ヘリウムガスはどうやってあなたの声を変えているのか?

ヘリウムを吸うと声が変わる仕組み人体の不思議

ヘリウムガスを吸い込むと ドナルドダックのような奇妙な声になりますね。

一体ヘリウムガスは、あなたの声をどうやって変えているのでしょうか?

実は、話し声を変えるガスは、ヘリウムガスだけではありません。

以下に、ヘリウムや他のガスを吸うと、なぜ声を変えることができるのかについて発声の仕組みをもとに紹介します。

声は声帯から発せられる

喉の上の方には、喉頭、いわゆる「喉仏(のどぼとけ)」といわれる大きな軟骨があります。

その中には、伸縮性のある2本のひだのような組織があり、これが声帯と呼ばれるものです。

この2本の声帯の間にある隙間「声門」が、(声門閉鎖筋によって)開け閉めされ、そこに空気が通ると声帯が振動して音が発せられるのです。

声帯は、話すときに特定の周波数で互いに振動します。

一般的に女性は男性よりも声帯が細く、短く、堅いといわれています。

そのため、声帯の振動が速く、高い声を出すことができます。

これは、弦が短い(楽器が小さい)バイオリンと弦が長い(大きい)コントラバスでイメージすると分かりやすいかもしれません。

弦が短くなると音が高くなり、長くなると音が低くなるのです。

その音を「声の基本周波数」と呼びます。

声の通り道で音が反射し合って最終的に聞こえる声になる

そのままでは、ただのうなり声のような音ですが、声の通り道でその音波が跳ね返り始めます。

声門から口や鼻にかけての通り道で、音の反射が互いに干渉しあって、元の周波数に高さの異なる他の周波数が混ざり合っていくのです(共鳴)。

つまり、あなたの声は最初は1つの周波数であっても、最終的には複数の周波数が混ざって倍音が増幅されたものが声として誰かの耳に聞こえているのです。

ヘリウムガスはどうやって声を変えるのか?

そこで登場するのがヘリウムガスです。

ヘリウムガスは空気より軽いので、音は空気中よりヘリウムの中を速く移動します。

音が、空気中を毎秒約332mの速さで進むのに対して、ヘリウムの中では毎秒約1007m。

実に3倍近い速さで進みます(実際にはヘリウムはそのままでは有害なので、酸素などが混ぜられており、音速は2倍から2.5倍程度になります)。

そのため、音波が声帯内で2倍以上速く跳ね、周波数の高い方へ増幅されます。

では、空気より6倍も重い六フッ化硫黄(ろくフッかいおう)を吸うとどうなるでしょうか。

音(空気の振動)は空気中よりも遅く進み、ゆっくりと音が伝わります。声の低周波を増幅させて低い音になるんです。

しかし、ここで興味深いことがあります。

どちらのガスを吸っても、声の波長域(空気の圧力変化の高低域)は変わりません。

声帯はどのガスを吸っても、同じ速度で振動するからです。

つまり、あなたの声帯の基本的な振動周波数は基本のままなので、一定時間内における空気の振動回数(共鳴周波数)が声を高くしたり、低くしたりしていたのです。

いかがでしたか?空気の性質によって、声が変わるというのは、とても興味深いものですね。

周波数が低い(空気の振動回数が少ない)と音は低く聞こえ、周波数が高い(空気の振動回数が多い)と音は高く聞こえる。

ヘリウムは、空気よりもとても軽いので、音が伝わるスピード(音速)が速くなり、それだけ声の通り道で跳ね返って共鳴しあい、高い周波数の音に偏る。

人間の声の波長(空気の圧力の高低変化)はどんな気体中でも変わりませんが、声の通り道で音(空気の振動)の伝わり方が速くなる(周波数がが高くなる)ため、高い共鳴周波数に偏っていき、声が高くなる。

声の高さは、あなたの声帯の大きさや周波数、共鳴周波数などたくさんの要素が複雑にからみあって聞こえているのです。

しかし、空気以外のものを吸い込むと少し危険なので注意が必要です。特にガスの密度が空気よりも濃い場合、肺の底に沈むので 吐き出すのが難しくなってしまいます。

参照元:What’s Really Happening When You Inhale Helium