死にかけた人の多くが「トンネル」や「光」を見る理由

2018年8月30日

まるで映画のような話ですが、死にかけたことがある人は、みな同じような経験をする傾向があります。

なかでも共通でみられるのが、「目の前がまばゆいくらい明るくなった」、または、「暗いトンネルの先の明るい光から呼ばれた」といったものです。

ここでは、人が死にいたる経験をする間に、実際に何を見ているのか、そして、それはなぜなのかについて、臨死体験の研究をもとに科学的に分かりやすく紹介します。

臨死体験に共通してみられる要素

一般的に、死にかけたときの経験は、臨死体験(NDE)と呼ばれています。これは、もうすぐ死ぬときや、心身が危機的な状況で起こり得る心理的事象で、脳科学的にもとても意味深いものがあります。

臨死体験は、人によっては異なりますが、基本的に、「光」、「幽体離脱」「激しい感情に駆られる」、「亡くなった家族や友人、神様や霊を見る」の4つの共通した要素がみられます。

一体なぜ、人は、このような臨死体験を経験するのでしょうか?

それらはあの世につながるなにかなのでしょうか?

臨死体験をした人が、死んだ父や祖母と話をしたというのは本当なのでしょうか?

死に関する宗教的、または霊的信仰を確認するのは難しいかもしれませんが、下記よりその背後にある科学的なものに焦点をしぼって検証していきます。

臨死体験と脳の関係

死にかけたときに経験する臨死体験は、脳の側頭葉と関係すると考えられています。

研究がすすむにつれて、臨死体験をした人は、脳機能において、特異な側頭葉の活動がみられることが分かってきたのです。それはてんかん発作にとてもよく似たものだという報告もあります。

また、死が近いとき、人は睡眠時間が短くなり、睡眠サイクルにおけるREM睡眠(浅い眠り)の訪れが遅れることを示す研究もあります。

脳と臨死体験の関係を調べた研究では、脳の損傷よりも他の要因で死にかけた人の方が臨死体験を経験しやすいことが分かりました。

研究では、86人の生死にかかわる頭部外傷患者のうち、明確に臨死体験をしたのは、たったの3人だけだったのです。

この研究において興味深いのは、臨死体験をした人のほとんどが、光の詳細やそのときの状況など、体験した内容を詳しく説明できることです。

臨死体験中は、意識が覚醒する

全米科学アカデミー誌によると、死に至る経験をするとき、脳内の電気活動が急増し、感覚がとぎすまされて、現実よりリアルに感じる人が多いというのです。

それに興味をもった研究者らは、さらに次のことを見出しました。

実際のできごとや過去になんらかの想像をふくらませたときの記憶よりも、臨死体験は現象論的(客観的にみて正しいかどうかよりも、たとえ現実には有り得ないとしても、見たことが正しいという前提から論じていくこと)な特徴があります。

臨死体験の記憶は、ただ頭で想像されただけの記憶ではありません。異常なほどの覚醒状態で、たとえ現実にはないようなものでも、見たことは本当のできごとのように心理的に誘導されて、普段の感情よりも鮮明に知覚されているのです。

バーミンガム大学のジェイソン・ブレイスウェイト博士は、これを脳の「最後の発作」と呼び、死と直面するときに脳が過度に興奮し、長年にわたって見聞きしたり、考えたりしたことが走馬燈のように現れたり、意識や感覚の異常な覚醒がみられることがあると考えています。

トンネルの先に見える明るい光の正体

それでは、トンネルの先に明るい光を見る人が多いのはなぜでしょうか?

まず考えられる要因は、臨死体験のときに、目の血流や酸素量が激減していることです。

死にかけた経験をした人のほとんどが、目の血流が減り、十分な量の酸素がなくなる一定の期間があったといえます。そしてこれらは、トンネルビジョンにつながります。

トンネルビジョンとは、視野が狭まって、中心部分しか見えない症状で、臨死体験でよく語られるトンネルの光景も、これが原因だと考える科学者もいます。

その他にも、脳神経が過剰に興奮することが原因だと考える科学者もいます。

バーミンガム大学のJason Braithwaite博士によると、死に至る経験をした人の脳内は、過剰に興奮しています。

実際にミシガン大学の科学者たちが、9匹のラットを調査した結果、動物の心臓が鼓動を停止した30秒後に高周波の脳波(ガンマ振動)の急激な増加が測定されました。

ミシガン大学のJimo Borjigin博士によると、これは、人間の意識にかかわるニューロンの特徴的な要素で、特に、脳の異なる部分からの情報を「リンク」させる役割があるため、人の脳で同じようなことが起こると脳活動と意識レベルが上昇し、視覚野が高度に活性化する可能性があると語りました。

つまり、視覚野の活性化によって、光への感度が高まったことが、まばゆい光やトンネルの光につながったと考えられます。

今までは、人の脳は、死が近くなると活動が弱まるというのが一般的な理論だったかもしれません。

それを考えると、上記は、とても興味深い研究だといえますが、実際に人間の脳で臨死体験を研究するのは困難なため、脳の活動や視覚の問題もまだほとんど解明されていないのが現状ではあるようです。

その他の参照元:
Near-death experiences are 'electrical surge in dying brain'