一般的に言えば、傷が治っているときにかゆみがあるという事実は良い兆候だといえそうです。
それは、 以下のように私たちの体の化学的・機械的プロセスが迅速な回復のために適切に機能しているゆえのもの。
よって、かゆいからといって、それをひっかいて妨げてしまわないようにしましょう。
さっそく以下に、怪我をしたときに傷口で起こっていることからかゆみを引き起こす要因についてみていきましょう。
血を止めるプロセスの開始
私たちの体は、どこかが傷つくと、身体を保護するための多くの化学的、物理的プロセスが即座に開始します。
最初のタスクは、破裂した血管からの出血を止めること。
ここで「血小板」の出番です。血小板は、血液中に存在する粘り気のある細胞で、互いにくっついて破裂した血管を閉じて、それ以上の失血を防ぎます。
すると、フィブリンと呼ばれる特定のタンパク質が 、血小板が血管を詰まらせた場所に(ガーゼのような役割をする)繊維を作り、血栓を形成します。
これらは、病原体が体内に侵入して感染を引き起こすのを防ぐ役割があります。
すぐに、傷は炎症を起こし、赤くなり始めるでしょう。傷の部位にある細胞が、体内に侵入した可能性のある病原体を排除するために白血球を動員する化学物質を放出し始めているのです。
この最初の反応の後、治癒プロセスが始まります。
傷を治すプロセス
次に、線維芽細胞(せんいがさいぼう)と呼ばれる特殊な細胞がコラーゲンを生成します。
コラーゲンは 、皮膚に弾力性と強度を与えるタンパク質です。
そして、皮膚細胞は、損傷した細胞を置き換えるために分裂を開始します。
同時に、傷の血栓が硬化してかさぶたになり、かさぶたの周りの皮膚が伸び始めます。
かゆみが始まる
かゆみが始まるのはこれからです。
ご存知かもしれませんが、人体最大の臓器と呼ばれる「皮膚」は、神経につながっており、触覚と外部刺激による情報を伝えています。
皮膚の面積は約1.6m2にもおよび、そこにはかゆみに特有の神経線維もたくさんあるのです。
これらの繊維は、何かが特定の場所で皮膚を刺激しているときに、その情報を中枢神経系に伝えて、そのかゆみを掻くなどの体からの反応を引き出させようとします。
かゆみを引き起こす理由
体に傷ができると、新しい細胞が傷口の端近くで形成され 、傷口を囲うようにして中心に移動しながら近くの他の細胞と結合していきます。
この接続が確立されると、細胞は収縮し、効果的に「傷を閉じる」のです。
さらに、治癒プロセス中に、細胞はさまざまな化学伝達物質を放出して互いに通信し合い、傷を治すための環境を整え始めます。
これらの化学物質とそれらを生成する細胞の多くは、傷口にかゆみを引き起こす要因に関連しています。
基本的に、かゆみを伴う傷は、傷が順調に治癒していることを意味します。
傷口をひっかくのはNGな理由
ただし、ここで傷をひっかくのはおすすめできません。かくことは、傷を治そうとするプロセスを妨げる可能性があるからです。
せっかく新しく形成された組織をこすり落とし、皮膚のより深い層の細胞を乱し、周囲の健康な皮膚にさらなる損傷を与える可能性があります。
これらすべてが感染のリスクを高め、傷の治癒を遅れさせ、最終的には傷跡を残すことにつながるからです。
実のところ、科学者たちはかゆみのある傷について多くのことを理解していますが、 かゆみがどのように機能するかについてはいまだに頭を悩ませています。
かゆみを感じる神経は、ほとんどのかゆみの知覚が起こる脊髄に入りますが、脳がどのようにかゆみを解読して反応するかはまだ研究中なのです。
参照元:wounds itch