みなさんは、鼻の下になぜ溝があるのか不思議に思ったことはありませんか?
この鼻の下から上唇まで続く溝の名前は、人中(じんちゅう)。
驚いたことにこの溝は、発育中のヒト胚発生の研究から、母親のおなかの中で胎児の顔がどのように形成されるかに関係していることが分かってきたのです。
「人中は、顔のさまざまなパーツが1つに融合する場所」。イギリスのBBCで医学ジャーナリストでもあるマイケル・モズレー博士によってこのように人中が紹介され、大きな反響を呼びました。
つまり、鼻の下の溝は、胎児の成長という感動的なプロセスの痕跡(こんせき)。
さっそく以下に、鼻の下に溝がある理由について、胎内の発達過程で顔が形成される様子や溝の役割を中心に分かりやすく紹介します。
実のところ、この人中は、人が生きていくうえでなんの役にも立ちません。
生物学者は、何世紀にもわたって、この鼻の下から上唇につながる奇妙な溝が
について考えた末に、ある驚きの結論にたどり着きました。
そして、私たちの顔が単に「成長する」だけではなく、以下のように「顔のパーツがパズルのように組み合わさってひっつく」ことが初めてデータとして示されたのです。
鼻の下の溝は胎児の顔の形成と関係している
マイケル・モズレー博士は、人中と呼ばれる鼻の下の溝についてBBCの番組「Inside the Human Body」の中で次のように説明しています。
人中は、人間の顔というパズルが最終的にすべて揃う場所です。
顔を構成するパズルの3つの主要ピースが上唇の真ん中で合流して人中という溝ができ、徐々に人間の顔らしく変わっていきます。
これらの顔の形成は、胎児の2ヶ月目から3ヶ月目の間に行われます。もし、遺伝的、または、環境的な理由で、この時期に顔が形成されなければ、一生形成されないことになります。
鼻の下の溝、くぼみができるまで
初めの頃は、胎児の目や鼻の孔は左右に離れ、口は大きな亀裂のようにも見えます。
まず、鼻孔と口が形成され、それらが鼻と唇の道を作るために少しずつ中心に移動していきます。
そして、鼻と唇が所定の位置におさまるときに、溝があらわれるのです。
動物の鼻の下にも存在する溝
人中があるのは、人間だけではありません。豚やトラ、サル、ライオン、ウサギ、ネズミをはじめ、ほとんどのほ乳類の鼻の下には溝がみられます。
霊長類に関しては、人間同様に何の役割もないようです。
しかし、猫や犬など霊長類以外の動物は別で、鼻を湿らせて匂いの元をキャッチしやすくするための水分の通り道だとも考えられています。
私たち人間は、進化の過程で視覚に頼るようになり、嗅覚を鋭く発達させる必要がなくなったため、進化的に考えると、トレードオフの名残として残っているようです。
人間の顔に人中ができるまでの様子のデータ化に成功した映像
母親の子宮の中で、胎児の顔が形成される様子や、赤ちゃんの発育状況をスキャンしてデータ化することによって、すべての顔のパーツが最終的に集まって人間の顔ができる様子を示した映像がこちらです。
参照元:
・Here’s why we have that little groove below our nose
・BBC