自分が朝型と夜型のどちらのタイプに当てはまるかはわかっていても、なぜそうなるのか、どうすればそうなるのか、また、切り替えるべきか、夜型から朝型に変わる方法が分からない人は多いのではないでしょうか?
驚いたことに、人間は生まれながらにして睡眠の傾向が遺伝的に刻み込まれているようです。
夜型の人は、夜型の子孫を残しやすいってこと?
その通り。研究で朝型と夜型の人の傾向を科学的に検証していくとね、おもしろいことが分かってきたのよ。
さて、「早起きには価値がある」と信じている人は多いと思います。
たしかに早起きをすると、時間に余裕が生まれ、仕事や勉強の効率が上がるような気がします。
「朝起き千両夜起き百両」ということわざまでありますが、実際に早起きをする人は、夜型の人よりも本当に得をしているのでしょうか?
寝る時間が、人の知性や成功度に影響を与えることはあるのでしょうか?
以下に、朝型と夜型の人間がどのように違うのかについて、それぞれの特徴やメリットを分かりやすく紹介していきます。
朝型、夜型人間は遺伝的に決まっている
個人の睡眠の傾向は、遺伝的な影響が大きいといわれています。
仮にあなたが夜型人間であるなら、それは祖先から受け継がれた可能性が高いようです。
実のところ、進化の観点から考えるとそれは理にかなっています。
なぜなら、昔は、さまざまな睡眠パターンをもつ人がいることによって、昼から夜を通じて一日中一族全体を外部の脅威から守ることができていたからです。
たとえば、一族がすべて同じ早起き型の睡眠パターンであった場合、夜に脅威となる敵がやってきたとしても、それに気づける人がなければお互いの身を守ることはできませんが、朝型と夜型の人がいることで、それぞれが役割分担をしながら脅威が迫ったときに対応しやすくなっていたと考えられています。
しかし、現代の社会では、ほとんどの活動が朝の9時から夕方5時までの間に行われているため、夜型の人はどうしても不利な状況に追い込まれてしまいます。
そこで、研究者は、社会の規範に従いにくいこれらの夜型の人を表現するために「社会的時差ぼけ」という新たな言葉を作り出しました。
「社会的時差ぼけ」をもつ夜型人間の特徴
社会的時差ぼけに相当する夜型の学生が全体的に成績を低下させる傾向が強いという研究結果がありますが、それは、慢性的な睡眠不足が脳機能に直接的な影響を及ぼすことを考えると、それほど驚くことではないのかもしれません。
アーヘン工科大学の研究では、夜型の人は、脳内でニューロン(神経細胞)の伝達を助ける白質が少ないために、認知機能の低下を招きやすいことが分かりました。
また、セロトニンやドーパミンなどの幸福感を感じるホルモンの経路が少ないことが、うつ病のリスクにもつながります。
夜更かしして寝るのが好きなので、慢性的な時差ぼけになり、それが仕事や学校生活と睡眠時間が合わない場合は特に睡眠不足に陥る可能性を高めてしまうのです。
また、朝型の人に比べて、食べる量が多く、食生活が乱れやすかったり、体重が増え、血圧が高くなる傾向もあります。
そうはいっても、夜型の人にとってはそれが悪いことばかりではありません。
夜型の人のメリット
夜型の人は、よりクリエイティブで、リスクに立ち向かう傾向が高いことでも知られています。
白質が少ない一方で、コルチゾールレベルがそれを補っており、不安や恐怖に対する反応が少なく、それがリスクを恐れない気質に貢献しているようです。
研究では、それらが結果的に、潜在的な金銭的利益をもたらす由縁となっていることが示されています。
なかには、夜型人間は、日中の生産性が高く、スタミナもあるというデータもあります。
朝型人間のメリット、デメリット
朝型の人間は、前向きでかつ楽観的で気分が落ち込みにくい傾向があります。たばこやアルコール、特定の食べ物への中毒、うつ病などを引き起こしにくいともいわれています。
ただし、目覚めた直後は非常に精力的ではありますが、夜型の人よりも日中を通じてのエネルギーが失われやすいようです。
ある研究では、目覚めてから1時間後に行われた反応テストで夜型と朝型の両者とも同じくらい良好な結果が得られたにもかかわらず、起床後10時間経過した時点で行われた反応テストでは、夜型の人の方が著しく良好に脳のパフォーマンスを発揮していることが示されました。
DNAは体内時間に影響を与えている
体内時計は、DNAのさまざまな遺伝子から作られた多くのタンパク質によって制御されています。
ある研究によって、「period 1」と呼ばれる遺伝子のタンパク質の特定の領域で、遺伝子コードを1回変更すると、起床時間に1時間の差が生じることが分かりました。
信じられない話のように感じるかもしれませんが、科学者はまた、体内時計と同様に、遺伝子と人間の寿命の相関関係もあると考えています。
なんと、習慣的に朝早く起きている人は、およそ午前11時頃に寿命で死亡する可能性が高く、夜型の人は、それが夕方の6時前頃であることが多いというのです。
また、夜型か朝型かがホルモンの影響を受けていることを示す研究もあります。
一般的に、思春期はホルモン変化によって、夜型になる傾向がありますが、大人になるとホルモン変化よりも、遺伝的な問題の影響に傾いていきます。
夜型から早起きに切り替える必要があるのか?
夜型、朝型などは、生物学的、遺伝的な力だけでなく、ライフスタイルや気分、考え方、睡眠の取り方などによっても形成されます。
ほとんどの研究では、朝型の方が有利とされています。
仕事やライフスタイルの都合、または、夜更かしによる健康リスクを考えて、早寝早起きに切り替える必要がある人もいるでしょう。
幸いにも、遺伝的に組み込まれた睡眠パターンに対して、生物学的な対抗はできるようです。
朝型に切り替える方法
最も強力な武器は光です。適切な時間帯に外に出て光を浴びることと同様に、夜は照明を暗くし、青や緑などの警戒心を高める色をブロックすることも大切です。
寝室には電子機器を置かないようにしましょう。
日光浴(屋外で30分程度がベスト)、温度、メラトニン、運動や食事のタイミングなどは、睡眠の段階を変えるための重要な要素です。一度整えたら、それを維持するためには日常生活が重要です。
夜更かしから早起きに切り替えるには時間がかかります。
最善の方法は、寝る時間と起きる時間を一晩に15分だけ調整することだそうです。
そうすれば、体がその変化に徐々に慣れていきます。
いきなり目覚まし時計の音で、深い眠りから身体にショックを与えるのはよくありません。
ぐっすり寝て、すっきり起きるのがベスト
以上のことから、朝型の人がメリットを得て、夜型の人が人生において損をしているというわけではなく、夜型の人は、ただ少し遅れてメリットを得ているだけであるようです。
つまり、朝起きる鳥だけがエサの虫を得られるのではなく、夜型の鳥は後で虫を得られるというだけのことです。
タンザニアの現代の狩猟採集民のグループを調査した科学者たちは、高齢者が若い人よりも早く寝て、早く起きるというパターンが現在も続いていることを発見しました。
多くの高齢者が「早く目が覚めてしまって、なかなか寝付けない」と医師に訴えていますが、もしかしたらそれは何の問題もなく、それらが有益であった進化的過去の遺物として説明できるかもしれません。