紙で手を切ったときに、傷口は、取るに足らぬ程度であるにも関わらず、普通の切り傷よりも痛く感じたという経験はありませんか?
なぜこんなにも痛いのか疑問に思った人も少なくはないでしょう。
実は、この鋭い痛みには、いくつかの科学的な理由があります。
ここでは、紙で手を切ったときの痛みの謎について、解剖学や紙の性質をもとに分かりやすく紹介します。
手の神経について
皮膚は、人間がもつ最も大きな臓器です。
体中をぐるりと覆っている皮膚を全てあわせると、体表面積は、なんと1.5m2(平方メートル)から2m2にも及ぶといわれています。
そのなかでも、手や指先の皮膚には、特に敏感な神経が集まっています。
人間の手は、指を思い通りに曲げ伸ばしして、つまむ、握る、つかむ、持ち上げるなどといったこまかな作業がしやすいように進化しきました。
指は5本もあり、それぞれの神経が、脳と深く関わり合いながら、多様な動きを生み出しているのです。
たとえば、1本の指を動かしたいときには、その他4本の指を動かないように抑える必要がありますが、これも実は非常に複雑で高度な神経による働きのひとつです。
手は痛覚神経の分布密度が高い
手の皮膚は、触覚や温度を感じる神経とともに、痛みを感じる神経の分布密度が高い場所です。
つまり、手は、刺激を敏感に察知し、神経を介して脳に痛みの信号を送る受容体が多く集まっているため、それほど痛みを感じやすいというわけです。
手ほどではありませんが、足の指にもこの痛覚神経は密集しています。
切り口がギザギザになる
紙は、木やプラスチックをも切断し、皮膚なんていともたやすく切り裂く力があります。
仮に、紙で手を切った場合、その傷口は決してきれいとはいえません。
実際に顕微鏡で紙の末端を拡大して見ると、サメの歯のようなギザギザの断面が見え、この形状で傷つけられた皮膚内部の切り口はひどく損傷し、それがより一層強い痛みにつながるのです。
紙の繊維が傷口に付着する
紙は、木材や化学物質から作られており、手を切るとそれらの混合物が皮膚の奥に残ることがあります。
これは、切り傷の痛みを数日間引き延ばす可能性があるため、もし、紙で手を切った場合は、必ず傷口を洗い流してからバンドエイドを貼るようにしましょう。