なぜ私たちは恒温動物なのか?変温動物とのメリット・デメリット比較

2021年5月 6日

ブラジルに生息する小さな鳥、ソンブルハチドリは、「44.5度」という私たちが知る動物の中で最も高い体温を維持しています。

あなたがその体温なら、痙攣(けいれん)や脳障害を起こすか、あるいは死んでしまうでしょう。

さらに、もしハチドリと同じような代謝を持つ人間がいたら、1日に約8万キロカロリーを食べないと生きてはいけません。

自分で熱を作って、体を温かく保つには膨大なエネルギーが必要だからです。

実際に、地球上で最も大きな動物は、必要な熱エネルギーを生みだすために一日のほとんどを食事に費やしています。大量のエサの確保にはリスクも伴います。

一方で、地球上のほとんどの動物(爬虫類、魚類、昆虫など)は、体外の熱を利用しています。

外の温度に体温を合わせるだけなので、省エネルギーで楽なのです。

もし、あなたの体温がワニのように32度前後であれば、1年に50回以下の食事で済むでしょう。ワニにはそれがちょうどいいのです。

では、そんなに手間もコストもかかるのに、なぜ私たちをはじめ鳥類や哺乳類は、苦労して高い体温を維持しているのでしょうか?

今回は、そのおもしろいナゾを恐竜を絶滅させた隕石落下期までさかのぼって考えていきます。

人間は体内で発熱し、体温を一定に保つ恒温動物

小さなバクテリアから巨大なゾウまで、地球上のあらゆる生物は、複雑な分子を単純な分子に分解して、生命を維持するためのエネルギーを作り出しています。

エネルギーを使って体を動かしたり、細胞の機械を動かしたりすると、熱が発生します。

人間は、代謝によって熱を体内で作り出して(内温性)体温を環境の温度に関係なく一定(およそ36度から37度の狭い範囲)に保つ(恒温性)ことができます。

しかし、内温性の動物は、哺乳類や鳥類をはじめ、一部の生き物にのみ見られ、ほとんどの動物は、体内で十分な熱を作り出せない外温性で、環境よりも体を高い温度に保つことができません。

体温維持のエネルギー源は食事

家を暖めるためには常に薪をストーブにくべなければならないように、私たちも熱源となる自分の体に燃料を供給しなければなりません。

そのためにはたくさんの食べ物が必要です。

食べたエネルギーのほとんどは熱として放出され、1日の摂取カロリーの約10%が体温調節のために使われています

意識することはありませんが、脳の奥底にある視床下部と呼ばれる部位は、一日中熱を作り温度をコントロールすることを考えています。

体温がたった5℃下がるだけで、脳はボーッとし始め、心臓が正常なリズムを保てなくなるのです。

これは生きていく上でかなりの悪条件となります。

体温を一定に保つ役割

そこで、私たちの体は、代謝や各細胞の働きを高いレベルでキープするためにも、体を内側から温めて、安全な温度を維持するように努めているのです。

寒すぎると、体は筋肉を震わせて熱を生みだしたり、汗をかかなくなったり、血管を収縮させて、皮膚の表面から熱が放出されないように鳥肌を立たせたりします。

今ではあまり役に立たないかもしれませんが、毛むくじゃらの祖先にとっては、毛皮は断熱層に空気を閉じ込めるための有効な方法だったようです。

逆に、体温が高くなりすぎると、目玉焼きのように、暑さで細胞内のタンパク質の構造が崩れ、死んでしまう可能性があります。

そのため、暑すぎると、視床下部が血管を開くように仕向け、小さな毛がすべてしなだれ、汗をかき、体から熱を蒸発させようとするのです。

人間は恒温動物のなかでは体温が低い

体は、体温を一定に保つために、これらの冷却システムと加熱システムを常にオン/オフにしています。

自分で体温を作る動物の多くも、同様の方法で体温を調節しています。

しかし、理想的な体温は、動物によって実にさまざまです。

他の恒温動物と比べると、人間の体温はそれほど高くはありません。

哺乳類の中で比較的体温の高い20%の恒温動物は、37.9℃以上を維持しています。鳥類は、さらに高温で、40℃から44.4℃の間です。

体温を維持するには、たくさん食べなければいけない

体温が10℃上がると、熱を維持するための代謝が2、3倍になるので、それだけ多くのものを食べなければなりません。

体に熱が加わるとは、水車にさらに水を注ぐようなもので、分子の運動エネルギーが速くなります。

分子でできているものはすべてスピードアップし、細胞内の反応もスピードアップします。

炭水化物、たんぱく質、脂肪の消費が早くなり、体のバッテリーであるATPも消費されてしまいます。

そのため、分子の燃料を補給するためには食事をしなければならないのです。

私たちは、冷蔵庫を開ければよいだけですが、狩猟や採集をしなければならない動物が体温を安定させるためには、多くのエネルギーを費やすことになります。

環境変化に適応するには高いエネルギーが求められる

進化の目で見ると、体温を維持することはコストもリスクも高いのです。

なぜ人間は、体の中を温めるために、そこまでの努力をするのでしょうか?

なぜ爬虫類、両生類、魚類、昆虫の多くは、そんなにエネルギーを使わなくても生きていけるのでしょうか?

その歴史は約3億1500万年前にさかのぼります。

当初、四足の脊椎動物はすべて外温性で、周りの環境に応じて体温を変化させていました。

そして、それを変えるための最初の一歩は、両生類が初めて沼地からくねくねと出て、陸地に歩いていったときのことです。

陸上への移動は新たな課題をもたらしました。

石炭紀と呼ばれる時代の終わり近くになると、地球が冷え始めたため、水は氷河に閉じ込められ、森林は縮小していきます。

その代わりに、より乾燥した生息地が出現しました。

この乾燥した世界で生き延びるために、動物たちは、浮力を使わずに体を支えたり、水を節約したり、炎天下でも乾燥しないようにしたりと新たな適応能力を進化させなければなりませんでした

これらはすべて、より高い代謝能力を必要とします。

「噛む」能力の進化が、摂取エネルギー量を増やした

噛むことで、植物や獲物からより多くのエネルギーを摂取できるようになったのも、この時期だと考えられます。

口の中で舌を動かしてみると、恒温(温血)動物への道に新たな革新があったことがわかります。

鼻と口を隔てる口蓋(上顎)です。

初期の両生類や爬虫類とは異なり、人間は口でも鼻でも呼吸ができます。

つまり、口蓋のおかげで、呼吸と食事が同時にできるようになったため、食事の時間が増えました。

また、三畳紀には、二足歩行の痕跡が見られるようになる。

二足歩行に必要な大きな筋肉は、より多くのエネルギーを必要とし、体のエンジンを高回転させるためには、自分で熱を作ることが必要です。

つまり、自分で熱を作らなければ、二足歩行は長くは続かないのです。

筋肉の温度が低いと動きが鈍く活動量が下がる

今、地球上には、速く、遠くまで走れて、体温が30℃以下の動物は存在しません。

筋肉の温度が低いと速く走れないのです。

現代の爬虫類で2本足で走ることができるのは、イエス・キリスト・トカゲだけで、この爬虫類は、マラソンよりもスプリンターとして活躍しています。

大きな動物ほど体温が奪われにくい

およそ2億5200万年前、地球は史上最悪の絶滅期を経験しました。

巨大な火山が二酸化炭素とメタンを大気中に放出し、気温は急上昇して酸素は激減し、陸上の約70%の種が絶滅したのです。

生き残った動物たちは、体温が高くて新陳代謝が活発で、早く成長することができる種が優位となりました。

以前は、恐竜は岩で体を温めて活動するトカゲのようにうろこ状で動きの鈍い生き物だと考えられていましたが、現在では、鳥類や哺乳類に近い存在で、成長が早く、現在の爬虫類よりも体温が高く活発に動いていた種も存在したことが分かっています。

巨大な恐竜は、その巨大さゆえにそれに対応できたのかもしれません。

これは、プールいっぱいの湯と、コップの紅茶では、どちらが早く熱を失うかを考えてみると分かります。

巨大な恐竜は、たとえ完全な恒温動物(熱を体内で生み出す)ではなかったとしても、体が大きいゆえに冷えにくく、活動に必要な体温を維持できたのです。

たとえば、現存する最大のトカゲであるコモドオオトカゲ(平均体温34.0度から35.6度)は、体の小さなトカゲに比べて、比較的一定の体温を保つことができます。これは、体が大きいからです。

小動物は大動物に比べて体温を保つのが難しく同じ体温を維持するためには、活発に活動しなければならないのです。

このことから、おそらく完全な内温性(内部の身体機能によって熱を作り出す)の種は、初めは小さな生物から生まれたと考えられます。

恐竜を絶滅させた「隕石衝突」後、恒温種になる途中の種が多く生き残った

約6,600万年前、空から巨大な隕石が落ち、ほとんどの大きな動物は死にました。隠れることができずに焼け死んでしまったのです。

小動物は、何かに隠れて生き残れる可能性が高かったうえ、その多くは内温性で、自分で熱を作ることができました。完全な恒温種になる途中の種です。

最初の胎生哺乳類の姿だと考えられているねずみくらいの大きさの生き物(SHREWDINGER)や鳥の系統の恐竜も小さく、熱を作ることができたのです。

時間が経つにつれ、彼らはより速くなり、走るのが上手になり、最終的には空を飛ぶようになりました。

そして、空を飛ぶには多くのエネルギーを必要とするため、内温性が役立ちました

私たちは、内温性と外温性の動物を、コインの裏表のようにどちらか一方だけに考えがちです。

しかし、新しい例外も次々と発見されており、体温調節においては、もはや厳密に分けられるものではないと考えられています。

恒温動物(温血種)とも変温動物(冷血種)ともいえる生き物たち

大半の魚類は変温動物(体温が外温に依存)ですが、サメの中には、自分が住んでいる水よりも高い体温に維持できるものがあります。

高速で泳ぐマグロもそうです。特殊な血管構造によって血液を温めて筋肉反応を高め、より速く、または、より遠くへ泳ぐことで、エサの確保や移動といった生存競争で優位にたつと考えられているため、恒温動物ともいえます。

初めて恒温性の魚として発見されたアカマンボウにおいては、冷たい深海で、一定体温を保ちながら代謝を上げ、活動的に動けるための血管の配置、えらや筋肉には脂肪まであります。

一方で、哺乳類の中にも、体温が大きく変化する種もいます。

マダガスカルに生息する愛らしい小さな哺乳類、ハリテンレックは、基本的に繁殖期をのぞき、外温性の変温動物です。

繁殖の時以外なら、体温がマイナス2度まで下がっても、ダメージを受けません。

さらには、ナマケモノやハダカデバネズミのように哺乳類なのに体温調節ができない変温動物もいます

つまり、温血種と冷血種は、赤と青の二択ではないのです。

なぜ人間は恒温動物なのか

しかし、これだけでは、なぜ人間は恒温動物なのかというパラドックスは解決しません。

自分で熱を作り出す内温動物になるには大変な労力が必要です。

あまりにも大変なので、多くの恒温動物は、体内の熱エンジンを動かして生き延びるために、時間のほとんどを食事に費やしています

そうであれば進化の過程で、大型の動物は変温(冷血)動物に戻った方が都合が良いのでは?と思うかもしれません。

しかし、実際にはそうなってはいません。

その答えのいくつかは、偶然によるものかもしれませんが。

前述した大絶滅の際に大きな岩が空から落ちてきたとき、その黙示録を生き延びたのが、たまたま完全な恒温動物になる途中の種だったからです。

しかし、自分たちで熱を作り出すのは非常にコストがかかりますが、環境の変化や気候変動に対応したり、長距離を移動したりと生きていくうえでの思いがけないメリットもあります。

温かい体は細菌の温床となりやすいため、病気になることもありますが、発熱時に発生する熱は、人間の免疫システムの重要な部分を占めています。

また、体をあまり動かすことがでなければ、体も小さくなってしまいます。

科学者の中には、もし恒温動物でなければ、子育てに必要なエネルギーが不足すると考える人もいます。

進化にはまだナゾが残されている

正直なところ、生命の歴史がどのようにして恒温動物になったのかを知るには、まだ多くのことを学ばなければなりません。

進化には目的地がなく、大切なのは旅路。

今回の疑問「なぜ人間は恒温動物なのか」は、生命の大きな謎はまだたくさんあることを思い出させてくれたのではないでしょうか。

参照元:

Why Are We Warm-Blooded?