本物のわさびはなぜ高いのか?チューブ入りわさびとの違いとは

2020年5月25日

本わさびは、海外だけでなく、日本国内においても高価なため、身近なスーパーやレストランではほとんど見られません。

おそらく、私たちがいつもわさびだと思って寿司や刺身の薬味として利用する緑色のペーストは本わさびではなく、たとえ本種が含まれていたとしても5%にも満たないものでしょう。

パッケージの原材料をチェックすると、味を調整するためにコーン油、食塩、加工デンプン、甘味料、着色料といったさまざまな添加物が混ぜられていることが分かります。

特に海外では新鮮な本わさびに出会える機会はめったにないため、1キロあたりおよそ250ドルもすることがあるほど。これは、西洋ワサビの25倍にも相当します。

ここでは、なぜワサビと呼ばれる野菜がそれほどまでに高いのかについて、その理由を初めてヨーロッパでワサビファームを始めた農業者の話をもとに紹介します。

本ワサビはなぜ高いのか?

ワサビ(山葵、Japanese horseradish)は、緑色をしたアブラナ科の植物。つまり、キャベツやブロッコリー、マスタード、ホースラディッシュ(西洋ワサビ)といった比較的安く、目にする機会の多い植物の仲間です。

しかし、同じ仲間でも本ワサビだけは違い、高値で取引されています。

それでは、なぜ本ワサビだけがこれほどまでに高いのでしょうか。その理由には、ワサビの栽培プロセスが大きく関わっています。

一般的なワサビの栽培方法は、水耕栽培と土栽培の2通りがあります。主に水で育つ沢ワサビの方が大きく育ちやすく、土で育つ畑ワサビは葉わさびなどに利用される傾向があります。

どちらにしても、ワサビが自然に育つのは、条件が整った土壌に限られ、そのほとんどが、日本で栽培されています。

直射日光のあたらない半日陰(薄日程度)でなければならず、乾燥しすぎたり、湿度が高すぎたり、土壌のミネラル成分が合わなかったりすると適切に生育ができないため、病気の影響を受けやすくなります。さらに、年中を通して摂氏8度以上、20度以下の涼しい気温に保たれてなければならないうえ、常に十分な水量が流れる自然な湧き水が必要で清流のある水はけのよい砂利の土壌も求められます。

沢ワサビは、渓流に沿って自然に生育する植物で、繁栄させるには厳しい条件があるがゆえに、商業的に世界で成長するのが最も難しい植物であることで知られています。

湧き水があったとしても、きれいな水(水質)と適した温度(水温)が不可欠なので、アルプスの湧き水では濁ってしまうことがあり、簡単にはいきません。

ワサビ農家の取り組み

ヨーロッパでクレソン(ウォータークレス)ファームを担うJon Old氏は次にように言います。

日本企業によって持ち込まれたワサビ栽培を始めてから長い年月が経ちますが、その間に何度も改善を重ねてさまざまな生育方法を試みてきました。

日本では、地下40メートルから湧き出す10度、11度に保たれた冷たい水を使ってこまめな管理下で栽培されています。ヨーロッパでは温度に敏感なワサビを網の黒い布で覆い、日光を避けて夏の暑さから守っています。

害虫にも弱い為、ワサビの苗植えの際に、一つ一つを筒で覆い、害虫がついた際も1匹ずつ手作業で取り除く農家も日本で見られます。

ワサビ栽培にかかる時間と労力

ワサビは成長速度がゆっくりなので、全ての生育条件を満たしたとしても、茎が垂直に立って収穫時を迎えるまで育つには植え付けから最低でも18ヶ月はかかります。

さらに、収穫時には、ワサビの本体を傷つけないように鍬ですくい上げ、根茎についた茎やひげ根をむしってドロを洗い流すまですべて細かな手作業で行われています。これらの作業は機械ではできないので、時間と労力がかかるのです。

食べるところは、主に根茎部分、植物学的には「樹形」といった方が近いような気がしますが、この太い部分には成長するにしたがって落としていった葉の跡のでこぼこが見られます。この葉の跡のでこぼこの間隔が狭いほど時間をかけてゆっくりと成長した合図で、ずっしりと肉質に重みのあるおいしいワサビになります。

ワサビの擦り方

擦る時は、よく研げるキメの細かいおろし金で、丸を描くようにゆっくりとペースト状に擦りおろします。強くこすると、本来の辛みや風味、粘り気、きめ細かさなどが落ちるので香りを立たせるためにも優しくすりおろしてください。

皮など外側の部分には、ワサビ本来の辛み(内側に甘味)があるので、皮は剥かなくても大丈夫です。

このようにして擦りおろした本わさびは、チューブ入りのわさびとは格段に風味が違います。

本わさびとチューブわさびとの違い

チューブわさびに比べると、本種のわさびは辛みがマイルドで、ほのかな甘さが後味に残ります。

特に海外の人は、わさびというとツンとくるような強い辛みをイメージするため、日本の生わさびならではの甘味に出会って驚くことも少なくはないようです。

海外では、西洋ワサビ(ホースラディッシュ)と呼ばれる白っぽいワサビが主流です。西洋ワサビの方が安価に手に入るため、「本わさび入り」と示されたチューブは主に西洋ワサビを使用して着色したもので、それに対して「本わさび使用」と表記されたものは、そのブレンド率が高いものを指す場合が多いようです。また、国産と示されたチューブわさびのほとんどが、主に海外で作られた日本原産わさびを使用しています。

つまり、わさびの含有率の違いで「入り」と「使用」といった表記に分かれているにすぎず、両者とも風味や辛みを調整し、劣化を防ぐために添加物が多く含まれています。また、粉にしたものではなく、すりおろしたわさびが原材料に使われている場合は、「生」といった表記が使われています。

本わさびがスーパーやレストランでほとんど見られない理由

スーパーマーケットやレストランで、本種のわさび製品が見られない理由は、もう1つあります。

わさびの辛みは、細胞を分解するときに起こる化学反応から生まれますが、この反応は短命だからです。 5分後にはスパイシーなフレーバーがピークに達しますが、30分間そのままにしておくと、ほとんどすべてのフレーバーがなくなります。

ちなみに、わさびの根茎の部分をすりおろさないで、にんじんスティックを食べるようにかぶりついた場合どうなると思いますか?

辛さに涙すると想像するかもしれませんが、実際には風味や辛みは抑えられます。わさびはすりおろして初めて辛味が出るので、細胞壁を壊すまで歯で何度もかみ砕かなければ辛みを味わうことはできません。

わさびの辛さの正体とは

わさびは、細胞壁が壊れると、2つの成分が化学変化を起こします。蔗糖(しよとう)と呼ばれる成分で、それがわさびを食べた後に残る甘味の正体です。この成分が、酵素の働きによって化学変化を起こすと、揮発性の辛み成分を副産物として生成します。

このようにしてわさびは、ぴりっとした辛みを残しつつ、甘味もある部分が多くの人を魅了するのです。

また、この副産物には、細菌の増殖を抑える抗菌作用があるといわれています。昔から生魚を刺身として食べる習慣のある日本人は、先人の知恵として食中毒を予防するために取り入れてきたのかもしれません。

最後に

もし、寿司の薬味としてチューブ入りのわさびではなく、生の本わさびを味わいたいなら、高いわさびを購入して、食べる直前にすりおろして食べる必要があります。

ワサビは鮮度が落ちやすく、時間の経過とともに緑色が薄くなって黄色くなり、黒ずんでいきます。

鮮度が落ちると先っぽの方から黒ずみやすくなるので、一度で使いきれる量を用意するのが理想ですが、使い切れずにどうしてもあまってしまった場合は、キッチンぺーパ―で包んでラップやンビニール袋で覆い、冷蔵庫で保管し、1ヶ月で必ず使い切るようにしましょう。

いかがでしたか?

わさびには、多くの労力がかかるだけでなく、鮮度を保つのも難しいことが分かったのではないでしょうか?

これらの要因はすべて、偽のわさびがすぐになくなることはないことを意味します。

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