実は、アスパラガスを食べた後は、体内に特有の消化酵素をもつ人のみ尿が臭くなり、持たない人は臭くならないことが分かりました。
さらに、その悪臭の原因となる化合物を感知する嗅覚受容体の有無によって、においが分かる人と分からない人がいるようです。
実際に、10人中4人は、尿のにおいの変化を経験したことがないといわれています。
ここでは、アスパラガス自体は臭いわけではないのに、なぜか食べた後の尿が臭くなる理由について紹介します。
このアスパラガスを食べた後の尿の臭いのミステリーについては、1731年から歴代の偉人たちが研究を重ね、少しずつ解明されつつあります。
アスパラガスを食べた後の尿の臭いについての研究
実は、アスパラガスを食べると尿がにおうことについては、1731年にスコットランドの医師が調べ始めて以来、300年たった現在でも、一部を除いてはっきりとは解明されていません。
なぜなら、アスパラガスの臭いについては、研究において、特に高い優先権があるわけではなく、科学やテクノロジーの発達にもかかわらず、研究費用が使われてこなかったことが背景にあります。
しかし、2010年に行われた研究で初めて、基礎となる部分が分かってきました。
2010年に行われた実験で分かったこと
2010年、アスパラガスを食べた人とパンを食べた人の両方から尿が集められた研究では、においをかいだ参加者の何人かは、アスパラガスの尿の臭いの変化に気づくことができませんでした。
なぜ一部の人は臭いの違いをかぎ分けることができなかったのかについては、未だに確実なことは分かっていませんが、嗅覚受容体(鼻の上の臭いを感じる器官)の遺伝子変異が原因ではないかといわれています。
ちなみに、この臭いをかぎ分けることができる嗅覚受容体を持っているのは、5人に1人の割合に限られています。
さらに、この研究では、アスパラガスを食べたにも関わらず、尿の異臭が出ない人がいることも分かりました。
そこで、研究者たちは、科学的な臭いの原因の解明に取り掛かりました。
臭いのもとはアスパラガス特有の微分子
アスパラガスを食べた後の尿の周辺の空気中には、5つの硫黄成分が混ざり合わさった揮発性の高い(蒸発しやすい)硫黄含有物質が何千倍も豊富に含まれることが分かりました。
これは、消化の際に、アスパラガス特有の微分子「アスパラガス酸(有機含硫カルボン酸)」と呼ばれる酸が、身体の中で化学変化を起こす(消化酵素によって分解される)ときに作り出される成分です。
しかし、なぜ、尿が臭う人とそうでない人がいるのかは、遺伝的にアスパラガス酸を分解する酵素を持っている人と持っていない人が存在することにあり、その割合は半々だといわれています。
臭いを感じない人がいる理由
アスパラガスを食べた後の尿の臭いは、「刺激臭のもととなるアスパラガス特有の微分子を分解する消化酵素」や「臭いをかぎ分けることができる嗅覚受容体」を遺伝的に持っているかないかによって決まります。
そのため、アスパラガスをたくさん食べても尿の臭いの変化を経験したことがない人は、「臭いのもとを作り出すことはできるがかぐことができない」か「臭いのもとを作り出すこともかぐこともできない」双方の可能性があります。
しかし、これらは300年かけて分かってきた見解のひとつであり、実際にはまだ解明されていないことがたくさんあります。
おそらく、これからさらに300年かけて、科学者は、アスパラガスを食べた後の尿に関する奇妙なミステリーを解決していくのかもしれません。