もし、あなたが2台のスピーカーがある部屋に閉じ込められて、90dB(騒々しい工場内の音量)か120dB(飛行機のエンジン音)、どちらかの音を聞かなければならないとしたら?
おそらくデシベル(dB)の小さいほうを選ぶでしょう。
音が小さいほうが耳が痛くないに決まっていますよね。
一体それはなぜでしょうか?
それは、デシベル(dB)が聴覚で感じる音の大小を表すものではないからです。
以下に60dBが120dBよりも静かに感じるのはどんなときかについて、そもそも「音とは何か」をもとに紹介します。
音とは何?
音というのは、気圧の急激な変化なのです。
空気の圧力の高低変化を波線で表すと、その音の強さを「デシベル(dB)」という単位で数値化することができます。
デシベルという単位はどこかで聞いたことがあると思います。
騒音レベルやスピーカーの音響効果など、あらゆる音の表現に使われる単位です。
しかし、デシベルは音の強さを表すだけで、「うるさい」や「静か」といった音の大きさは周波数、つまり音圧変化の速さ(単位時間あたりの波の数)にも左右されるのです。
音が聞こえる仕組み
私たち人間が、聴覚で感じることができる周波数の音域は限られています。
全く同じ波(圧力変化)の高低、いわゆる「デシベル(dB)」の数値が同じであったとしても、周波数(波の変化の速度)が変わると音の大きさは確実に変わるのです。
それは、音が聞こえるためには、耳の奥にある小さな有毛細胞(ゆうもうさいぼう)のいくつかを揺り動かさなければならないからです。
どんなに強い音でも耳の奥にある毛を揺らさなければ聞こえない
ねずみの鳴き声のような高い音は、耳の中に入ってくると、入り口に近い硬い毛を素早く揺らし、ホーン(楽器)のような低い音は、耳の奥の柔らかい毛まで届いてゆっくりと毛を揺らします。
そして、人間の耳は赤ちゃんの泣き声のような中音域の音を最も敏感に聞き取り、高音域や低音域の音はあまり聞き取れないようになっています。
つまり、コウモリが エコーロケーションに使うような超高音や、地震が発する超低音は、ほとんど聞こえません。
なぜなら、人間の耳にはその周波数に対応する毛がないため、その音が何dBあっても、私たちにはうるさく感じないのです。
では、デシベルが音の大きさを測るものでないなら、なぜデシベルを使うのでしょうか。
世の中にはさまざまな周波数の音がありますが、ほとんどの場合、私たちが測定し、話題にしたいのは、私たちが敏感に反応する音、つまり、私たちに聞こえるか、あるいは刺激するのに十分な大きさの音だからです。
そのため、一般的にデシベルは音の大きさの目安として考えると十分に有効な値といえるでしょう。
もちろん、コウモリのエコーロケーションの大きさをどうしてもデシベルで測りたいのであれば話は別ですが。