スズメバチの巣の中はどうなっているのか?

スズメバチの巣の中はどうなっているのか?動物・生き物

スズメバチは、私たちに紙づくりを教えてくれたって知っていますか?

ミツロウを材料に巣をつくるミツバチとは異なり、スズメバチは、かみ砕いた木材に唾液を混ぜて巣を作ります。そのため、スズメバチの巣にはハチミツはありません。

スズメバチの巣作りからヒントを得て、砕いた木材を原料(パルプ)に生まれた発明品が紙です。

実は、スズメバチの巣には、成虫や赤ちゃんにとってたいへん魅力的な要素がたくさん機能しています。

以下に、巣が赤ちゃんのためにどのように機能しているかを知るために、巣の中をのぞいてみましょう。

拡張性のあるスズメバチの巣

野生のハチのなかには、オオスズメバチやクロスズメバチ、ツチバチのように粘土や泥を使って地中に巣を作るものもあるようです。

土の中に巣をつくるハチ

しかし、一般的なスズメバチの巣は、唾液と枯れ木で作られたドーム型で、通常、建物や木に垂れ下がって大きくなります。

ギネスブックによると、最大のスズメバチの巣は長さ3.6メートル、周囲5.4メートルにも及びます。

ナイフを使うと、巣はサクッと簡単に切り分けられます。

一番切るのが大変なのは、巣を固定する上の方で、層がより密集して分厚い壁になっているのが分かります。

この部分が巣の土台、つまり根っこで、巣全体にとって重要となる部分。ここで巨大な巣は支えられているのです。

スズメバチの巣の構造や仕組み

スズメバチはチョウチョのような昆虫です。

つまり、幼虫から成虫になるときに蛹(さなぎ)になって、変態をする(完全変態)のですが、この巣の穴は、変態するハチの子供にとっての魅力的なベビーベッドとなります。

ブルックリン大学の細胞生物学准教授、アン・ペトロヴィチェヴァさんは、スズメバチの巣の構造や仕組みについて次のようにいいます。

この巣の穴は、最初に作られたときは開いており、女王バチがそこに卵を産んだ後にフタをされます。

卵を産んだ後にフタをする

巣穴の中は、空洞の円筒形、あるいは学校の鉛筆の芯のような形をしていますが、これには理由があるのです。

六角形の壁がその他の部屋を支えています。

また、六角形はコンパクトな空間なので、とても小さなスペースにたくさんの部屋を入れることができ、しかも非常に丈夫な構造になっているのです。

各巣穴には赤ちゃんとエサがある

六角形の部屋は、幼虫とその食料がぴったり収まる大きさになっています。

スズメバチは多くの場合、女王が卵を産むと、エサも入れてフタをするので、孵化するときにはすでに赤ちゃん用の食料が用意されているのです。

ハチは巣穴から巣穴へ円を描くように移動して、それぞれの巣穴にエサの入れ忘れがないかを確認します。

スズメバチのエサとは

スズメバチの種類によっては、赤ちゃんのために昆虫をかみ砕いて小さくしてから用意するものもあれば、なかにはもっとすごいおもてなしをする種もいます。

ドロバチ(mason wasp)は新鮮なイモムシを丸ごと巣穴に入れて、子供たちに生きたまま食べさせます。

オオベッコウバチは、大型の毒グモであるタランチュラに針を刺して麻痺させた後、その上に卵を産み付けて、赤ちゃんのための誕生日のごちそうにするのです。

獲物の中に卵を産み付けておき、体内で孵化させた後、エサとして食べさせる種もいます。

エサをたくさん食べた幼虫は、変態の準備が整うと、巣穴の中でサナギになり、その後成虫として羽化します。

巣穴は赤ちゃんに最適な温度と湿度に保たれている

スズメバチの巣の中

巣穴はスズメバチの赤ちゃんの寝床であり、繭(まゆ)でもあるので、湿度が高く、安定した温度を保つことが大切です。

そのためには、できるだけ断熱材を入れる必要があります。

この種の巣は、ほとんどの場合、唾液の分泌物、植物の材料、パルプ材で作られています。

スズメバチは、木材を噛み砕き、唾液と混ぜて接着剤のようなものを作り、それを薄く何重にも重ねていくのです。

層が密であればあるほど、より強く、より頑丈な構造になります。

核となる骨格構造を作り上げた後、女王蜂は巣全体を包むようにして、柔らかくした木材の薄いシートで覆います。

この層は基本的に1つ1つの巣穴を覆って保護し、ハチが出入りする穴は1つに限定されます。

スズメバチの巣の出入り口

これによって、巣の内部の温度と湿度が保たれていると考えられています。

この薄いシートで覆われた外側には、新たな巣穴の層が作られ、どんどん拡張されていくのです。

スズメバチが1階から2、3、4階へと、小さな穴を通って移動できるドーム型の巨大な邸宅のようなイメージです。

スズメバチの巣にはハチミツはない

さて、「スズメバチの巣にハチミツはあるのか」という疑問があるかと思います。

答えは「ノー」です。

たしかに、ミツバチもスズメバチも花の受粉を行います。

しかし、ミツバチは実際に蜜を吸って、幼虫の餌となるハチミツに変えますが、一方で、スズメバチは肉食で、昆虫を噛み砕いて食べるので、巣の中にハチミツはありません。

そのため、蜜の代わりに、虫の死骸がたくさん落ちていることはよくあります。

ちなみに、巣の材料も、木材に唾液を混ぜて作るスズメバチの巣とは異なり、ミツバチの巣は、働きバチがお腹から分泌するミツロウでできています。

さて、スズメバチは、赤ちゃんのために一生懸命に巣を作っていることが分かったと思います。

もし巣を見つけても、いたずらに壊して、スズメバチを怒らせないであげてくださいね。