実は、脂肪が消えるというのは科学的(質量保存の法則)に考えて不可能なこと。
結論からいうと、燃焼した脂肪は、二酸化炭素と水(汗や尿)として体外に出しているのです。
ここでは、この少しトリッキーな質問「脂肪はどうやって消えるのか」について、脂肪燃焼の真相に科学的に迫っていきます。
そもそも「脂肪を効果的に燃焼」とうい言葉をよく耳にしますが、脂肪を燃やすとはどうなることで、その材料はどこにあるのでしょうか?
おもしろいことに、これについて医師や栄養士、トレーナーなどに問いかけた調査では、専門家でさえ脂肪燃焼の真相を知らないことが明らかとなりました。
なんと、これまで脂肪燃焼を手掛けてきた専門家の50%が、「脂肪を燃やすと、その質量はすべて単純にエネルギーに変換され、熱として失われる」と誤解していたのです。
脂肪とは
脂肪は、厄介なお荷物である反面、私たちのようなエネルギーを利用した化学反応によって生命を維持している生命体が生きていくうえで重要な役割をになっています。
なぜ私たちにとって大切な存在なのかを知るために、まず脂肪燃焼の仕組みからみてみましょう。
脂肪は、炭素と酸素、水素が糸状に長く結びついた(以下、結合と記)生命分子。
この分子構造がエネルギーを貯蔵するのにても優れているのです。
少し詳しくいうと、これらの結合分子に蓄えられていたエネルギーは、結合がバラバラになる(分解)ときに放出されます。
簡単にいうと、このプロセスが「脂肪燃焼」と呼ばれるもの。
脂肪は燃焼されると消える?
脂肪を好む好まざるに関係なく、化学の法則が脂肪の消失を不可能だと結論づけています。
まずは、化学の基本原則の1つ「質量保存の法則」に基づいて考えていきましょう。
聞いたことがあるわ!
化学反応の前後で、物質の総質量は変わらないことを意味するのよね。
よく知ってるね。つまり、脂肪燃焼という反応が起こって熱を発生させたとしても、反応前にある各種類の原子の数と反応後では同じ数になるというわけ。
この法則で考えると、脂肪細胞内の脂質を分解してエネルギーを放出しても、それらの分子内の水素、炭素、酸素のすべてがその後も存在するはずです。
でも、それならがんばって脂肪を燃やすと、ズボンがずれ下がるほどお腹周りの脂肪が減ったようになるのはなぜ?
それらの質量は一体どこにいったのでしょうか?
燃焼した脂肪はどこにいくのか?
ニューサウスウェールズ大学の生物学者たちは、体内で燃焼した脂肪の塊がどこにいくかを原子ごとに分析し、次のように示しました。
10キログラムの脂肪を代謝、または、分解してそのエネルギーを放出するためには、29キログラムの酸素を吸入しなければならず、そのプロセスでは28キログラムの二酸化炭素と11キログラムの水を生成します。
したがって、体内で燃焼する脂肪1キロごとに、その質量の80%以上が呼吸で排出される二酸化炭素として、残りの20%は尿や汗、涙の水分として失われていることになります。
そして、化学反応前の「10キロの脂肪と29キロの酸素」は合計39キロに相当し、反応後に生成される「28キロの二酸化炭素と11キロの水」も39キロに相当することから、実際にこれらを計算すると、脂肪燃焼反応の前後におけるすべての質量が変化しないことが分かります。
つまり、燃焼した脂肪は、二酸化炭素と水(汗や尿)として体外に出していることになるんですね。
脂肪燃焼後の脂肪細胞はどうなるのか?
では、脂肪が入っていた入れ物(脂肪細胞)はどうなるのでしょうか?
脂肪を燃焼した後でも、エネルギーを蓄えていた脂肪細胞が、消えてなくなることはないのよ。
脂肪細胞は、体重の増減にともなって、大きく成長したり小さく縮んだりするの。
そもそも生体学的に重要な働きをする脂肪細胞が、全くなくなってしまうのは誰も望まないことです。
脂肪は、身体の構造を整え、体内臓器を衝撃から守り、体温を維持するなどさまざまな役割があります。なかでも、エネルギーを蓄える組織として不可欠なものです。
食後のエネルギー源となるのは主に食べ物から得られる糖質ですが、私たちは、食べ物を摂取しないときにも、生命活動を維持していかなければなりません。
このエネルギー源を蓄えておくうえで重要なのが脂肪なのです。
脂肪細胞が膨らんだり縮んだりする仕組み
へぇ。脂肪ってなんだか他の細胞とは違う特殊な細胞みたいだね。
脂肪細胞にも他の細胞と同じように、核と細胞器官があるのよ。
でも、脂肪を蓄えるための袋が細胞の90パーセントを占めている点では特殊な細胞といえるわね。
脂肪を蓄えている組織は、トリグリセリド(中性脂肪)と呼ばれ、1つのグリセロールに3つの脂肪酸が結合しています。
この脂肪酸の結合体には大きな化学エネルギーが含まれており、トリグリセリドをたくさん抱えるほど脂肪細胞は大きく膨らみます。
そして、エネルギーが必要になると、LPL(リポタンパクリパーゼ)と呼ばれる酵素が働き、トリグリセリドは脂肪酸に分解されます。
すると、脂肪酸が、代謝エネルギーとして他の場所で使われるために脂肪細胞の膜を通過していなくなってしまうため、脂肪細胞は収縮。
逆に、トリグリセリドが消費量を超えて蓄積されていくと、脂肪細胞は大きく膨らんでいきます。
ダイエットをしても体重がなかなか減らない理由
体重を減らすには、蓄積されたトリグリセリド(中性脂肪)を脂肪酸に分解して脂肪細胞を縮小させるために大きなエネルギーを消費する必要があります。
しかし、ダイエットに挑戦した人であれば誰もが知る通り、それはとても大変なことです。
しかも、体重は減ったとしても、簡単に元に戻ってしまいます。
脂肪は、燃焼するよりも蓄える方がずっと少ないエネルギーで済むからです。
そして、消費量を超えて蓄えられた脂肪は、知らないうちに細胞にそのまま居座り続けていくのです。
最後に:脂肪燃焼の効果を実感しよう
いかがでしたか?
どのように脂肪が燃焼され、脂肪細胞が縮小されていくのかを知ることが、食事や運動を見直すよいきっかけになればうれしいです。
次に、運動をして汗をかいたり、犬を散歩させたりして、蓄えられたエネルギーの放出を体に要求するときには、呼吸と皮膚から脂肪を発散していることをイメージするなど脂肪燃焼を科学的に考えてみるいつもより脂肪が燃焼されたように感じ、ダイエットの効果を実感できるかもしれませんね。
参照元:
・When You Burn Fat, Where Does it Go?
・Do Fat Cells Ever Really Go Away?