まるでSF映画の世界「人体の冷凍保存」について、未来での蘇生にかけて、人体がどのように凍結・解凍されるのか、また、冷凍保存にはどのようなリスクや課題が残されているのかなどを紹介します。
実のところ、世界ではすでに数百人もの人々が、冷凍保存されています。
SFの世界では、誰かが冷凍保存され、それが未来のいつかに蘇るという例がたくさんありますが、現実となるとそう簡単な話ではありません。
「そんなの倫理に反している」と思う人もいるかもしれません。
しかし、誰が彼らを責められるのでしょう?
おそらく、未来が悪いものでなければ、長生きしたい、未来の生活を体験したいと思う人は少なくはないでしょう。
そもそも、人体の冷凍保存とはどのようなものなのでしょうか?以下に見ていきましょう。
人体の冷凍保存とは
蘇生が可能となる未来にかけて、人体を冷凍して保管することは、凍結保存、または、冷凍保存、クライオニクス( cryogenic preservation, or cryopreservation)などと呼ばれています。
現在は、細胞、精液、卵子、胚、組織、臓器などの生体物質に対して、生体に移植するなど将来使用する時期まで腐敗しないように低温、または氷点下で保護するために行われるのが一般的です。
しかし、細胞や組織、あるいはSFの世界での例とは異なり、誰かを合法的に冷凍保存するには、まずその人の死亡が認められなければなりません。
その後、契約している凍結保存会社がその人を引き取り、保存プロセスを開始することができるのです。
冷凍保存プロセス
全身の細胞は、酸素の受け取りを停止すると懐死し始めるため、凍結保存プロセスをできるだけ早く開始する必要があります。
プロセスは、体を急速に冷却することによって行われるわけですが、ただ冷凍庫に入れるのではなく、これは「ガラス化」と呼ばれるプロセスを経て行われます。
液体が結晶性の固体に変化する冷凍とは異なり、ガラス化では、体内の組織を損傷するような氷を形成させずに、ガラスのような状態に固化する必要があります。
一連の手順
細胞死を遅らせるための最初の冷却後、血液は、凍らせないように作用する凍結防止剤に置き換えられ、液体の凝固点(凝固し固化する温度)を下げて体内に氷が形成されないようにします。
その後、長期保存施設に搬送されると、さらに-196℃まで冷却し、液体窒素で満たされた真空密閉タンクに入れて、蘇生するときがおとずれるその時まで保管されます。
冷凍保存にかかる費用
現在、冷凍保存のプロセスと長期保管にかかる費用は20万ドル(2000万円強)前後だといわれ、4000万円を超えることもあります。
しかし、これは必ずしも契約した瞬間に支払う必要はないようです。
少し奇妙ですが、海外には凍結保存のために、月々わずか30ドル(3000円強)程度で数十年の保障が得られる生命保険プランもあるようです。
冷凍保存のリスクや課題
しかし、低温保存された人の未来はどうなるのか、たとえば、ガラス化、融解化、復活のプロセスが脳や身体にどのような影響を与えるのかなど、まだまだ未知数な部分が多いのは事実です。
今のところ、冷凍保存されて蘇生した人はいません。
また、「生き返らせる」という点を抜いても、有害な凍結保護剤や、温める際にできるであろう氷の結晶が人体に大きなダメージを与える可能性があります。
死者の蘇生だけでなく、科学者はこうした将来の危険性にも徹底的に対処しなければ、誰も生き返らせることはできないでしょう。
これは、まだまだ先の話ですが、科学者たちはすでに、より安全で優れた凍結保護剤を特定しつつあります。
また、近年の実験では、回虫(線形動物)が冷凍保存と解凍のプロセスを乗り越えて成虫に成長し、長期記憶を保持できることまで発見されています。
いかがだったでしょうか?今回は、まるでSF映画のような話「凍結保存」についてでした。
さて、あなたは自分を冷凍保存したいですか?
参照元:Would You Freeze Yourself in A Cryo Chamber to See The Future?