原子がほぼ空洞なら、私たちはなぜ物に触れるのか?

2021年1月25日

前回の記事「ガラスはなぜ透明なのか?一方で、あなたはなぜ透明人間ではないのか?では、以下が重要なポイントでした。

  • 私たちの体は全て原子からできている
  • 原子の中は、電子が雲のようにぼんやりと存在するだけでそのほとんどが空洞

では、私たちを構成する原子がスカスカな空洞であるなら、もし電柱や壁にぶつかっても、体が雲のように通り抜けることができるはずです。

そもそもなぜ私たちは、地面に立っていられるのでしょうか?足元の地面の原子を通り抜けて、なぜ地球のコアに吸い込まれていかないのでしょうか?

椅子に座ったり、ボールを蹴ったり、スマホのボタンを押したりと、何にでも触れることができるのはなぜなのでしょうか?

今回は、私たちの原子がほとんど空洞であるなら、なぜ物に触れるのかについて、目には見えない電子の世界をもとに紹介します。

ほとんどが空洞だといわれる原子の中身とは


私たちが物に触れられる理由を考えるには、まず、原子の仕組みについて理解しなければなりません。

前回の記事も含めて少し考えてみましょう。

  • 原子は、原子の中心にある原子核とその周りにある電子からできている
  • 原子核は、電気(電荷)をもたない中性子とプラスの電気をもつ陽子が強い力によってくっついた塊
  • 原子核の周りには、その逆の符号、つまりマイナスの電気をもつ電子が取り囲んでいる

これをもとに、私たちが物に触れるときになにが起きるのかをミクロの世界で考えていきましょう。

電子同士の反発のおかげで物に触れられる


例えば、私が犬の鼻を触ったとします。

私の指と犬の鼻は、数十億個という数えきれないほどたくさんの原子でできています。

先ほど述べたように、これらの原子は、マイナスの電気(電荷)を帯びた電子でぐるりと囲まれています

2つの物体が十分に近づくと、両方の表面にあるマイナスに帯電した電子の雲は、静電反発と呼ばれるもののおかげでお互いに反発し合います。

磁石のN極やS極が同じ符号同士で反発するように、プラス同士、マイナス同士といった同じ電荷を帯びた粒子同士は、電気的に反発し合うのです。

私たちの「ぶつけた」という感覚は、この反発による実際の力によって引き起こされ、皮膚の圧受容器がその圧力変化に反応して作用したものです。

これは、私たちが風に押されるまで、大気の存在に気づかないのと同じようなものです。

何かに触れるとは


何かに触れることは、実際に私と他の何かの間の距離をゼロにすることを意味しません。

それはちょうど「私の原子」と「犬の鼻の原子」ができる限り近づいた状態で、実際にはあとわずかのところで触れてはいないのです。

静電反発力は、原子の表面や内部での電荷の重なりを嫌う粒子同士が、互いに出会って電気的な反発をし合うことです。

もし2つの粒子が出会って、何もなかったかのように重なり合い、通り過ぎるのであれば、私たちは何にも触れることができません。

共有結合


実は、2つのマイナスに帯電した電子が、反発しあうのではなく、同じ場所を占めることは実際に可能です。

原子と原子が、お互いの電子を共有して結びつく「共有結合」と呼ばれる方法です。

通常、電子は同じ場所に一度に存在できません(パウリの排他原理)。これによって、理論上は物を持てたり、壁を通り抜けられないことになります。

しかし、電子のスピンが「上向き」と「下向き」と逆向きであれば、同じ軌道に2つの異なる原子の電子が重なり合って波打つこともあります。

それが共有結合と呼ばれる方法で、異なる2つの原子が接近して時には重なり合うことができるため、結びつきはとても強いといわれています。

共有結合は強く結びつくため、原子が引き離されにくく、私たちの身の周りでも、砂やガラスの主成分である二酸化ケイ素やダイヤモンドなどさまざまなものに応用されているのです。

最後に

私たちの体の中をみると、生命を維持している細胞は、原子でいっぱいです。

そして、人間の細胞のもととなる原子は、可視光の光子を(透過せずに)吸収しつくしてしまうために、透明ではありません。

また、原子の周りを囲む電子は、同種の電荷同士が近づくと反発力が生じて通り過ぎないため、私たちは物に触れることができるのです。

今回の2話にわたるミクロの世界の話で、感動的な科学が少しでも明確になったなら幸いです。