人間以外の動物はメガネを必要としないのか?実は老いたボノボは老眼鏡が必要だった

2020年8月18日


突然ですが、みなさんは、メガネをしたゴリラ、コンタクトをしたカメレオン、片めがねのシカを見たことがありますか?

とてもユニークな質問ですが、みなさんもご存知の通り、野生動物は通常、メガネを必要としません。

結局のところ、生物の祖先はすべて、メガネの力を借りないで生き残ってきたからです。

一方で、現代の人間の多くは、メガネを必要としています。

アメリカでいうと、10人に7人は目に入った光を(水晶体が網膜に向けて)うまく曲げられないためにコンタクトレンズや眼鏡をつけています。

これほど目が悪い人が多いにも関わらず、私たちの種は自然淘汰の試練をどのように乗り越えて生き残ってきたのでしょうか?

これは少し複雑な問題で、実際に、野生のカワウソやダチョウを眼科医に連れてはいけないため、動物界で視力がどれほど重要かや、野生の動物の視力低下への対処法などを完璧に知るのは難しいようです。

しかし、研究がすすむにつれて、動物の視力に関するおもしろいことが分かってきました。

人間よりも視力が悪い生き物がいる一方で、ボルボのように、老化で人間と同じく遠視(老眼)になる生き物もいるというのです。

そこで今回は、私たち人間と動物の視力の低下について、興味深い眼の仕組みをもとに分かりやすく紹介します。

人間よりも視力の悪い生き物

動物界では、人間よりも視力の悪い生き物はたくさんいます。

たとえば、ネズミやビーバー。

彼らは目が悪く、絶えず視界がぼやけています。

ただし、このような動物は、臭いを嗅いだり(嗅覚)、音を聞いたり(聴覚)などの他の感覚で視覚を補い、その能力は人間よりもかなり優れていることがよくあります。

実際に、目に頼った種は、子孫を残す前に食べられる可能性が高いため、絶滅した種も多くいます。

どうやら、どれほど目が良いかは、どれだけ視力に頼って生きているのかといった環境によるところが大きく、人間は聴覚や触覚よりも、視覚に頼った種に近いようです。

実のところ、近世以前の社会では、近視の人はまれであったのをご存知ですか?

これは注目に値します。

動物の近視(視力低下)は環境が関係している

現代の人間は、電気やテレビ、ゲームの進歩によって、かなり快適な生活を送っています。

一方で、生活が便利になるにつれて、自然淘汰は、人間の視力を低下させました。

実は、近視は、同じ種の動物であった場合、野生で育つよりも、家畜として飼育された方が増える傾向にあります。

どうやら、近視には環境要素がなんらかの形で関係しているようです。

ボルボも老眼鏡が必要

研究がすすむにつれて、年老いたボルボが、老眼鏡を必要としているのが分かってきました。

とはいえ、彼らは新聞の小さな文字を解読するためではなく、毛づくろいで小さなシラミを見つけるために老眼鏡が必要なようです。

日本の京都大学とスコットランドのセントアンドリュース大学のリュウ・フンジン氏らは、コンゴ民主共和国のルオ科学保護区で、14頭のボノボがお互いに毛繕いをしている様子を記録し、以下の発見をしました。

「カレント・バイオロジー」誌で報告されたように、ボルボは、年齢とともに近くが見えにくくなるため(遠視)、グルーミング(毛繕い)の際に、目と対象物の距離が離れるのです。

たとえば、24歳のボルボは、約4インチ離れた目で毛繕い(けづくろい)をする一方で、45歳のボルボは約16インチは目を離す必要がありました。

そして、このような遠視は、30代後半から40代前半にかけて特に見られ、グルーミングの距離が長くなった(飼育下のボルボの平均寿命が40歳)といわれます。

科学者たちは、グルーミングの距離は、ボノボの性別や親密な関係に基づいて変化しないと分かり、結果的に、ボルボも人間の視力が変化するのと同じように年齢とともに変化することを発見しました。

加齢による遠視は、主に目の水晶体や筋肉の変化が原因と考えられています。

それでは、近視や遠視がどのようにして起こるのか、眼の仕組みをもとに考えていきましょう。

「眼の仕組み」私たちはどうやって物を見ているのか

私たちが物を「見る」とき、実際には物にあたって戻ってきた(反射)光を見ています。

目の中のレンズは硬くなく、硬めのゼリーのよううなもので、それは水晶体と呼ばれる柔軟なタンパク質から作られています。

それらはヒトの目で見える波長の光(可視光線)を通過させますが、そのとき、レンズ(水晶体)の丸い形状は光を曲げて(屈折)調節しながら、眼の奥の網膜と呼ばれるスクリーンに映し出しています。

これは、光が空気から水などに差し込むときに、境界で曲がるのと同じです。

しかし、眼球は、カメラのように、レンズ(水晶体)を網膜から遠ざけたり、近づけたりして焦点を合わせることができません。

代わりに、レンズを周囲の筋肉(毛様体筋)で引っ張って薄くしたり、縮ませて分厚くしたりして(ピントを合わせ)、光の曲がり具合をレンズの厚みで変更しています。

オブジェクトが遠くにあるほど、目に入る光線間の角度が小さくなるため、レンズが光線をそれほど曲げる必要がなくなり、筋肉がリラックスして薄いレンズになります。

そして、オブジェクトが近づくと、光線がレンズに広角で当たるので、近距離で網膜に焦点を合わせるために、レンズ(水晶体)は分厚くなり、屈折率を大きく変化させます。

私たちはこれらすべてを自分の意志とは関係なく行っています。健康な目は、はるか遠くから15cm近くまで、0.5秒未満で焦点を合わせられます。

しかし、私たちの多くは、このプロセスが完全には機能しません。

近視とは

近視の人は、遠くの物体に焦点を合わせるのに苦労します。多くの場合、遺伝や環境などの影響で、ラグビーボールのように眼球の奥行が伸びるために、網膜でピントが合いにくくなった状態をいいます。

近視の場合は、眼鏡やコンタクトレンズを使って、後ろ側で焦点が合うように調整します。

乱視とは

レンズは網膜の前で画像の焦点を合わせます。

または、乱視がある場合、角膜が丸っこくなりすぎて、焦点が合いにくくなり、奇妙なぼやけた効果を生み出します。

その場合、外部からの光が目に入る前に、ほんの少し光の幅を広げるレンズを使用して、焦点が網膜で結ばれるように修正されます。

遠視(老眼)とは

近視とは逆で、目の奥行が短すぎたり、レンズに厚みを持たせられなかったりする場合などに、物を近くで見ようとすると、焦点が網膜の後ろに移動してしまう状態です。

その場合、目に入る前に、光の幅を縮めるレンズを使用して補正されます。それは、小さな虫メガネを付けているようなものです。

私たちは年をとるにつれて、しばしば遠視になります。

水晶体の柔軟性がなくなり、近い物に焦点を合わせるためにレンズを分厚く変化させることができず、ピントを合わせる力が弱くなるためです。

現代人の視力は低下し続けている

奇妙にも、過去半世紀にわたって、先進国では視力が悪化しています。

60年前、近視は中国人の10人に1人に影響を及ぼしましたが、今日では若い世代の90%が影響を受けています。

韓国のソウルだけでも、19歳の男性の97%が矯正レンズを必要としています。

もはや変化が速すぎて、遺伝学だけに起因するとはいえなくなりました。

視力低下の原因

もともとは、目の負担となる本やゲームを間近で読んだり、見つめたりする時間が長すぎて、眼球の奥行きが長く伸びたのが原因だと考えられていました。

しかし、最近の調査では、最大のリスク要因は、子供たちが明るい日光の下で過ごす時間が少なくなったことにあると示されています。

私たちの視力はどれほど良くなるのか?ワシのように見えるのか?

野球のような視覚反射スポーツのプロアスリートは、多くの場合、人間でいう良好な視力「1.0」をもちます。

私たちの視力の限界は、「物に焦点を合わせることができるか」ではありません。

それは、網膜上の錐体細胞がぎっしりと詰め込まれていることに関係しています。

カメラセンサーのピクセルのように、細胞数が少ない場合は、詳細画像を取得できません

タカなどの猛禽類は、網膜上により密に詰まった錐体細胞を持っているため、人間よりも細かい画像を見ることができるのです。

ちなみに、奇妙な話ですが、水晶体を取り外した人は、紫外領域まで拡張された波長を見ることができるといわれています。

画家のクロード・モネもこのような紫外線領域の視覚をもつ一人だったといわれています。

眼の仕組みから考えると、スーパーマンやタカのようには見えないかもしれませんが、幸いにも物理学のおかげで、現代人はメガネという補助器具を使って視力を改善できるのです。

人間にとって視覚は重要

人間の脳の半分は、直接、または、間接的に視覚情報の処理に費やされています。

目の網膜には、1億5千万個にも及ぶ光に敏感な細胞があります(錐体細胞、桿体細胞)。

それらは脳の外にあるのです。

脳自体の中では、視覚処理に使われるニューロンは数億個にも及び、大脳皮質の約30%を占めていますが、それに比べて触覚は8%、聴覚においてはわずか3%です。

網膜から脳に信号を伝える2本の視神経は、それぞれ100万本の繊維で構成されるのに対して、聴覚神経はそれぞれわずか3万本。

それによって脳は、わずか13ミリ秒の間に見た画像を識別できると考えられています。

1980年代にリチャード・フェルダー博士が行った工学系の学生を対象とした研究では、勉強をするときに、視覚を中心とした学習スタイルをとる人が少なくとも65%といわれ、その他の研究でも80%と推定されています。

人間は、言葉を覚える能力よりも絵を覚える能力が上回っており、知識を覚える際に、しばしば絵と関連付けます。

1986年、ミネソタ大学の研究では、視覚的補助具を使ったプレゼンテーションは、補助具なしのプレゼンテーションに比べて43%も説得力があることも分かりました。

視覚的なサポートは、より専門的で、より説得力があり、より興味を惹きつけて、知覚に影響を与えているようです。

最後に

いかがでしたか?

このように、他の動物と人間の視力を比べてみると、さまざまな発見があっておもしろいですね。

私たち人間にとって、物を見る力「視力」はとても大きな役割を果たしています。

しかし、ボルボの遠視を発見したリュウ・フンジン氏は以下のように言います。

「現代の人間の寿命がチンパンジーやボノボの寿命よりもはるかに長いにもかかわらず、目の老化は、共通の祖先からそれほど変わっていない」

目の進化については、これから研究がすすむにつれてまた新たな発見が期待できそうです。