「ヒトの唾液」には、モルヒネの6倍も痛み止め効果が

2021年5月28日

驚いたことに、私たちは、とても強力で未検証の医薬品を口いっぱいに含んで生活しているようです。

最近の研究によって、あなたの唾液には、モルヒネの約6倍の威力を持つ鎮痛剤が含まれていることが発見されたのです。

モルヒネは、戦争映画でもよく見られるように世界中で使われている痛み止めのひとつ。

痛みをおさえる強力な作用がありますが、重い副作用や依存性が高いことから問題視されてきました。

しかし、2000年代初頭このモルヒネに代わる期待の物質が、ヒトの唾液で作られる自然な物質から発見されたのです。

もしかしたら、怪我をした時に「舐めたら治る」と言われたり、動物が傷口を舐めたりするのは、無意識的に体が痛みを和らげる方法を知っていたからかもしれませんね。

ここでは、モルヒネの6倍も有効な鎮痛剤として期待が高まっている唾液の物質「オピオルフィン(OPIORPHIN)」について、モルヒネのもつ問題点と比べながら紹介します。

モルヒネの問題


モルヒネには、激しい腹痛や頭痛、立ちくらみ、吐き気、息苦しさ、排尿時に痛みを生じるなど、数多くの問題点が報告されています。

特に、心理的な副作用が強く、不安感や不眠、幻覚、精神錯乱などの望まない症状に苦しむこともあるようです。

適切に使用しないと、依存症や中毒にもなりかねないことから、医師の指示のもと、正しい処方が必要とされる鎮痛剤として扱われています。

それに比べると、すでに体内に存在している物質であれば、鎮痛剤の副作用や効き目の衰え、中毒などを抑えられる可能性があります。

モルヒネに代わる鎮痛剤「オピオルフィン」の発見


フランスのパリにある研究所(Pasteur Institute)のCatherine Rougeot氏らは、モルヒネの6倍有効な鎮痛剤を人体が作り出すことを発見しました。

それは、「オピオルフィン」と呼ばれるヒトの唾液から作られる自然な成分です。

わたしたちの体は、痛みを感じた時に、体液中に「エンケファリン」と呼ばれる痛みを減少させる化学物質を放出します。

エンケファリンは、時間が経つと自然に分解されてしまいますが、オピオルフィンは、このエンケファリンの寿命を伸ばし、痛み止め効果が持続する時間を長くできることが分かったのです。

実験では、ねずみの足にオピオルフィンを注射した後、針山の上に立たせて、痛みの度合いが調べられました。

結果的に、ねずみが痛みを麻痺させるためには、オピオルフィンの6倍のモルヒネを必要とすることが分かりました。

オピオルフィンの効能

オピオルフィンは、強い鎮痛作用だけでなく、うつ病や気分の落ち込み、不安等を改善する「抗うつ効果」や気分を高める「精神刺激作用」もあると考えられています。

しかし、ヒトの治療に応用していくには、まだ問題点が多く残されており、副作用や効能についても研究を引き続き継続して行う必要があるのも事実です。

そもそも、なぜこのような強力な鎮痛剤が唾液に含まれているのでしょうか

おそらく、私たちの祖先の多くは、罠にかかるなど、命をおびやかされる事態に陥ったときに、自分の足を切断して逃げる際、痛みで心臓発作を起こさないようにするためなど、なんらかの進化上の利点があったのでしょう。

一方で、もし、エンケファリン以外の体内物質の分解も防ぐことができるのであれば、大量に注射された場合になんらかの問題が生じる可能性も否定できません。

このように、まだまだ研究すべき課題は残されていますが、いつの日か、オピオルフィンを唾液から採取するのではなく、大量生産できる日がくるのかもしれません。