実は老いたボノボも老眼鏡が必要だった

人間以外の動物はメガネを必要としないのか?人体の不思議

突然ですが、みなさんは、メガネをしたゴリラ、コンタクトをしたカメレオン、片めがねのシカを見たことがありますか?

とてもユニークな質問ですが、みなさんもご存知の通り、野生動物は通常、メガネを必要としません。

結局のところ、生物の祖先はすべて、メガネの力を借りないで生き残ってきたからです。

ただし、実際には野生のカワウソやダチョウを眼科医に連れてはいけないため、動物界で視力がどれほど重要かや、野生の動物の視力低下への対処法などを完璧に知るのは難しいようです。

しかし、研究がすすむにつれて、動物の視力に関するおもしろいことが分かってきました。

人間よりも視力が悪い生き物がいる一方で、ボルボのように、年を重ねるごとに人間と同じく遠視(老眼)になる生き物もいるというのです。

いったいそれはどういうことでしょうか?以下にみていきましょう。

人間よりも視力の悪い生き物

動物界では、人間よりも視力の悪い生き物はたくさんいます。

たとえば、ネズミやビーバー。

彼らは目が悪く、絶えず視界がぼやけています。

ただし、このような動物は、臭いを嗅いだり(嗅覚)、音を聞いたり(聴覚)などの他の感覚で視覚を補い、その能力は人間よりもかなり優れていることがよくあります。

実際に、目に頼った種は、子孫を残す前に食べられる可能性が高いため、絶滅した種も多くいます。

どうやら、どれほど目が良いかは、どれだけ視力に頼って生きているのかといった環境によるところが大きく、人間は聴覚や触覚よりも、視覚に頼った種に近いようです。

実のところ、近世以前の人間社会では、近視の人はまれであったのをご存知ですか?

これは注目に値します。

ボルボも老眼鏡が必要

研究がすすむにつれて、年老いたボルボが、老眼鏡を必要としているのが分かってきました。

とはいえ、彼らは新聞の小さな文字を解読するためではなく、毛づくろいで小さなシラミを見つけるために老眼鏡が必要なようです。

日本の京都大学とスコットランドのセントアンドリュース大学のリュウ・フンジン氏らは、コンゴ民主共和国のルオ科学保護区で、14頭のボノボがお互いに毛繕いをしている様子を記録し、以下の発見をしました。

「カレント・バイオロジー」誌で報告されたように、ボルボは、年齢とともに近くが見えにくくなるため(遠視)、グルーミング(毛繕い)の際に、目と対象物の距離が離れるのです。

たとえば、24歳のボルボは、約4インチ離れた目で毛繕い(けづくろい)をする一方で、45歳のボルボは約16インチは目を離す必要がありました。

そして、このような遠視は、30代後半から40代前半にかけて特に見られ、グルーミングの距離が長くなった(飼育下のボルボの平均寿命が40歳)といわれます。

科学者たちは、グルーミングの距離は、ボノボの性別や親密な関係に基づいて変化しないと分かり、結果的に、ボルボも人間の視力が変化するのと同じように年齢とともに変化することを発見しました。

加齢による遠視は、主に目の水晶体や筋肉の変化が原因と考えられています。

動物の視力について

私たちの視力の限界は、「物に焦点を合わせることができるか」ではありません。

それは、網膜上の錐体細胞がぎっしりと詰め込まれていることに関係しています。

カメラセンサーのピクセルのように、細胞数が少ない場合は、詳細画像を取得できません

タカなどの猛禽類は、網膜上により密に詰まった錐体細胞を持っているため、人間よりも細かい画像を見ることができるのです。

ちなみに、奇妙な話ですが、水晶体を取り外した人は、紫外領域まで拡張された波長を見ることができるといわれています。

画家のクロード・モネもこのような紫外線領域の視覚をもつ一人だったといわれています。

眼の仕組みから考えると、スーパーマンやタカのようには見えないかもしれませんが、幸いにも物理学のおかげで、現代人はメガネという補助器具を使って視力を改善できるのです。

最後に

他の動物と人間の視力を比べてみると、おもしろい発見がたくさんあります。

ボルボの遠視を発見したリュウ・フンジン氏は以下のように言います。

「現代の人間の寿命がチンパンジーやボノボの寿命よりもはるかに長いにもかかわらず、目の老化は、共通の祖先からそれほど変わっていない」

目の進化については、これから研究がすすむにつれてまた新たな発見が期待できそうです。

主な参照元:
Why Don’t Other Animals Wear Glasses?
Do They Make Reading Glasses for Older Bonobos?

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