出産によって母親の脳はどう変化するのか?なんと父親もオキシトシンの分泌が増加

2019年4月26日

女性の子宮は、妊娠すると500倍以上の大きさにまで成長します。

しかし、妊娠したことによる変化は、おなかのふくらみのように、すべてが目に見えるわけではありません。

事実、最大の変化のいくつかは、女性の脳で起こります。

研究がすすむにつれて、妊娠すると女性は、脳のリモデリング(構造変化)を経験し、赤ちゃんに対してより「愛着」や「共感」をもって育てることできるように適応している可能性が分かってきました。

ここでは、妊娠、出産を経験した女性の脳で起こる神秘的な変化について紹介します。

初めての妊娠で脳の構造が大きく変化する

Nature Neuroscienceに発表された研究では、妊娠中に、女性は、少なくとも産後2年間は持続する重要な脳リモデリングを経験することが明らかになりました。

この脳の変化は、母性への移行を支援している可能性があります。

神経科学者エルズリン・ホエクジマ氏率いるバルセロナ自治大学の研究チームは、初めて妊娠を経験した女性に対して妊娠前後の脳スキャンを行い、社会的認知と心の理論をつかさどる脳の領域に灰白質の縮小を発見しました。

これは、女性に赤ちゃんの写真をみせたときに活性化がみられる脳領域で、社会生活のなかで、相手に考えや感情があることを理解して、情報を推察する能力にかかわっています。

縮小といっても、必ずしも悪いことではありません。

脳の「心の理論」に関する領域が縮小する理由

灰白質が縮小する原因はまだ明確にされてはいませんが、母親が、母性本能と呼ばれるものを形成して、赤ちゃんの要求に応えるために、不必要なものを削って脳をより子育てに向けて専門化していくからだと考えられています。

これは、脳が優先順位を再設定しているようなものです。

これに睡眠不足も加わって、産後の母親の脳は、最優先である子育て以外のこと、たとえば、物忘れが起こったり、注意力が失われたりするなど、今までできたことが同じようにできなくなることもあります。

このような脳の構造変化は、生後2年間はみられ、母親の赤ちゃんへの愛着評価を予測し、コンピューターのアルゴリズムによって、どの女性が妊娠、出産を経験したかを識別できることまで明らかになりました。

赤ちゃんとの対面(出産)によって脳の報酬系に関わる領域が変化

母親が初めて赤ちゃんを見たときの経験は、一言でいうと「一目ぼれ」です。

女性が出産すると、それは文字通り、恋愛で一目ぼれしてしまったときと同じ脳の報酬系ネットワークの中枢となる領域が活性化し始めます。

すると、脳では、幸せホルモンとよばれる、ヒトに「心地よさ」を感じさせるホルモンを分泌するための信号が送られ、ドーパミンやオキシトシンが血液中に放出されます。

脳では赤ちゃんと快楽の結びつきが形成されて、「愛」と「献身」という形ですぐに母子の強いつながりが引き起こされます。

出産した女性は、熱愛中と同じドーパミン神経の活性化が起こる

研究では、母親になりたての女性は、付き合い始めたばかりの幸福度が高いカップルと同じレベルのオキシトシンが分泌されていることも分かっています。

これは、ヒトの母親だけではありません。

科学者たちは、ネズミやリスなどのげっ歯類が、コカイン(麻薬)を注射されるよりも、赤ちゃんを養う方が、喜びや快楽をつかさどるドーパミン神経の反応が強く出ることを発見しました。

産後の母親における脳の報酬系の領域を最も強く活性化させるのは赤ちゃんに関することで、おそらく食べ物や性的なものをはじめ、これまでの人生で非常にやりがいがあったことを含めて、その何よりも、「赤ちゃんの笑顔」に強い反応がみられると考えられます。

脳の情動調律に関する領域が変化

一方で、赤ちゃんが泣いているときの母親の脳では、情動調律ネットワークとして知られる領域が別の形で活性化します。

情動調律とは、相手の心情を推しはかって、その気持ちに対して反応し、働きかける能力です。脳でいう情動調律ネットワークには、何か学ぶときの情報処理(記憶)や高いレベルでの精神活動の中枢として重要な「前頭前野」や「帯状回」などが含まれており、母親の感情のコントロールに役立っています。

ヒトは、寝不足になると感情のコントロールが難しくなるため、睡眠不足になりやすく、泣き声に悩まされやすい母親にとって、これは非常に重要なことなのです。

警戒心が強くなる

出産は、脳内である突出した情報を認知して反応するときに関わるネットワークシステム「サイリエンス」を活性化するのに役立つと科学者たちは考えています。

赤ちゃんへの脅威を発見し、有害なものから守るために、母親であることは、通常よりも疲れやすく、警戒心が強くなる傾向があり、特に、危険な状況では、そのネットワークがアドレナリンの増加を助けます。

脳の共感を感じる領域が活性化

日常面では、母親は、赤ちゃんのニーズを理解する必要があります。

それを達成するために、母親は、脳で社会的認知をつかさどる扁桃体や島などからくる「共感」を使います。これについては、母親は、赤ちゃんの写真を見たとき、普通の表情よりも、泣き顔の方がより活性化することが研究で示されました。

さらに驚いたことに、変化するのは、母親の脳だけではありません。

研究では、父親の脳でも、幸福感や信頼をもたらすオキシトシンが放出されることが分かりました。

父親が自分の赤ちゃんとふれあうときには、このオキシトシンの分泌だけでなく、しばしば他のホルモン「プロラクチン」の血中濃度の上昇を伴います。

プロラクチンは、乳腺に作用して母乳の生成を誘発するので、ミルクホルモンと呼ばれることもあります。

なんと、男性もそれを作り出すことができるのです。

そして研究では、赤ちゃんとよく一緒に遊ぶ父親の方が、ふれあいのない父親よりも血中のプロラクチン濃度が高いことが分かり、彼らはまた、泣き声にも敏感に反応を示しました。

最後に

このように、子供をつくることは、ライフスタイルだけでなく、あなたの脳にも大きな変化を与えます。

これまでとは異なる優先順位を持ち、これからの子育てに向けてさまざまなタスクに順応するために、あなたの脳は変わるのです。

特に産後数ヶ月は、生物学的、および心理的な親への適応にとって、非常に重要な期間のひとつとなり、この時期に育まれた赤ちゃんへの強い感情的な絆は、これからの長期的で前向きな関係を発展させる手助けとなります。

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