かつては人間が生きていくために重要だった体の部位のいくつかは、数百万年の進化の経過とともにあまり役に立たなくなっています。
しかし、それらは人間がもはや必要としなくなったにも関わらず、現在も私たちの身体に残されているのです。
以下に、存在はしていても実はそれほど役に立っていない体の部位を5つ紹介します。
尾骨(びこつ)
尾骨とは、脊椎の一番下にある突起のような骨。
尾は、私たちの祖先が四足歩行をしていた頃、走行やバランスをとるのに役立っていましたが、直立歩行をするようになると何世代もかけて縮んでいき、今では何の役にも立っていません。
現在も、母親のおなかにいるとき、ヒト胚の初期(受胎後5週間から8週間くらい)に尾のようなものを発生させますが、それは生まれる頃には消失し、突起だけが残されます。
親知らず
人類は、約12,000年頃に食べ物が、硬い肉や生物から柔らかいものや調理した穀物にシフトしたため、あまり顎の力を必要としなくなりました。
それによって顎が小さくなっていき、親知らずを顎におさめられなくなっているのです。
虫垂(ちゅうすい)
大腸の一部である虫垂、いわゆる盲腸は、必要不可欠な部位ではありません。
虫垂は、人類の祖先が主にセルロースを豊富に含む植物を食べていた頃に消化を助けていた部位だと考えられており、現在も植物食の脊椎動物らの消化には役立っています。
それを「進化の残りもの」と初めて認めたのがチャールズ・ダーウィンでした。
現代人にとって虫垂は、消化器官の一部ではなく、なくても人々の生活の質は下がらないため、外科手術で必要に迫られて切除されることもあります。
ただし、有用な腸内細菌の貯蔵や免疫物質の産生場所として機能している可能性を示唆する研究も増えています。しかし、虫垂が常にその機能をもっていたのか、それとも新しく虫垂に備わった機能なのかなどについてはまだ明確に分かっていません。
耳の筋肉
私たちの祖先は、耳介の筋肉を使って狩りをしたり捕食者を感知したりしていましたが、現在はその能力を失っています。
人間と違ってネコのような動物は、音に向かって耳を動かさないとよく聞こえません。なかには、感情を表現するために耳を動かすほ乳類もいます。
しかし、人間は、首が柔軟に動くようになり、耳を動かす必要がなくなったと考えられています。
立毛筋(りつもうきん)
立毛筋は、収縮するときに鳥肌が立つ筋繊維です。
体毛が多かった私たちの祖先は、この機能をうまく利用していましたが、今はもう使い道がありません。
毛皮が分厚い動物であれば、立毛は保温に役立ち、ヤマアラシのように毛を逆立てて体を大きくみせる効果もあります。