヒトでは感じ取れないような細かな動きを敏感に察知できるように進化してきました。

六角形のハチの巣穴

泡は、ハチの巣の説明にも役立ちます。

ハチの巣穴は、六角形を精密に隙間なく並べた構造をしています。

これをハニカム構造といい、六角形の巣穴は、必要な材料を少なくできるだけでなく、耐久性にも優れ、貯蔵力もあります。

さて、ハチが、三角形や四角形の形状を調べ、六角形が最も表面積や蜜のバランスのために効率的であることを考えて、長さや角度を測定し、さらに複雑な数学的計算をしながら巣をつくっている姿をちょっとイメージしてみてください。

残念ながらハチは、数学者ではありませんし、脳はケシの実ほどの微小サイズです。

実のところ、研究がすすむにつれて、ミツバチは最初から正六角形で巣穴を作るのではなく、はじめは丸い形をつくるという説が示されるようになりました。

まず、ミツを食べた働きバチが、ミツロウを分泌して巣をつくりはじめます。

はじめは丸っこい巣穴の粗い構造ですが、忙しく動き回る働きバチの熱でミツロウが溶けて柔らかくなり、それが表面張力によって引っ張られて、物理的に安定した形である六角形になるという説です。

実際に、働きバチが胸を初期の巣に当てる姿も見られており、それが巣を温めているのではないかと考えられています。

初期の粗い構造から、シャボン玉の集合体のように精密なハニカム構造になるプロセスは、ストローの束を加熱した実験でも再現されました。

この有力説の他にも、ミツバチが進化的に、個々のなんらかの単純な行動パターンをもつようになった結果として、ミツロウの付着と除去がひとりでに起こり、秩序をもった構造ができあがったという説などもあります。

自然は数学者

一部の科学者は、自然は効率性やエネルギーの節約を求めていると考えています。自然は、数学的なルールに従っていると主張する科学者もいます。

どうやら自然は、六角形の造形からも分かるように、見事な解決策を見出すためにシンプルなルールを使う方法を知っているようです。