グラスに水道水を入れて数時間そのままにしておくと 、グラスの内側に沿って小さな泡があらわれ始めます。
水道管内の水の状態
一般的に、蛇口からの水は、 マンションなどのタンクに到達する前に水道管を通ります。
これらの2つの条件は、窒素や酸素などの大気中に豊富に存在する特定のガス(気体)を水に溶け込ませるのに理想的です。
温度が上がると気体の溶解度は小さくなる
固体や液体の場合、水にとけることができる限度の量(溶解度)は、温度が上がるにつれて大きくなりますが、気体は逆のケースが多くなります。
そして、水温が上昇すると、気体の水への溶解度は低下します。
気体が限界までとけこんだ水を飽和溶液(ほうわようえき)といい、温度が上がるにつれて気体の溶解度の低下する傾向は、蒸気圧が温度とともに上昇する方法にとてもよく似ています。
蒸気圧は、温度が高くなるにつれて大きくなって、液体が気体に変わり(蒸発)やすくなります。
気体が水から逃げ出す理由
ご存知のように、冷たいときはより多くの大気ガスの分子が水に溶けていますが、水が温まり始めると、大気ガス分子の運動エネルギーも増加し始めます。
これにより、大気ガスの分子がより自由に活発に動きはじめ、それらを結び付けていた分子間結合を壊して、水中から飛び出しやすくなります。
これが、温度が上昇すると気体の溶解度が低下する仕組みです。
圧力が下がると溶解度は小さくなる
また、水への大気ガスの溶解度は、圧力の増加とともに増加します。
液体と固体は水の圧力が変化しても溶解度はほとんど変化しませんが、気体は変化するのです。
気体は圧力が高いほど水に溶けやすくなることが観察されています。
結論:温度と圧力の影響
温度と圧力という2つの物理現象により、水道水は、理想的なものではないにしても、溶存大気ガスを保持するのに適しています。
しかし、この水をグラスに注ぎ、室温で数時間放置すると、大気圧は下がり始め、温度は上昇し始めます。
その結果、水中の溶存ガスが水から抜け出し、ガラスの内側のザラザラした部分にぶつかって気泡が形成されるのです。
ただし、水の温度はあまり変化しないので、泡がグラスに現れるまでに数時間かかるでしょう。
身近な例
炭酸飲料は、この現象についての分かりやすい例です。
圧力が増加すると、 ガス分子が水に押し込まれていきます。
逆に、私たちの関節が鳴るのは、関節の液体(滑液)の圧力が下がるためです。
また、水への気体の溶解度の温度依存性は、水生生物の生活にも直接影響を与えています。
魚などの水生生物は生きていくために酸素を必要とし、水中に溶け込んでいる酸素(溶存酸素)をエラから吸収することで、水中から酸素を得ています。
酸素は冷たい水ほど溶けやすいため、水温が一定の限界を超えてはいけないのです。
そうしないと、魚が十分な酸素を摂取できなくなるからです。
参照元:bubbles in water