自由主義派 vs 保守派 - どちらの脳がいいのか?

2018年11月 1日

世の中は、程度の差こそあれ、自由を尊重する人(リベラル派)と古くからのしきたりを守ろうとする人たち(保守派)に分かれています。

そして、世界観が異なる双方の81%が相手方に対して好ましくない印象をもつがゆえに、対立してしまうこともしばしば。

そもそも、リベラル派や保守派の違いは何によって生じるのでしょうか?

興味深いことに研究がすすむにつれて、このリベラル派と保守派と呼ばれる人々の間には、脳における生物学上の基本的な違いがあり、遺伝子も関係していることが分かってきたのです。

ここでは、リベラル派(自由主義者)と保守派にみられるおもしろい心理的特性や脳構造の違い、遺伝子の影響などについて、科学的に分かってきた興味深いことを分かりやすく紹介します。

リベラル派(自由主義者)と保守派の好みの傾向

欧米では一般的に、食の好みに関して、保守派は肉やジャガイモを好み、リベラル派(自由主義者)は異文化の食べ物に強い関心があるといった面白い傾向がみられます。

また、保守派が純血種の犬を好む一方で、リベラル派は別種の犬をかけあわせたミックス犬を好み、その他にも、保守派は韻を踏んだ詩を好むのに対して、リベラル派には韻律の形式を守っていない自由詩でも受け入れられやすいといわれています。

さらに、研究がすすむにつれて、両者の違いは、好みのような表面的に表れやすいものだけでなく、「脳構造」のようなもっと深いところにもあることが分かってきました。

脳構造にみられる違い

MRIの脳スキャンを取り入れたロンドン大学の研究では、リベラル派(自由主義者)は、脳における前帯状皮質(ぜんたいじょうひしつ)と呼ばれる部位の容積が大きい傾向が表れました。

前帯状皮質とは、脳において認知機能に関わり、主に対立的情動をコントロールする部位で、リベラル派であるほど対立的なものへの許容性が高くなるといえます。

一方で、保守派は、恐怖心や不安の処理を助ける扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる部位が大きく、危機的な状況に敏感に反応し、(身を守るために)攻撃的になりやすい傾向があることがわかりました。

この結果は、長年の研究で示されてきた「人々が新しいことや変化など恐怖や不安を感じたときにより慎重になる傾向が高い」ことの説明にもなります。

これは、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件以降、国家の安全保障や軍事支出のような問題への支持が増加し、政治的により保守的志向になったことを示した調査からも分かります。

異なる認知スタイルをもつ

私たちはそれぞれに認知(知覚、理解)したこと伴って行動していますが、この認知スタイルが、自由主義者と保守派では異なるというのです。

一般的に、保守派は、問題をきちんと体系化(組織化)するのに優れているのに対して、リベラル派は柔軟性があり、相反する情報を伴う問題や速い反応が求められる問題に強い傾向があるといわれています。

おもしろいことに、寮生活についての研究では、リベラル派(自由主義者)の学生の部屋は、保守的な学生の部屋よりも平均して汚いことも明らかにされました。

痛みの感じ方が違う

ある研究では、怪我の写真といった苦痛を感じるような画像をみた人の脳スキャンを見るだけで、その人がリベラルなのか、あるいは保守的なのかを予測することができました。

研究で見られたリベラルな脳は、自分や他者が苦痛や痛みを感じているときに、脳の体性感覚野(皮膚や内臓の壁など外から見えにくい部分の感覚を処理するところ)と呼ばれる領域の活性化がより高くなったのです。

これは本質的に、リベラル派に対するステレオタイプ的な見方「情に流され過ぎる」ことを科学的に証明しました。

かと言って、決して保守的な人たちが、他人への思いやりがないというわけではありませんが、これが画像への反応を心的に分析した結果でした。

これをもとに考えると、アメリカの民主党と共和党の世界の認識の仕方がそれぞれどのように異なるかが分かってくるでしょう。

政治上での保守派とリベラル派

政治の世界では、相反する立場をとる誰かがどのように考えているのかを把握することが困難だといわれています。

なぜなら、多くの人が自分の意見は当たり前だと過大評価しすぎる傾向があるためです。心理学者はこれを「偽の合意効果(ぎのごういこうか)」と呼んでいます。

つまり、彼らは人も自分の意見と同じだとみなしたがり、そこにはまるで合意があるかのように錯覚し、他の意見の人が非常識にすら感じるというのです。

この論理を政治にあてはめて考えると、アメリカでの「移民問題」や「中絶」、「銃を持つ権利」といった問題について、人々の意見がなぜ二極化して、双方が正誤を決めつけたり、優劣をつけたりしようとするのかが分かります。

政治の場合は特に、属する組織集団の考え方が民意だと思い込み、それに合意しない人は、「分かりもしないで意見を言っているだけだ」とみなされることが多いようです。

それでは、そもそもこのような保守派とリベラル派の違いはどこから生まれるのでしょうか?

保守派とリベラル派の違いはなぜ生じるのか?

ある研究では、保守派やリベラル派かを決めるのは、遺伝子が約30%から40%ちかく関わっていることが明らかにされました。

これは影響として大きなものに感じるかもしれませんが、実際には、その他にも周りの環境や個人的な経験のように重要な要素となり得るものもまだ多く存在します。

このように政治的志向を脳の構造と結びつけた研究は、「神経政治学」と呼ばれ、まだ比較的新しい研究分野のひとつとして、今大きく期待されています。

これから、それぞれの立場や属する環境によって、ますます個性があふれていく時代に団結していくためには、このような神経科学を活用して、お互いの違いをよりよく理解していく重要性がありそうです。